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第240話 黒龍の一撃
しおりを挟む王宮の外で爆発音が響く。
その後、王宮全体が地響きと共に強く揺れる──
「何だこの地響きは!? 何しやがった!!」
「龍種……〝原始の黒〟──ウルスラ……」
エルルカが珍しく焦っているように見えた。
「──GYRAAAAAAAAAAAA!!」
身体の芯から響き渡る絶叫だ──〝変異種〟のヒュドラよりも魔力がケタ違いに強いな。
これがまだ王宮の外からの遠吠えだってんだから、どれほどなのか推測に困る。
「……来るぞ?」
次の瞬間──
ドガガガガガガンッ!!!!
王宮の高い天井を破壊し、数百mもの長さの大きな黒龍が入ってくる。形はヒュドラのような地面に足を付けるタイプではなく、長い蛇型だ。
名はウルスラと言うらしいが──この〝黒龍〟は黒く硬い鱗に覆われ、体全体に強く魔力を帯びている。
生半可な攻撃じゃ、効かない所か跳ね返されて、むしろ攻撃した方がダメージを受けるな。クッキーで大岩を殴るようなもんだ。こっちが壊れる。
「死死死死……さぁ、ブチ殺しなさい!!」
(──!? あれは不味いな?)
ウルスラが此方に向かい、そのバカデカい口から魔法を吐こうとしている。
火属性の強い魔法──そんな生易しい物じゃない。噴火や業火、そんな言葉の方がしっくりくる。
「任せなさい」
頼もしい言葉だった。声の主はエルルカだ。
どうやら策があるらしい。信じよう。
だが、そこに水を差すのは、シリュウだ。ライフルを構えエルルカを狙う。
それを見た俺はエルルカとシリュウの間に立つ。
一瞬、訝げな表情を向けるが、特に気にせず撃ってくる──だが、俺はそれを難なく打ち返す。
すると、エルルカが魔法の詠唱を始める。
「《我が求めるは・刃の斬撃・しばしの暇を・ただこの時だけは瞬きを止め・鋭利な純魔をもって・愚者を切り裂かん》──〝螺旋金剛刃〟!」
それは斬撃の竜巻。凄まじい切れ味だ。
大気を切り裂き、エルルカの魔法は黒龍ウルスラの吐いた魔法を飲み込んでいく。
「流石だ、エルルカ」
「ええ、ありがとう」
ふぅ……と、息を吐くエルルカ。
その様子は疲労している。
「飲んどくか?」
ヒョイっと、俺は〝アイテムストレージ〟から〝魔力回復薬〟を取り出し、エルルカに投げる。
「いただくわ」
くぴくぴと〝魔力回復薬〟を飲み始める。
「さて、どうする、エルルカ? 戦えるか?」
「あら? 一体誰に言ってるのかしら? 無論よ」
「俺はあの黒龍をやる、あの黒龍が一番厄介そうだ」
「そう、ウルスラは二人がかりで相手にしようと考えていたのだけど──まあ、貴方がそう言うならいいわ。じゃあ、私はシリュウを相手するわね」
背中合わせで俺達はそんな会話をする。そして話すこと数秒、俺達はそれぞれの敵へ向かって走り出す。
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