生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第160話 分散

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「こちらはわたくしが預かってもよろしいですか?」

 修道服の金髪美女が何故か俺に聞いてくる。
 その指先には駕楽ガラクの残した〝魔力核〟がある。

「俺は別に構わないぞ、倒したのもパンプキックとあんただしな?」
「失礼しました。申し遅れましたね、私はジューリア・クーローと申します。聖教会では聖女と呼ばれている者です」

「ジューリア・クーロー? そうか──あんたがミリアの言っていた恩人か。ミリアから大体の話は聞いているよ。それに聞いてはいたが、美人で驚いた」

 と、そんな話をしていると、パンプキックが何やら手に持つ、クリスタルのような石に話しかけている。

「もしもーし、パンプキックだけど、ロキ、聞こえてる?」
「は? いや、おい、ちょっと待て、この世界に通信器具があるのか?」

 今までの異世界生活(6日間だけど)この世界には今現在は無いと思われた通信器具に俺は驚く。

「え? あるけど。まあ、かなりの希少品かな? だって世界に10個しか無い物だし」

 パンプキックが言う。

(!!? 10個しか無いのか!?)

 この疑問にフォローを入れてくれたのは、俺が異世界から来ていることを知るクレハだ。

「通信晶石は〝天聖の遺産〟の3つある内の一つなの。元々は大きな一つの結晶なんだけど、それを10個に割って欠片自体を複数の魔道具マジックアイテムにしたの」

 〝天聖の遺産〟これもミリアに聞いたな。
 確か天聖の残した──3つの特殊な魔道具マジックアイテムだった筈だ。

 理屈は定かでは無いが、元々の一つの結晶の割れた破片がして、通信具として成り立ってる感じか?

『もしもし、パンプキック様、ロキです。聞こえていますよ』

 通信石からロキの返事が返ってくる。

「ロキ、状況はどうなってる? こっちは駕楽ガラクを倒した所だよ」
『何と! 駕楽ガラクを! それは朗報です! ──ですが、状況はまだ何とも言えませんね。壁外から魔物も押し寄せてきていてまして、第3隊、第6隊は壊滅状態です。そして目下の敵の最大戦力である魔王は大聖女様が今は抑えてくれています』

「壁外の魔物なら、吹き飛ばされついでに見つけたんで、大群でいた1000体ほどは倒しておいたぞ?」

 ここで俺は話しに口を挟む。

『ユキマサさんもそちらに? 把握しました。ですが、東西南北から魔物の各1000~3000近くの大群が押し寄せてる状態です』

 なッ!? となると、まだ10000体以上いるのか!?

「なるほど、半端じゃねぇな。それと個々の方針を考えよう、俺は魔王の所へ行く、お前達はどうする?」

「じゃあ、僕は壁外の魔物の方へ行こうかな」

 パンプキックが手をあげる。

「わしとマリアちゃんは街の魔物の掃討に向かうかの」
「住民の安全も確保しないとねぇ」

 リーゼスとクレハの婆さんが言う。

『第1隊がゴライアスの変異種ヴァルタリスと交戦中、それとたった今入った情報だと、魔族──愧火キビと、ヴィエラ隊長、ルドルフ隊長、エミル隊長、そして六魔導士の〝剣斎けんさい〟エルルカ・アーレヤスト様が交戦中です』

「エルルカも来てるのか?」

 これにはこの場の全員が驚く。

「それとロキ──街中の黒い玉が消えてるが、シラセはどうなった?」
『シラセ様からは私の方に今の所、連絡はありません』

「本人に直接聞けばいいんじゃない? ──おーい、シラセ、そっちはどう?」

 あっけらかんに言うパンプキックが、通信石に呼び掛ける。

「シラセも通信石を持ってんのか?」
「知らないの? 通信石は全部で10個〝六魔導士〟と〝三王さんおう〟それに人類最大規模のギルドのギルドマスターであるロキが持ってるよ」

 そんな話をしてると、通信石から返事が来る。

『……シラセです。こちらは奴孔楼ドクロウを倒しましたが、すみません。傷が深く直ぐには動けません。魔王が相手では足手まといになってしまうかと……うっ……』

 ゆっくりと息を吐くシラセの声は、痛みに耐えるような喋りだ。

「シラセ、俺だ、ユキマサだ」
『ユキマサさん……ご無事でしたか。よかった』
「ああ、すまねぇな。後は任せてくれ、ありがとな」
『いいえ、私は何も──』
「怪我も魔王を倒したら直ぐに治すから、安静にしていてくれ」

 俺はシラセに礼を言い、シラセとの通信を切る。

「私はエルルカさんの方へ向かいます」
「なら、私達第8隊は第1隊の援軍に向かおうと思う」

 通信が終わると、まず、ジューリアが──続いてシスティアが口を開く。

「あの、私は魔王と戦いに行きたいです!」

 だが、そう口を挟んだのはクレハだ。

「クレハ何を……」
「お願い、システィアお姉ちゃん」

 クレハがシスティアをお姉ちゃんと呼ぶ。
 それは隊長と部下ではなく、一人の姉への願いとして放たれた言葉だった。

「──なら、クレハは俺と来い」

 俺はそういい放つ。

「ユキマサ! あなたねぇ! 魔王がどんなに危険か知ってるのっ!」

 隊から顔を出し、俺に怒るのはエメレアだ。

「さあな、だが、
「ッ!?」

「エメレア、約束しよう。クレハは俺が死んでも守る」

「ッ!? ……何なのよ、その自信は?」

 そう呟いた後にエメレアは呼吸を整え喋りだす。

「……いくらクレハが認めても、ヒュドラと魔族の件がなかったら、きっと私は貴方を信じなかったわ──分かった、約束よ。破ったら死んでも殺すから、必ずクレハを無事に連れて帰って来なさい!」

 ぎゅっとクレハを抱き締めると、エメレアはクレハにも「必ず無事にね」と小指を絡ませる。

「システィアもミリアも婆さんもそれでいいか?」

「分かった」
「わ、分かりました」
「ユキマサさんが一緒なら問題ありますまい」

 それぞれ納得して、

「決まりだな、先を急ぐぞ」

 そうして俺達は各々の戦場へと向かった──。
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