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第214話 潜入作戦
しおりを挟む蕎麦屋に入り蕎麦を注文すると、しばし蕎麦の到着を待つ。
にしても、久しぶりの蕎麦だな。
腹が減っては戦がなんちゃらと言うからな、腹ごしらえはしっかりしておこう。
「お待たせしました」
割烹着姿のエルフの店員が蕎麦を運んでくる。
「待ってました!」
俺は目を輝かせる。
……だが、ここで異世界ならではの問題を発見する。
め、めんつゆがねぇ。
出汁という概念が無いこの世界では、そばは大根おろしと醤油で食べるみたいだ。
せ、せめて、鰹か昆布で出汁を取らせてくれ……
いや、これはこれで美味いけどさ?
すっかりめんつゆで蕎麦を食べる気だった俺は、これには少し落胆する。
「えぇい、それでも蕎麦は蕎麦だ! いただきます」
手を合わせ、この世界で初めて見た箸で俺は蕎麦を食べ始める。
──!! 美味いな! 何だこれ!!
蕎麦の香りも良いし、コシもある。
て、天ぷら、天ぷらが欲しい……!
でも、システィア曰く、この世界には天ぷら無いんだよなぁ。
「すまない、おかわり貰えるか?」
「あ、はーい、少しお待ちくださいね」
え? 文句いいながら、おかわりしてるじゃないかって?
あー、うん。だって美味いんだもん。
それに久しぶりの箸だ。エルフの国には箸あるんだな。異世界はフォークとスプーンとナイフだったからな。
──待つこと数分、運ばれてきた蕎麦のおかわりを食べると俺は店を後にする。
そうして俺は王宮を目指す。
王宮は国の中心部にあり、俺が走っていっても時間がかかった。辺りはすっかり日が落ちて夜だ。
(さて、どう侵入するか?)
真っ正面から行っても門前払いだろうからな、変装して潜入するのが一番だろう。
……となると、頭まで全身鎧で覆った兵士が適任か、しかも〝ステータス画面〟の提示も済ませた人物が望ましい。
ん?
「おい聞いたか? 今日の入隊試験で〝剣鬼〟と互角に渡り合った奴がいたらしいぞ?」
「へぇ、ロゼさんにか? 明日の入隊式で顔でも拝ませて貰うか」
(入隊式──明日? これは好都合だな)
入隊式ってことは、それなりのセキュリティ面も考えて〝ステータス画面〟の提示も済ませてるだろうしな? それに入隊式直後にまた〝ステータス画面〟の提示を求められる可能性も低いだろう。
今回の潜入で一番厄介なのは、この異世界では最早、常識である、ゲームみたいな〝ステータス画面〟の提示を求められることだ。
嘘の類いは入力できねぇし、兵士で潜入したら〝ステータス画面〟の提示を求められたらそこで詰みだしな。
よし、今の話を聞くに潜入は明日にした方がいいな! そう考えた俺は今日は宿を取り明日に備えるのだった──。
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