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第187話 過去編・花蓮ノ子守唄18
しおりを挟む──それから8年が経った。
ここからは俺と理沙が16歳の年の話だ。
親父と母さんが亡くなり、糞爺と婆ちゃんが出ていった後、俺と理沙は孤児院である〝牧月学園〟にて暮らしていた。糞爺と牧野が出資していた場所だ。
「ユキマサ! 朝だよ! ほら、起きる!」
シャアアアと部屋のカーテンを開け、理沙が俺を起こしに来る。
「もうちょい……」
「ダーメ! じゃないとユキマサだけ、朝食を洋食にするよ?」
クソ、胃袋を掴んできやがる。
理沙め、腕をあげたな?
「分かった、起きるよ」
「最初からそうすればいいのに」
「理沙の朝食は美味いからな、特に和食は絶品だ。少しばかりの睡眠ぐらい我慢するさ?」
「……ありがとっ///」
顔を赤らめる理沙。
「それに今日はお墓参りなんだからね!」
「あぁ、親父達の月命日か、土曜だし、ゆっくりでいいだろ?」
「ここでゆっくりしてどうするのよ!」
墓でゆっくりしてもどうなのかだが、ここは理沙に話を合わせる。
寝巻きのまま居間に下りると、朝食が用意されており、いい匂いが鼻孔をくすぐる。
「あ、倖兄、起きた?」
「凉華か、おはよう」
現れたのは、この孤児院の黒髪サイドテールの年下の中学2年の14歳──瑞夏凉華だ。
「おはよう、朝から理沙姉とお楽しみだった?」
ニヤニヤと笑う凉華。
「変な言い方すんじゃねぇよ」
「凉華!!」
「はいはーい、息ピッタリ! ごはん、ごはん!」
すると、そんな俺達に声がかけられる。
「全く……朝から騒がしいな」
「牧野、来てたのか?」
新聞片手に現れたのは牧野だ。
「ああ、様子を見にな」
「そうだ、牧野、また何か仕事紹介してくれよ?」
「こちらとしては大歓迎だ、近い内に連絡する」
「助かる」
ちなみにだが、理沙は高校に通っているが、俺はどうも普通の学校が自分に合わず、通っていない。だからこうして時々、牧野から割りのいい仕事を受けている。
内容は被災地の瓦礫除去やイエティ探しまで様々だ。
でも、牧野に言われ、最低限の資格は取っておけとのことで、高校卒業資格認定試験に合格している。
「あ、グルメ! おかえり~♪」
グルメとは理沙が飼っている(?)ロボット掃除機の名前だ。
「ユキマサ、起きたか?」
「ユキマサ、おっはー」
次に現れたのは黒髪短髪の眼鏡をかけた、俺より2つ上の孤児院の男性だ。
その隣には、同じく眼鏡をかけた短髪の女性がいる。
男の方は千羽正門、女の方が笹田透子だ。
ちなみにどうやら最近この二人は男女交際を始めたらしく、かなりの頻度で一緒にいる。
「ああ、おはよう。正門も透子も早いな」
「いやいや、ユキマサが遅いだけだから」
ブンブンと手を振り理沙がツッコむ。
「よし、朝食にしようぜ!」
俺は話を切り上げ、朝食へ視線を移す。
「倖兄の言うとおりだよ、お腹すいたぁ~」
それに凉華が賛同してくれた。
「はぁ……上手く話を逸らされた気がするけど、分かったわよ、朝食にしましょ?」
と、理沙の許可も下りたので俺達はそれぞれテーブルに着く。
ちなみに今の俺を含めた5人以外は、後は10歳以下のチビ達だ。それでも全員あわせると20人を越える。
「「「「「「いただきます!」」」」」」
手を合わせ、食事の挨拶をする。
「あたし、倖兄の隣ぃ!」
「どうした、凉華、随分なついてくるじゃねぇか?」
「えへへ~、でしょ~」
何故かご機嫌の凉華は卵焼きを口に運ぶ。
「むむむ……」
「どうした理沙?」
「別っにぃ~。可愛い凉華になつかれていいねー」
不機嫌に理沙は味噌汁をずずーっと飲む。
「そうだ理沙、昼は何だ? 墓参りに弁当持ってくんだろ?」
「何で朝食を食べながら昼食の話しになるのよ?」
「だって気になるだろ?」
「気にならないよ」
「まあ、着いてからのお楽しみでもそれはそれでいいか」
「理沙姉、おにぎり作ってたよ?」
「お、いいねぇ、具材は何だろうな?」
〝はいはーい、私知ってる〟とばかりに隣に座る凉華が昼飯情報を知らせてくる。
「ユキマサは食い意地が張ってるな。木枯そっくりだ」
呆れる牧野。
「まあな。それに食ったら出るか、墓参りだ──」
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