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第283話 理想のシナリオ
しおりを挟む──大都市エルクステン
ギルド・ギルドマスター室──
「フォルタニアさん! フォルタニアさんっ! よくぞご無事で! ああ、よかった、本当によかった!」
ギュッと、帰ってきたフォルタニアを抱き締めるロキの目頭には涙が浮かんでいる。
「全てユキマサ様のおかげです」
「ユキマサさんには感謝しきれませんね、彼はどこですか? 直ぐにでもお礼を言いたい──」
「……ロキ、これはご存じですか?」
「何です? その紙は?」
フォルタニアはサーっと、血の気が引く。
知らない? ロキが? この手の話しには目ざとい筈だ──なのにロキがこの事をなぜ知らない。
手配書を手に取ったロキは明らかに動揺し、目を見開いて驚く。
「ど、どういうことですか……これは──」
ロキは懐から〝通信石〟を取り出す。
連絡先は〝三王〟の一人であり、現シルフディートの最大権力者である──シアナ・シルフディートだ。
『ロキね、連絡が来る頃だと思ったわ』
呼び掛けに直ぐに返事が来る。
女王の声は淡々としたものだ。
「それは話が早いですね。単刀直入に言います。全ては私の差し金です。今すぐにユキマサ様の手配書を破棄し、私の手配書を発行してください」
ロキが告げる。元よりそのつもりかのように。
『それはできないわ。貴方の目論見ではフォルタニアを救出して貰い最後は罪の全てを貴方が庇う。そして何処へなりとも逃げて、ひっそりと二人で暮らす。そんな手筈だったんでしょ? ──悪いけど、稗月倖真の指名手配は〝シルフディート〟では、もう可決されたことなの。それじゃあね、ギルドマスター』
「ま、待ってください! ユキマサさんを指名手配──? 上は彼を敵に回すつもりですか? 何をバカなことを!? 彼は人類の存亡を左右する人物です! 彼無き未来に人類の存続は無い! シアナ女王、貴方は〝三王〟でしょう!? 一体何を考えているんですか!!」
ロキは声を荒げるが、通信はそこで途絶える。
「何てことに……」
「らしくないですね。ロキ、貴方にしては考えが甘すぎる。ユキマサ様が指名手配されるリスクはかなり高かった筈です。相手は国家ですよ?」
「そう上手くはいきませんね。私の脚本では世界は動かないみたいだ。もうユキマサさんには償っても償いきれない──ハッキリいいましょう。私はユキマサさんを、あの方の強さと人の良さを完全に利用した。そうまでしても私はフォルタニアさんを助けたかった」
ガクリと膝を尽くロキ。
「どうして、どうして、いつも権力は悪の味方をする! どんな時も、いつだってそうだ、この世界では善人が損をする! どうして、何でですか……」
懺悔のように泣き叫ぶロキ。
そんなロキをフォルタニアはそっと抱き締める。
「ロキ、私は救われましたよ。そして私は諦めません。今度は私が必ずユキマサ様を救って見せます」
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