生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
281 / 378

第280話 帰路10

しおりを挟む


「ふぅ、食ったなぁ!」

 竜車に戻るとホっと一息く。

「はい、お腹一杯です」

 フォルタニアも屋台で結構色々と食べていた。
 傍から見ても楽しそうだったので俺も嬉しくなる。

 街で宿を取るかと言う話になったが、何故かフォルタニアが偉く竜車の荷台を気に入ったらしく、昨日と同じく二人とも竜車で今夜も休むことにした。

 今日も俺は竜車の回りに結界を張る。
 比較的、安全な街と言っても用心するに越したことは無いだろう。

 戸締まりした竜車の荷台に布団を並べ、横になると、フォルタニアが楽しそうに話かけて来る。

「そういえば、ユキマサ様の武器はエルルカ様の作られた武器なんですよね?」
「ん、ああ、らしいな? てか、エルルカはなんだよな?」

「ふふ、エルルカ様の実力なら鍛冶以外で引く手数多でも、納得ですよ。とても優しい方ですし」
「六魔導士はも重視されるんだったな?」

 同じ六魔導士のシラセもパンプキックも世辞抜きで良い奴らだった。実力も確かだ。

「ユキマサ様の剣は何て名前ですか! 雪月花せつげっかシリーズの1つですよね?」
月夜かぐやって名前だ。てか、雪月花シリーズ?」

「ご存じ無いんですか? エルルカ様が作られる武器は3種類のみ。短剣、剣、刀の3種です。そしてその武器の名前には、短剣に、剣に、刀にが必ず付くので、通称──雪月花シリーズと呼ばれています」

 キリッとした目でフォルタニアが説明する。雪月花シリーズが好きなのか少し興奮気味だ。

「そんな呼び方の決まりがあったんだな」
「代表作だと〝雪歩ゆきほ〟や〝花橘はなたちばな〟は〝中央連合王国アルカディア〟の国宝に指定されてますよ」

「それに並ぶ名剣ってことか」

 一先ひとまず、大猪おおししとかをバカスカと解体するような代物ではないことは分かった。
 てか、国宝に並ぶって下世話な話、あれ一体いくらするんだ? ……うわあ、考えたくねぇ。

「はい、そうですよ。大切にしてくださいね──ですが、魔王をほうむり、黒龍を倒した剣ってだけで、もう十分以上に名剣と呼べる代物でしょうね」

 ふふふ、と、謎テンションのフォルタニア。

「どうした? やけにテンション高いな」
「あ、すいません。ちょっと楽しくなってきちゃいまして」

「いや、謝る必要は無いが。ハハッ、そんなにこの雪月花シリーズが好きなんだな」
「む、それもですが。私はユキマサ様とこうして居られることが楽しいのです」

 ん? ありがとう……で、いいのか?

「竜車に乗り、街を見て、美味しい物を一緒に食べて、色んなことを話ながら、こうして隣り合わせで寝る。いつまでも、こんな時間が続けばいいのに」

 と、フォルタニアは何処か寂しそうな声で言う。
 俺も楽しくて忘れていたが、明日にはもうこの旅は終わりなんだな。そう思うと確かに俺も寂しく思う。

 そうか、そうか……そうか。

「また来ればいいさ。いつでも付き合うぜ、旅ぐらい。まあ、俺はこの世界に詳しくないから案内するのはフォルタニアになるけどな?」
「そうですね、また必ず来ましょう、約束ですよ」

 小指を伸ばしてくるフォルタニアの指に俺は、自身の小指を絡める。ああ、約束だ、また必ず来よう──
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

処理中です...