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第161話 曲者
しおりを挟む俺は魔王の元へ向かう為、本日ニ度目となる、同じ道を今度はクレハと共に走っていた。
少し進むと〝魔王信仰〟と戦った場所に出る。
様子を見ると、この都市の領主である、ガーロックと憲兵達の姿が見える。
ガーロックの他に憲兵の中にも幾人か手練れがいるみたいで、流石に無傷では無いみたいだが〝魔王信仰〟の進撃を防ぎきっている。
「あー……おい、クレハ、物は相談なんだが、あいつらを避けて先に進むことはできたりするか?」
ダメ元で俺はガーロックとの再会に「君は何で進んだ方向とは逆から来るのかね」的な質問を回避する可能性を導くべく、俺はクレハに質問する。
「あ、うん。この見晴らしならいけるかも」
「マジか! 是非に頼む!」
ダメ元が当たる俺はクレハに頼み込む。
「しっかり、掴まってね」
──ヒュン、パッ
俺はクレハの手を握り、俺はクレハの〝ユニークスキル〟の〝瞬間移動〟で、その場を移動する。
「流石だ、助かる」
と、俺とクレハはガーロックと再会し、イチイチ今までの一通りの流れを説明するのは面倒だなと思い、クレハの力を借りる。
そのまま進んでいくと、魔王とノアが戦ってる音が近くなる。
どうやら、持ちこたえてくれたみたいだ。
「近いな、急ごう」
「うん」
緊張した様子でクレハが頷く。
「──!? 魔物か!」
「ユキマサ君、来るよ!」
「クソ、面倒だな!」
急がねばならないのに魔物に行く手を遮られ、俺は舌打ちする。
*
「そろそろ流石に疲れてきたかな」
少し肩で息をしながらノアが言う。
「ねぇ、魔王さん、何で貴方達は私達人類を滅ぼしたがってるのかな?」
返答はない。だが、次の瞬間、魔王が口を開く。
その相手はノアではない。
「ナニモノダ?」
ヒュン、と音を立て、何かが高速で移動する。
そしてそれが通った後の場所は魔王の毒ガスが消えている。
「──曲者だよ。異世界代表、神様推薦のな!」
俺は魔王に斬りかかる!
(何だこの重さは? 質量が姿のそれじゃねぇぞ!)
5~6mの魔王の体長に比べて、その質量が桁違いに重い。まるで星その物に斬り付けたかのようだ。
「ユキマサ君、気づいた?」
ノアが話しかけて来る。
「ああ……なんつー重さだ。それと遅れて悪かったな」
「気にしないで、来てくれたんだから、私は満足だよ。それとクレハさん、貴方も来てくれたんだね」
ノアが俺の後ろにいるクレハに目を向ける。
「はい、ノアさん。微力ですが、足手まといにならないよう努力します」
クレハの声は震えている。
魔王の圧倒的な存在感に震えが止まらないのだろう。
「大丈夫だ、任せとけ」
そんなクレハに俺は笑いかける。
「うん」
クレハが頷く。
「……にしても、会話中は待ってくれるとは、サービス精神旺盛じゃねぇか? なあ、魔王様よぉ?」
と、俺はガリアペストを見る。
だが、魔王は待っていたのではない。
自分を目の前にして、あっけらかんと話しをする目の前の人類に驚いていただけである。
ボフンッ!
魔王から毒ガスが辺り一面に噴出される。
「毒か!?」
それを俺は右手を前に翳し、毒を受け止めるように〝回復魔法〟を使う。
俺の〝回復魔法〟には毒の中和作用もある。
次に魔王は片手で大気を掴むような動作をする。
(あれは、不味い! 不味いぞ!)
俺は剣を構える。
──ドウゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!
「何だ!? 地震ッ!?」
地震なんてそんな生易しいものじゃない、街が引っくり返るぞ! 比喩では無く、そのまんまの意味だ。
このままでは、魔王の右手を中心に発生した地震で街が二つに割れ、魔王がくるりと手首を返すと、まるで炒飯を作る時の、フライパンでも引っくり返すかのように街が反転する──
そして次に魔王が取った行動は──熱線だ。ノアの結界を割ったあの攻撃だ。
だが、この攻撃には少しばかりの溜めがある。
バッ、と俺とノアが殆ど同時に駆けだす。
「俺が攻撃を止める、援護に回ってくれ」
「了解」
短くノアと言葉を交わす。
抑える。
そんな行動に出ようとしたその時だ──
「待って、ユキマサ君、ノアさん、任せて!」
──ヒュン、パッ!
クレハが魔王に触れ、瞬間移動で魔王の向きを変えると、真っ正面に放たれた魔王の地震が空中へと進路を変える。
ドバンッ!!
空が割れ、空に浮かぶ雲が真っ二つに裂かれる。
なぜ、自分が空を向いているのか、不思議がる魔王に僅かな隙が生まれた。俺はそれを逃さない。
クレハのお陰で地震に対応する手間も省けたしな。
ここで俺は魔法を使い、剣に纏わせる。
雷系の魔法だ──
ビリ、ビリ、バチ、
そんな音が辺りに響く。
一気にガリアペストに近づき、
魔王の心臓部を狙うと見せかけて左腕を狙う!
「──〝緋婢雷鬼〟!」
バリバチ、ドバン! と、稲妻の如く、音を立て、魔法を纏った剣が魔王ガリアペストへと命中する。
ガリアペストの腕が鮮血と共に宙に舞う。
「やった!」
それを見て嬉しそうにクレハが言う。
(重っ……結構余裕を持って斬ったつもりだったが、ギリギリだったな──)
「──おい、クレハ、つーか、魔王も心臓と頭部の破壊で倒せるんだよな?」
だが、その質問に返事を返して来たのは、少々荒っぽいが、倒れる街の住民を魔王から遠ざけるように遠くに吹き飛ばしているノアだ。
「魔王も弱点は変わらないけど、心臓は2つ、脳も2つあるの。それを破壊しないと魔王は倒せないよ」
と、そうノアは告げるのだった──。
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