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第313話 エメラルドの約束12
しおりを挟む集落の一角に人が集まっていた。
私が話しかけようとすると、話し声が聞こえた。
「リョクが捕まったらしいぜ? あーあ、俺昨日、パン屋から金盗んじまったんだがどうすりゃいんだ、畜生、リョクがいなくて誰に押し付けりゃいんだよ!」
「それでもお人好し様のリョクに全部背負わせればいい。今からでも間に合うだろ?」
「あいつは頼めば何でもしてくれる。しかも何しても仕返しとか来ないしな」
「あーあ、罪被り役がいなくなったら俺たちはこれからどうすりゃいいんだ」
バカだ……私は大バカだ……
こんな人たちに助けを求めても何の意味も無い。
私は走り、家に戻る。
すると家に人がいた。
「あれ? 妹ちゃんじゃん。ねぇねぇ、君のお兄さんが大切にしてた物とか無い? 火事の時はこれを持って逃げなさいとかさ?」
「家で何してるの?」
「宝探しかな、リョクの遺産でもあれば俺達が有効活用してやろうと思ってな!」
「あんな馬鹿は中々いねぇよ! 最初は何かワケ有りかとも思ったが、いくら探しても悪い噂の一つも無いし、あの性格だ。報復の心配も無く、何も怖くない」
ゲラゲラと笑う男たち。
どいつもこいつも、意味が分からない。
馬鹿? 報復? 何の話をしてるの?
私は自分のリュックを持って、家を後にする。
お金はこの中だ。ざまぁみろ!
──私は走った。王宮にだ。
兄さんがここに捕まっている。
兄さんは捕まった私を助けてくれた。
なら、次は私の番だ。
〝精神疎通〟が使えれば良かったんだけど、私は1万人に1人ぐらいの稀人で普通なら生まれつきエルフは持つ筈のスキル──〝精神疎通〟がまだ開花してない。
お医者さんの話だと10歳までには自然と使えるようになるからほっといていいと言われたが、今はそれが惜しくて堪らない。
兄さんの声が聞きたい。兄さんに会いたい。
王宮の門に近づいてきた時、私は背後から何者かに捕まる。いや、脇に持たれる?
「きゃ」
私を抱えあげたのは男性にしては少し長めの金髪の髪の男性だ。身なりは良い。多分、お金持ちだ。
「君の兄が処刑されるらしくてね、一緒に来るか? 私はそれを止めに行くつもりだ──」
昨日の今日で処刑とは何を考えている。と、呟く、この男性の言葉に私はすがり付く。
「行きます! 兄さんを助けてください!」
「よし、分かった。では、急ぐぞ──」
堂々と門を潜ろうとすると、
門番の人が慌てる。
「止まれ貴様──って、エルサリオン様!?」
「退きなさい、火急だ!」
その一言で門番は直ぐに下がる。凄い。
「処刑場まで急ぐよ、王宮を抜ける」
「は、はい」
処刑場──生々しい言葉に私は顔を歪ます。それに兄さんはもう王宮の牢屋ではなく処刑場にいるらしい。急がなくちゃ、私が絶対に助けるから、あと少しだけ待っててね、リョク兄さん!
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