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第263話 エルフの集落
しおりを挟むフォルタニアを抱えて、エルフの国を走り抜ける俺は小一時間ほど移動すると、少し一休みする。
比較的、被害が少ないエルフの一集落だ。よく見るとチラホラと店も開いている。
「さてと、えーと、まずは着替えるか?」
俺達は今超目立っている。それは他でも無い、フォルタニアのウェディングドレス姿が理由だ。
道行く人がこちらを振り替えるなり、凝視するなりしている。
「あ、はい。そうですね、私も少し恥ずかしくなってきました」
「じゃあ、服屋だな? この辺にあるか?」
と、辺りを散策していると。あったよエルフの服屋さん。しかも営業中。黒龍が暴れた日だと言うのに偉いな。少し口悪く言うと商売根性たくましい。
……と、思ったら店員いねぇじゃん。
こりゃ、店開けたまま普通に逃げた……避難したな。
「どうしましょうか。留守ですね」
「まあ、金置いてけば文句はあまりでないだろ?」
「あ、お金……」
今、金を持ってない事に気づいた様子のフォルタニアが小さく声を上げる。
「ああ、それなら俺が出すから心配すんな」
「い、いえ、そんな迷惑はかけられません。ですが、恥ずかしながら少しばかり貸していただけると助かります」
「律儀だな、分かった、無利子無担保無上限で貸してやるよ」
小金貨を2、3枚フォルタニアに貸すと、フォルタニアは服を選ぶ。種族柄なのか服屋には緑や黄緑の服が多かった。和服は無いのか? ──等と、考えていると、テキパキとフォルタニアは服を選び「着替えてきます」と、店の中の敷居のある簡易更衣室に入っていく。
待つこと数分、出てきたフォルタニアは少し着飾り目の黄緑のロングワンピースに更に濃い緑色のローブという、随分エルフチックな服装で出てきた。
「へぇ、似合ってるな?」
俺は思ったままの感想を口にすると──
「そ、そうでしょうか。なるべく、この国では目立たない服装を選んだつもりだったのですが……」
と、白く美しく綺麗な頬を顔を赤くする。
それがやたら可愛いので俺は反応に少し困る。
フォルタニアは服の代金を少し多めに置いていった。律儀なフォルタニアは「借りたお金なのにすいません」と、謝ってきたが「気にしすぎだ」と、俺はフォルタニアに短く返事を返す。
フォルタニアがその手に持っていたウェディングドレスは「よければ預かるぞ?」と、聞くと「お願いします」と渡してきた。
俺は受け取ったウェディングドレスを〝アイテムストレージ〟に仕舞う。
(俺もアルテナに貰ったフード付きマント被っとくか。和服だとウェディングドレス程では無いが、嫌でも目立つしな──)
「〝アイテムストレージ〟便利ですね、私も欲しいぐらいです」
「珍しいな、フォルタニアが何かを明確に欲しがるなんて」
「私も人並みには物欲もありますよ?」
クスクスと笑いながらフォルタニアが答える。
「そうか、それと──だ。フォルタニア、一つ相談があるんだが……」
「あ、はい、何でしょう?」
少し真剣な表情になる俺にフォルタニアが、同じく真剣な表情で返事を返してくる。
「俺、今底知れないぐらい腹へってるんだが、何か食わねぇか──?」
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