192 / 378
第191話 治療
しおりを挟む──現代・大都市エルクステン
ギルドマスター室──
「……と、言うわけだ」
俺は簡潔に話しを纏める。部屋には相変わらず、クレハ、エメレア、ミリアにノアとロキ、フォルアニアとシスティアに糞爺と理沙がいる。
「『と、言うわけだ』じゃないわよ! 異世界って何!? フォルタニアさん!」
エメレアが叫ぶ、フォルタニアに今の話しが嘘か本当かを確かめているのだろう。
「嘘はありませんね……正直、私も驚いています」
「クレハは知ってたの?」
「うん、大体は……元カノの件は知らなかったけど」
ムスり顔のクレハ。
「私は大体知ってたかな? 神託で見たよ」
どこまでも落ち着いた様子のノアは、この場でいちばん落ち着いてる様子だ。
「ノアは理沙が来ることも知ってたのか?」
「ごめん、それは知らなかったかな、私が知ってたのはユキマサ君の方……それと、大丈夫? その傷」
ノアの視線が俺の腹部へと向く。
ガリアペストから貰った一撃のやつだ。
「ああ、自分の怪我は自分じゃ俺は治せないらしくてな。まあ、クレハに貰った〝上回復薬〟が効いてるよ」
「そっか、ならいいんだけど」
「それにしても驚きました。異世界もですが、白獅子と血縁者とは……」
本気で驚いた様子のロキ。
「俺は糞爺が白獅子なんて名で呼ばれてる方が不思議だけどな? つーか、その髪どうしたんだ?」
以前は黒髪だった髪が白くなってる糞爺に俺は質問する。
「魔力消失ではないでしょうか?」
その質問に答えたのはフォルタニアだ。
「何だ、そりゃ?」
「一定以上の魔力を消失すると起きる現象です」
「魔王との戦いで少し無茶しての、このザマじゃ」
「魔力消失? 治らないのか?」
「多分、お前が治療しても無理じゃな」
「そうか……」
「なあに、ユキマサが気に病むことはない。わしが自分でやったことじゃからの」
「そうかよ、別に心配なんてしてねぇけど」
「積もる話しもあるかと思いますが、今は魔王戦争の後片付けを優先してもよろしいですか?」
恐る恐るロキが発言する。
「すまんの、気にせず続けてくれ」
「それには同感だ、俺たちに気にするな」
「はぁ、そう言われましても……」
「どっちだよ!?」
てか、ロキが言い出しっぺだろ? 何で悩むんだよ。こいつも混乱してるのか?
「あのなぁ、話せることは全部話したつもりだぞ?」
「まだ頭の整理がつきませんで、ですか、そうでしたね、そうですね、すいません」
「いや、謝ることはないが……」
些か言葉に詰まるロキに言葉が詰まる。
「取り合えず、今日は解散でいいんじゃないかな? 後始末もバカみたいに残ってるし……暁さんも理沙さんもそれでいいよね?」
ノアが発言するが、その言葉は重い。
まるで、その全てが正しいかのようだ。
「わしは構わんぞ」
「わ、私もです」
「だ、そうだ。つーか、ロキ、魔王戦争の後始末もバカみたいに残ってんだろ? それに集中しろ」
「分かりました。まだまだ話を聴きたくないといえば嘘になりますが、まずは都市の終息を急ぎましょう。隊からもかなりの負傷者を出してしまった」
瞬時に頭を切り替えられるロキは優秀だ。
「ユキマサ、解散とのことじゃが、明日またこの場所に集合でよいかの?」
「なんだ、こっちから予定をいれようと思ってたが、不要だったか?」
「……怒っとらんのか?」
「そうだな。怒ってる。でも、何か理由があるんだろ? 明日、ちゃんと話せ、ちゃんと聞くから」
「……分かった」
そう糞爺は言うのだった。
*
ギルドを出ると糞爺と理沙は壁外にあるという家に向かった。明日には再集合だしな、久しぶりに会う婆ちゃんにも楽しみだ。
「負傷者、多いみたいだな」
「うん、魔王戦争だからね、これでも少ない方だよ」
隣のクレハが言う。
「最小限記録でしょうね、今回は六魔導士から3名、それに聖女様、大聖女様にユキマサ様が集まってくださり、大戦力で迎え撃つことができました」
高らかに話すロキは手を空に大きく広げ、大変満足な様子だ。
「ギルドマスター、第3隊と第6隊が戻ってきました! 共に多数の重傷者が見られますが、死者は確認されていません」
隊の一人がロキに報告する。
「直ぐに手当てを!」
「任せな、俺も手伝う」
「ほ、本当ですか! 重ね重ね申し訳ありません」
「私も手伝うよ」
そう自ら手を挙げたのはノアだ。
「決まりだ──おい! 重傷者からこっちに運べ! つーか、ヴィエラ! お前だ、お前!」
明らかに一人、意識は何とかあるようだが大ケガの第3隊長のヴィエラ・フローリアを俺は名指しで呼ぶ。
「ユキマサ……私より他の人をお願い」
「言ったろ? 重傷者順だ、お前のはもう重体だろうがな、あとはそこの忍者か?」
ちなみに軽傷、重傷は命に別状がない怪我。
重体は命に別状がある怪我だ。
「僕も大丈夫です……先に皆さんを」
忍者服の猫人族の男性が喋るが、ヴィエラ同様、傷は深そうだ。
「何度も言わすな、重体のお前らが優先だ。ノアはこの忍者を頼む、ヴィエラは俺が治す」
「了解、ルドルフ隊長、じっとしててね?」
そうして俺たちは治療をしていく。
26
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?
夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。
1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。
転生先で期待して初期ステータスを確認すると0!
かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。
Ωといえば、なんか強そうな気がする!
この世界での冒険の幕が開いた。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる