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第192話 治療2
しおりを挟む治療をしながら、俺は手持ちぶさたで各場所の情報を聞いていく──
「綺麗な翼が台無しじゃねぇか、何処の誰にやられたんだ?」
「魔族よ、魔族──愧火。途中、六魔導士の剣斎が来てくれなければ、私たちの命は無かったでしょうね」
「エルルカか、見かけないがあいつどうした?」
と、ちょうどその時だ──
「あら、呼んだかしら?」
背中にムギュッという感覚と共にエルルカが現れる。
「「!!」」
それにいち早くクレハと理沙が反応する。
「無事だったか、よかった」
「私を誰だと思っているの? 心配は無用よ。まあでも、愧火に逃げられたのは私の責任ね」
「お前から逃げる? そんな強者がいたのか?」
「途中で魔王信仰の邪魔が入ってね、まんまと時間を稼がれたわ」
いつも通りのエルルカに見えるが、その顔には悔しさが見える。
「魔王信仰か、なら捨て身できたろ?」
「ええ、だから時間を取られたわ」
そんな話をしてる間も、俺はヴィエラにボワッと緑に光る回復魔法を使っていく。
「相変わらずの治癒能力ね」
「私は見るのは初めてよ」
ヴィエラとエルルカが呟く。
「私より早いね、ビックリだよ」
その様子をノアが見て感想を言う。
と、その時だ。
「──私にも手伝わせて貰えますか?」
泣きボクロに修道服の女性が割って入ってくる。
「ジュリちゃん、こっち、こっちー」
「ハッ、ノア先輩」
現れたのは聖女ジューリア・クーローだった。
「あ、ユキマサ君、こちらジュリちゃん。聖女だよ、正式の名前は──ジューリア・クーロー」
「知ってる。ジューリア・クーロー。大砦ではロクに挨拶できずに悪いな。確かミリアの恩人だよな?」
「私に気遣いは不要ですよ。それにミリアさんをご存じなのですね」
「存じるも何もさっきからお前をキラキラした目で見てるぞ?」
「──ジューリア様っ」
はぎゅりとミリアがジューリアに抱きつく。
「ミリアさん、改めまして、大きくなりましたね。お怪我の方は大丈夫ですか?」
「はい、4年前もさっきの怪我の時もちゃんとお礼も言えなくてごめんなさい……」
「気にすることは無いですよ、後程、ゆっくりとお話でもしましょう」
「うぐ……ミリア……よかったわね……」
涙声のエメレア。
何でお前がそんな泣いてんだよ!
まあ、エメレアだし、もうなんか慣れたよ。
「あー、何だ? 再会の所を悪いが手伝ってくれんのか? 治療?」
「はい、先輩様、お手伝いお任せくださいませ」
「待て、先輩様って、俺のことか?」
「はい、ノア先輩のそのまた上の実力者と聞いていますので」
「そんな畏まられる記憶はないぞ、つーか、何だよ、先輩様って! 二重敬語じゃねぇか!」
「だ、ダメですか……」
ショボンとショボくれるジューリア。
「別にダメって訳じゃねぇが……あぁ、もう分かったよ! 好きに先輩でも後輩でも呼べ!」
「はい! 先輩様!」
嬉しそうに笑うジューリアの顔が、また反則的に可愛い。
その後、俺、ノア、ジューリアの三人を中心に負傷者の治療をして行く──
*
「ふぃー、何とか重体者と重傷者の治療はあらかた済んだな」
「お疲れさま」
「お疲れさまでした」
と、一息吐いてると、入り口から2名を先頭に隊が現れる。
「ご無事でしたか、ティクタス隊長、エミル隊長」
ホッとした様子でロキが話しかかる。
「俺ははじめましてだな」
「こちらの狼人族の方が第1騎士隊長のティクタス・フーズレイズ隊長。隣の長髪の金髪のエルフの方が第7騎士隊長エミル・ネルギ隊長です」
二人に変わりロキが二人を紹介する。
「ティクタスだ、それにしても君が魔王を?」
「エミルです、ありがとう、街は君のお陰で救われたよ」
「別に俺だけの功績じゃないがな」
少し照れ臭くなった俺はそう返事を返すのだった。
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