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第232話 屍
しおりを挟むガキン。
「──全く、本当に不粋ね」
結婚式場に妖艶なエルルカの声が響く。
よく見てみると、今しがた倒れた筈の女王はエルルカの腕の中にいた──どうやら女王は撃たれて倒れたのでは無く、ゲスト席で一連の流れを傍観していたエルルカが危険を察知し、一瞬で女王の元に駆け寄り、弾を避け防ぐ為に女王を後ろに倒したみたいだ。
そして次の瞬間、その男は音もなく現れた。
「──死死死死……、これはこれはどういうサプライズですか? 〝星艦〟〝雷光〟〝剣鬼〟が全滅しているとは? 随分と手間が筈けましたね、死死ッ!!」
「「「──ッ!?」」」
一早く反応したのは、エルルカ、女王、フォルタニアだ。女王とフォルタニアはどんどん顔が驚愕の色に代わっていく。
そいつは女性のように長い黒髪で緑色のバンダナを着けている褐色肌の男だ。そして鋭い鷹のような目。
見える範囲の武器は肩から下げているライフルと、左右の腰に差した二本の素人目で見ても分かる業物の双剣。そして何よりその男の姿は不吉だった。
「フォルタニア、誰だあいつは? 知ってるんだろ?」
「あ、あの男は、いえ、何故ここに!?」
フォルタニアは目を見開いて驚いている。
「あの男は──シリュウ・ブラック。二つ名は〝屍〟──〝魔王信仰〟のNo.2にして、人類でも数える程しかいないレベル100↑の〝限界超越者〟の一人です」
フォルタニアの声は震えている。
恐らく怖いのだ。このシリュウと言う男が。
「〝限界超越者〟だと? あの〝心臓集め部〟にそんな奴がいたのか!?」
〝限界超越者〟──レベルだけを見れば、今そこにいる人類最強部隊〝六魔導士〟の一人であるレベル94のエルルカよりも、上という事になる。
「あぁ、今日は良い日になりそうだ。シルフディート家の心臓が3つも手に入るんですからね、死死ッ」
3つ? あぁ、ドM王子がいたな。忘れてたよ。
ここで一早く動いたのはエルルカだ──
エルルカも持つ──スキル〝アイテムストレージ〟から長ドスを二本取り出し、音もなく移動し、シリュウに斬りかかる!
──シュッ、ギンッ!!
双剣を抜き、シリュウがエルルカの攻撃を止めるが、その風圧で結婚式場に旋風が巻き上がる。
攻撃を止められたエルルカはなにも言わないが、その雰囲気から察するに不機嫌そうな様子だ。
「これはこれは〝剣斎〟エルルカ・アーレヤスト殿、お噂は予々、先日の大戦争では、私の部下が大変お世話になったようですね?」
死死死死と笑い「借りは返させてもらいますよ?」と、シリュウは不吉な笑みで笑うのだった。
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