生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
304 / 378

第303話 エメラルドの約束2

しおりを挟む


 ある日、私は兄さんと山に山菜を採りに行った。
 緑が深い大きな山だ。山は好きだ。空気も美味しいし、水は綺麗だし、何と言ったって食べ物が取れる。

「リョク兄さん、見てキノコ!」
「本当だ。イヤーキノコだね! 凄いよエメレア」

 絵に書いたようなシンプルなキノコだ。一年中、冬でも取れるキノコ、私たちの胃袋の強い味方だ。

 味もシンプルなキノコだが、太陽に当ててからスープに入れると味が凄くよくなる。
 〝太陽は偉大なり〟そんな言葉を兄さんが、その昔おじいちゃんに聞いた言葉らしい。いい言葉だと思う。

 しー。
 リョク兄さんが私に静かにのジェスチャーをする。

 鳥だ。木に鳥がいる。
 あの顔の赤い鳥は確かキジだ!

「──ごめんね、命をもらうよ」

 一本の矢が放たれる。
 ゆっくりだが、正確に、真っ直ぐに飛んでいく。

 リョク兄さんはエルフの中でも弓の名手だ。
 兄さんが狙った的を外したことは見たこと無い。

 でも、リョク兄さんは魔力が少ない。
 誰にでも得手不得手はあるのだ。

 そして今日も難なく矢は獲物に刺さる。

「やった! 今日はご馳走だね!」

 タッタカタ。と、走り、私はキジを回収する。

「エメレア、あまり走ると危ないよ、ちゃんと前も上も足元も見て、後方も確認するんだよ」
「うん、任せて! リョク兄さん!」

 兄さんに言われた通り、辺りに注意しながら、キジを回収すると、近くに食べられる野草を見つけた。

「わ、やった! これも、これも食べられる!」

 ヨモギ、せり、アサツキ、他にも色々。

 夢中で野草を採る、と、その時だ──

「──危ない! エメレア!」

 バンッ! と、兄さんが私を突き飛ばす。

「きゃ」

 蛇だ。木ノ上から私よりも大きな蛇が私を目掛けて飛んできたのだ。
 兄さんが突き飛ばしてくれなければ、今頃は蛇のお腹の中、命はなかったかもしれない。

 兄さんが蛇に向け、ビンに入った何かを投げる。
 それが命中した蛇は一目散に逃げていく。

 今のは、この国に自生する蛇の苦手な植物を液状にした物だ。兄さんのお手製である。

「危険な動物だったね。エメレア怪我は無いかい?」
「うん、兄さんは?」

「私も無事だよ。今日はもう帰ろうか、たくさん食料も取れたしね」
「うん……心配かけてごめんなさい」

「エメレアが無事ならそれでいいよ。でも、もし怪我でもしてたらお説教じゃ済まなかったけどね? エメレアはまだまだ特訓が必要なようだね」

 私の頭に手を乗せながら兄さんは言う。

「あぅ……」

 返す言葉が見つからない。
 ぐぅの音も出ない兄さんの正論に私は肩を落とす。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...