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第298話 ノアの部屋9
しおりを挟むトクトクトクトク。
ノアが〝エルフ酒〟を盃に注いでくれる。
今宵、2本目の〝エルフ酒〟だ。
「まだ付き合ってくれるのか?」
「ふふ♪ ユキマサ君が寝るなら私も寝るし、まだ起きて飲むって言うなら私もとことん付き合うよ♪」
そう言い自分用の盃を取り出したノアは俺の酌待ちだ。トクトクと注いでやるとノアは満足そうに笑う。
俺が〝エルフ酒〟を気に入ったと言うとノアは嬉しそうに微笑み、自身も同じ物を所望した。
「こんな夜は初めて。静かだけど身体が熱い」
「飲みすぎたんじゃねぇか?」
ゴシックなソファーに二人で座り、俺の左肩に頭を傾け、体重を預けてくるノアはゆっくりと話す。
「そうかも、でも、まだ飲むよ♪」
「ハハッ、そう来なくちゃな。でも、俺も少し酔ってきた気がする──〝エルフ酒〟飲みやすいな」
楽しい……な。うん、楽しい。酔う感覚も心地良い。
こんなに酒なんて飲んだのは初めてだ。
いい酒になったな──ノアのお陰だ。
「そういえばユキマサ君、旅に出るなら行くアテはあるの?」
「あー、正直に言うと全く無いな。アテの無い旅だ」
指名手配の身だしな。入国審査のある〝中央連合王国アルカディア〟とかは堂々と行けないだろうし。
いや、まあ不法入国はできるけどさ。
後、俺が名前だけでも知ってる国ってのは〝アーデルハイト王国〟や〝イリス皇国〟ぐらいなんだよな。
「まあそれもまた一興かな──でも一つだけ忠告して置くと〝中央連合王国アルカディア〟だけは、いくらユキマサ君でも、今は近づかない方がいいと思うよ」
「それ犯罪者が警察……憲兵に乗り込むような物だろ? 興味はあるが、今は行く気はねぇよ」
「うん、ならいいかな。ちなみにだけど〝六魔導士〟の内、面識があるのは3人だけなんだよね?」
「ああ、エルルカ、シラセ、パンプキックに会っただけというか、そもそも俺はその3人しか知らない」
指折りの実力者だ。正直あいつらを敵に回すのも勘弁なんだよな。
エルルカ辺りは話し聞いてくれそうだけど。
「その3人は多分ユキマサ君と敵対しないと思う。だけど残りの3人は容赦なく敵対すると思うよ」
「参考までに残りの三人はどれぐらい強い?」
「私は直接戦ったこと無いから具体的には言えないけど、レベルだけで言えば、残りの3人共100を超えてるから一般的に呼ぶと──〝限界超越者〟だよ」
100超えか、レベルだけ見れば、エルルカとシラセ以上の奴がまだ3人要るのか。
その3人に同時に追われるのはかなり厳しいな。
「今、ユキマサ君はかなりの注目の的だからね? 名のある賞金稼ぎとかからも狙われる可能性もあるよ」
「賞金稼ぎねぇ。俺のいた国じゃ、それで生計を立ててる奴は殆ど所のレベルじゃなく居なかったな」
クイっと酒を煽る。
(そういう奴等もいるんだな異世界には)
「うんうん、ユキマサ君の居た世界、私も一度行ってみたいな。私から見れば異世界に当たるんだし」
「それはアルテナに頼まないとだな」
「うーん、難しいこと言うなぁ。神様に直接頼みごと何て私でもできないことだよ? でも、ユキマサ君ならできそうだね。何となくそう言うの得意そう♪」
「いや、得意とかそういう次元の話しじゃねぇだろ」
「ユキマサ君は神様に──アルテナ様に選ばれたんだよ? それだけでも〝聖教会〟では普通の人と扱いは違うかな。まあ、私はそれ抜きでユキマサ君のこと凄く気に入ってるんだけどね♪」
異世界に来た実感はあるが、神様に選ばれたとか言われると、そんな大事な実感は無いな。
選ばれたというか頼まれたって認識だし。
いや、選ばれたから、頼まれたのか。
何か、難しいよな言葉って。
「他の皆はまだ知らないけど、アルテナ様に──私たちの主神に、この世界に呼ばれたユキマサ君には〝聖教会〟は何があっても基本味方だよ」
「そりゃよかった。世辞抜きでありがたい。つーか、アルテナ様々だな。神様の加護にでもあった気分だ」
「ユキマサ君がアルテナ様に選ばれてこの世界に来たことが正式に承認されれば〝聖教会〟でも、発言権とか私以上、教皇並、ううん、それ以上の事実上トップクラスの物になると思うよ?」
「そういうもんなのか?」
「そういうもんだよ♪」
ふふっと微笑むと酒を口に運ぶノア。
その後も2時間ぐらい、ダベりながら俺とノアは酒を飲んでいた。二人きりだが話しも盛り上がった。
いい時間だから寝ようと、どっちから言ったかはよく覚えてない。でも、俺が言ったのかもしれない。
外がうっすらと明るくなってきた頃、俺とノアはやっと寝床についた──
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