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第281話 短い旅の終わり
しおりを挟むあの後、結構長めに、あーでもないこーでもない話を夜遅くまでしていた俺達の起床はやや遅めだ。
まあ、俺はいつもどおりって言えばいつもどおりなんだけど。
「ユキマサ様、そろそろ参りましょう」
「ん……そうだな。これ以上ロキを待たせても何か悪い気がするしな。エルクステンに急ごう」
竜車の御者席に座ると不意に俺は地竜に話しかける。
「お前とも今日でお別れか。まあまたいつか会えるさ。そうだ、フォルタニアとまた旅をしようって約束したんだ。よかったらお前も一緒に来いよ? 迎えに行くからさ? お前も良いだろ、フォルタニア?」
そんな会話を優しげに見ていたフォルタニアに同意を求める。
「それは名案ですね。私はこの竜車もとても気に入りました。それを引っ張ってくれる地竜も勿論です。地竜さん、是非お願いできますか?」
「グウ!」
力強い返事が帰ってきた。肯定の意味を含めて。
「よし、決まりだ。後はお前に名前をやろう。管理番号じゃ呼びづらいしな」
地竜の耳辺りには『082』と管理番号が降られている。恐らくはコイツは『082』と呼ばれているんだろう。借竜所でも確かそう呼ばれていた気がする。
「ユキマサ様、何か候補はあるんですか?」
「うーん、そうだな。名前……名前……よし、ゼン──ゼンにしよう。善悪のゼンだ」
「ゼン、いいじゃないですか、賛成です!」
「ガウ!」
「お、気に入ってくれたか? じゃあ、お前は今日からゼンだ。よろしくな。ゼン」
「よろしくお願いしますね。ゼン」
俺とフォルタニアがゼンの名前を呼ぶと、嬉しそうにゼンからか「ガウ!」っと、返事が返ってきた。
軽く食事を済まし、俺とフォルタニアとゼンは〝大都市エルクステン〟への、帰り道を進んでいく。
途中、魔物も出たが、相手という相手ではなかった。
山を越え、更に山を越え、途中、綺麗な水の湧く泉で昼飯を食いながら休憩し、また進んでいく。
それから数時間、やっと〝大都市エルクステン〟が見えてきた。
このまま門を潜ろうと、まだ少し距離のある門に直進するが、次の瞬間、俺達の竜車の前に一人の人影が現れ、慌ててフォルタニアが竜車を止める──
「危ねぇな、誰だ──って、ノア?」
「しっ、今は白娘でいいよ」
今のノアは魔法で髪の色を本来の白から紫へと変え、白フードを被ったノア、通称──白娘ちゃんだ。
「何かあったか?」
ノアの態度がいつもと違かったので、俺は真剣な口調で白娘に問いかける。
「ついさっき届いた物なんだけど。ユキマサ君、これについては、ご存じかな?」
ノアが見せてきたのは2枚の紙だ。それを見た、フォルタニアは顔を一気に青ざめさせるのだった──。
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