202 / 378
第201話 風邪2
しおりを挟む「うぅん……」
夜中、熱が更に上がってきた様子のクレハが小さく唸りを上げる。
(クレハ……大丈夫か……何で俺の回復魔法じゃ風邪は治せないんだ、毎回我ながら謎だ──)
*
「う……うん……」
朝、最初に目覚めたのは俺だった。
「……ユキマサ君……起きてたの……」
「今起きた所だ、クレハ、熱は……まだありそうだな」
腕枕から伝わるクレハの体温から、まだクレハの熱が下がってない事を確認する。
「クレハ、昨日の夜から何も食ってないだろ? 何か作ってくるよ、台所借りるぞ」
「うん、ありがとう」
ということで俺は台所を借り、お粥を作る。
クレハの婆さんはクレハの風邪薬を朝一で買いにいったみたいだ。
さて、まずは米を用意してと──
お粥はシンプルに作るのが一番美味い。
俺は鍋に水を入れ、米を煮ていく。
米が煮える間に俺はミリアの森で貰った〝ゴッドアップル〟をウサギ切りで切る。
エメレアの話だと最高級のリンゴらしい。
「お、そろそろ完成するな」
火を止め、お粥を皿に装い、クレハの部屋に運ぶ。
「クレハ、お粥できたぞ、食えるか?」
「うん……ありがとう……」
ベッドから上体を起こすクレハだが、上体を起こすだけでも辛そうだ。
「あ、おい、フラフラじゃねぇか」
「ご、ごめんね」
「いや、だから謝る必要は全く無いんだが……仕方ねぇな。ちょっと失礼するぞ?」
と、俺はクレハの背後に回る。
所謂、バッグハグの形でクレハを寄りかからせる。
「ゆ、ユキマサ君っ///」
「嫌だったか? 寄りかかれた方が楽だろ?」
「ぜ、全然嫌じゃない……///」
「そりゃよかった」
これでクレハに嫌だとか言われたら立ち直れなかったところだったな。
「美味しそう……いただきます……」
「召し上がれ、塩はお好みで入れてくれ」
「美味しい! あ、ダルかった疲れが取れる……ユキマサ君の〝料理師〟のスキルだね」
「みたいだな、少しでも楽になれば俺も嬉しいよ」
「リンゴも美味しい。ミリアのリンゴだね」
「ミリアには沢山果物貰ったからな」
その後もクレハはゆっくりと食事を進める。
*
「──ご馳走さまでした」
「お粗末さん、食欲があって良かった」
と、俺が食器を片付けようとするとクレハが少し残念そうに口を開く。
「う……何か勿体ない」
「何がだ?」
「ユキマサ君に寄りかかるの私好きかも」
「ハハッ、何だそりゃ? こんなんでよければいつでもしてやるよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ。食器を片付けたら、またしてやるよ」
そう言い俺は食器を片付けに行く。
すると丁度そのタイミングでクレハの婆さんが風邪薬を買って戻ってくる。
「おかえり、婆さん。丁度、クレハが食事を終えた所なんだ。よければ持っていくが、薬を貰えるか?」
「ただいま。ええ、じゃあ、お願いしようかしら。それとこれも渡しといて貰えるかしら?」
「ん? 何だこれは?」
婆さんから渡されたのは果物だ。
「エメレアとミリアからだよ。丁度ギルドの近くであってね、クレハが風邪って伝えると、お見舞いだってくれたのよ」
「なるほどな、了解だ」
正直、こないだのミリアのくれた果物で果物は事足りてる気がするんだが、よく見るとミリアの森では無かった種類の果物だ。
被らないように配慮はしてくれたんだな。
「あ、あと、エメレアがユキマサさんに重々よろしくと伝えてくれとのことですよ」
「なんだそりゃ? まあ、確かに聞いたよ」
そう言い残し、俺はクレハの部屋に戻る。
「クレハ、婆さんが風邪薬買って、エメレアとミリアからお見舞品貰ってきてくれたぞ?」
「ほんと? 後でお婆ちゃんとエメレアちゃん達にお礼言わないと」
「それなら早く治さないとだな?」
「うん」
「風邪薬、飲んどけ」
「うん、ありがとう」
クレハに風邪薬を飲ませた後、俺は約束通り、クレハをバッグハグ体制で寄りかからせながら、ベッドに腰かける。
「えへへ……/// 何か凄く嬉しい」
「まだ寝てろ、熱も下がってないんだから」
「うん、でも、もう少しだけ……ねぇ、ユキマサ君、お話ししよ」
俺を下から覗き込むクレハは少し真剣な顔で、そう言ってくるのだった──
34
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる