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第289話 不問
しおりを挟む──大都市エルクステン
ギルドマスター室──
「申し訳ありません。ギルドマスター、全て私の責任です。処分も覚悟の上です」
「落ち着いてください。貴方達は運がよかった。システィア隊長が戦った集団は盗賊でした。もちろん軽く懸賞金が出るぐらいには、困った連中です」
「手配中の盗賊の確保、今回のギルド騎士と一般市民との喧嘩と思われた騒動はエメレアさんもシスティア隊長も処罰は免れそうですよ。むしろ褒賞物です」
「そ、そうですか……エメレアとミリアにも早く知らせてやらねば。心配してるはずだ」
「それと、ことの顛末は聞いていますが、私でもエメレアさんと同じことをしていたかもしれません」
「え?」
「そのまんまの意味です。今、彼をバカにされたら私もどうにかなってしまいそうだ。フォルタニアさんを助けるために戦った彼を──〝シルフディート〟の落ち度であった筈のウルスラを倒してくれたのも彼です。そんな彼を犯罪者に祭り上げる、こんな世界が私は大嫌いになりそうです」
「……」
システィアは何も言わず、唇を噛み締める。
残念ながら今のシスティアは何かフォローできるような、気の利いた言葉は持ち合わせていなかった。
*
「歯痒い」
「うん? 味の感想にしては斬新だね♪」
ノアの買ってきてくれた、おにぎりを食べながら俺はそう呟く。つーか、断じて味の感想じゃねぇよ。
「てか、ノアも普通におにぎりとか食うんだな? ファンタジーの世界の大聖女様がおにぎり食べてる所なんて、漫画でも中々見ないからな?」
「漫画? 私から見ると異世界の言葉かな? それに私はこう見えてお米は大好きだよ♪ おにぎりも結構な頻度で食べるし、あ、エルフ米とかもね?」
「コヌフラッチョスのことか?」
「あ、何だ、知ってるんだ? うーん、今度ユキマサ君に私が紹介しようと思ってたのに、これは別の何かを考えないとだね」
「ちなみに聞くが、ソルディミッソナパタって知ってるか?」
「うん? エルフの国のサラダだよね」
何故そんなことを聞くのだろうか? と、いった、不思議な顔をされた。うーん、呪文チックだよな。
もぐもぐとおにぎりを食べるノアは6つ目のおにぎりに手を伸ばす。ふーん、意外と食うんだな?
まあ、沢山食べれるってのは長所だと俺は思う。
食事を摂り終わると、ノアはシャワーを浴びた。
……なんつーか、シャワーの音が少し生々しい。
ノアと交代でシャワーを借りると、やはりこの風呂場もシャワーしかなかった。
この世界に湯舟に入る風習は無いらしい。
さっさとシャワーを浴びて出ると──
「浴び終わった?」
ひょこっと横から突如ノアが現れる。
……ビックリした。そーいやコイツ気配とか消すの化物並みに上手いんだったな。忘れてたよ。
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