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第265話 伝言と報告
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──大都市エルクステン
聖教会・大聖堂(先日)──
ロキが〝聖教会〟の大聖堂を訪れ、ノアにギルドマスターを引き継いで、やってもらいたいというロキの頼みをノアが承諾した時まで遡る。
『一つだけ聞かせてもらってもいいかな?』
『なんなりと』
ノアとロキ、二人の会話だ。ロキは頭を垂れ、自身の左胸に手を当て紳士的な姿勢でいる。
『ユキマサ君にフォルタニアさんの救出を頼んだ時に、ロキさん、貴方はどうやって頼んだの?』
『頼み方ですか……? 私は私の持てる精一杯の姿勢で、理由を洗いざらい話し頼んだつもりです』
何かイケなかったか……と、少し慌てた様子でロキは答える──対するノアは冷静に告げる。
『うん、それがイケなかったかな? ユキマサ君の言う通り、随分と追い詰められてたみたいだね。普段の貴方なら、こんな簡単なこと直ぐに気づけたろうに』
『……? えーと、それは一体? ユキマサさんが何かおっしゃっていたのですか!?』
『うん。エメレアさんからの伝言だけどね? それと気づけた筈ってのは簡単な話し、フォルタニアさんが要る時点で嘘の類いは吐けないよね? それで、シアナ女王の前で「ギルドマスターからの差し金か?」みたいな質問をされた時点でアウト、しかも貴方はシアナ女王との契約で動くことができない、もし動いたらフォルタニアさんの扱いはもっと悪くなる──それは貴方の指示で誰かが動いても同じことだよね?』
『──ッ!? そ、それは盲点です』
いつものロキなら余裕で気づいていたことだろう。
そんなことすら気づかないほど、フォルタニアが居なくなってからのロキは気が動転していた。
『だからユキマサ君はどちらにしろ、ロキさん、貴方の頼みは断らざるを得なかった』
『では、ユキマサ様は……』
『うん〝シルフディート〟に向かってるよ。それに貴方が私にギルドマスターを任せようとする事までユキマサ君は読んでたみたいだよ? ふふ♪ ロキさん、これは一本取られたんじゃないかな?』
『ぐうの音も出ませんね。分かりました。私はユキマサさんを信じます。申し訳ありませんが、先程の話は保留でお願いします』
『了解、何か進展があれば伝えるね♪』
『ありがとうございます。それでは失礼します』
『あ、それともう一つだけ質問いいかな? ユキマサ君、どうするつもり? 行動次第では誘拐犯とか、国家反逆罪とかになるんじゃない?』
『勿論、全ての責任は私が負いますよ。当たり前の話しです。彼は私と違って人類を救うのに必要不可欠な方ですから、万が一にも彼が罪人になるような真似はさせません』
『そう、なら私から言うことは何もないかな? ロキさん、陰ながら貴方達の幸せを祈っているよ♪』
その言葉を最後にノアは何も言わない。
ロキは頭を下げ大聖堂を後にする。
*
──大都市エルクステン
聖教会・大聖堂(現在)──
「大聖女様! 〝シルフディート〟より、報告──〝原始の黒・ウルスラ〟撃破! 再封印を確認! また〝屍〟シリュウ・ブラックの撃退に成功とのことです! 尚、シリュウ・ブラックは〝星艦〟殿達が後を追ってましたが、こちらは逃げられたようです」
〝精神疎通〟で報告を受け取った、ノアの付き人である、黄緑色の長い髪のエルフの女性──ヴィクトリア・フィーは受け取ったままの情報を伝える。
「ふふ、それはよかった♪ 流石だね、ユキマサ君とエルルカさんは元気かな?」
「エルルカ殿は〝魔力枯渇〟を起こし、一時意識不明とのことでしたが、今は無事回復してる様子です」
「ふむふむ。──あれ? ユキマサ君は?」
「その……フォルタニア殿を連れて、何処かへ逃走したそうです。ですが〝シルフディート〟からはフォルタニア殿の追跡はしなくていいとのことです」
「意味深だね、誰かが裏で糸を引いてそうかな」
そう言うとノアは髪の色を魔法で白から紫に変え〝アイテムストレージ〟から、お出掛け用の白フードを被り、出入り口へと向かう。
「大聖女様どちらへ!?」
「取り敢えず、今の話をロキさんに伝えにかな? この話を彼が誰よりも一番に聞きたがってる筈だから」
「分かりました。お気をつけて──」
礼儀正しく、頭を斜めに下げたヴィクトリアは、引き続き〝シルフディート〟からの〝精神疎通〟での報告を注意しながら、ノアの背を見送るのだった。
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