160 / 378
第159話 駕楽
しおりを挟む──大都市エルクステン 大砦の門──
「魔族と戦うのは初めてじゃないけど、やっぱり強いね。文字通り桁違いだ」
つー、と額から血を流し、六魔導士──パンプキック・ジャックが呟く。
その後ろには肩で息をする──第8騎士隊長システィア、第2騎士隊長リーゼス、拳の拳聖マリア・アートハイムの姿がある。
この場の主戦力で無傷なのは聖女──ジューリア・クーローだけだ。サポートや周りの魔物の討伐に当たっている第8騎士隊員にも疲労の色が見える。
対する、魔族は一人。
駕楽も無傷では無いが、魔族を殺す為に必要な──頭部と心臓部の破壊はどちらも済んでいない。
だが、パンプキックが加わってからは、それまで余裕を見せていた駕楽が余裕を失ったように見えた──
*
──大都市エルクステン・壁外──
「クソッ、本っ当にキリがねぇな! 何なんだこの魔物の数は!? バーゲンじゃねぇんだぞ!」
倒しても倒しても、わんさかと出てくる魔物に俺を頭を抱える。
事の発端は、魔族である奴孔楼の〝座標石〟なる物で、街の外の遥か上空へと飛ばされ、その落下最中に発見したバカみたいな数の魔物の大群の中を、俺は今、月夜を持ち、斬り進んでいる。
……のだが、これが斬って、蹴って、射ったりしても全然減らない。少しずつ魔物の大群が街に近づいてるまである。
〝アイテムストレージ〟を使い、剣と2丁の魔力銃を使い分けて戦う──
大群の中にいる魔物も様々だ。ワイバーンにミノタウロス、鎧骸骨に蛇熊、それとさっきケルベロスみたいな三首の魔物を倒したら、次の瞬間、その下に潜んでいた、角のある髑髏から生えた大きな蛇の大群が襲ってきたりもした。
(こんな所で足止め食ってる場合じゃない、だが、この数の魔物の大群を放置ってのもできないしな)
と、そんな時、魔物の大群の中から、一際でかい赤い魔物を見つける。
……いや、正確にはコイツは魔獣だったか?
5本の首を持つ、そいつはヒュドラだ。
「これが通常種か? 確かにクレハの言っていた通りだな」
俺は剣を逆手に構え──
ギュンッ! と、ヒュドラを螺旋状に斬り付ける!
(流石に変異種と比べるとかなり弱いな)
ヒュドラの首を全て切り落とすと──
──バリバリバリ、バーン!!
と、いつもながらゲームの如くラグが走り、ヒュドラが消える。
さっきからアイテムドロップもしてるが、拾ってる暇は無いな。勿体ない気もするが、今は先を急ごう。
その後も俺は魔物を倒して行く。
そこには異世界特有の見たことない魔物や、元いた世界で漫画なんかでよく出てくる魔物も多くいた。
*
「──やっと、終わったか!」
俺は魔物を倒しきる。
100や200じゃない、正確に数えてないが1000近くの魔物がいた。
次に俺は街に戻ろうとするが……
「てかここ、大砦の門じゃねぇかっ!」
普通に振り出しじゃねぇか! つーか、飛ばされた場所、振り出しより前じゃん! これがもしすごろくなら『魔族に座標石で飛ばされた。振り出しより前に戻る!』だぞ? ──なんつー、クソゲーだ!
──!?
(んなこと言ってる場合じゃなさそうだな)
門の中からは激しく戦う音が聞こえる。
急ぎ門の中に向かう──てか、転がってる魔王城の残骸が邪魔だな。
「て、え? ユキマサ? 何でそんな所から。」
いち早く俺に気づいたのはパンプキックだ。
流石は六魔導士だな。
「ユキマサ君!!」
「ユキマサか!?」
「おやまあ」
「こっちは助かったわい」
「あれが噂の……」
続いて、クレハ、システィアに……えーと、クレハの婆さん? と、リーゼスと修道服の金髪美女がいる。
「あー、簡単に言えば座標石で飛ばされてな。振り出しより前に戻された、悪いな」
次の瞬間──
──ガッ
俺は足で魔族の攻撃を止める。
「話の最中だが、待ってはくれねぇか。確か〝魔王信仰〟の奴が言ってた話だとお前が駕楽だな?」
この巨大兜の槍魔族からの返事は無い。
その魔族の動きが止まった一瞬の出来事だ。
「ナイス、ユキマサ!」
そう言葉にし、パンプキックが動く。
その手には霧のような物が渦巻いている。
「〝霧桜村雨〟!」
ザクリと駕楽の心臓部を抉る。
「うぐっ!?」
駕楽からは呻き声があがる。
すかさず俺は駕楽の頭部を目掛け──〝アイテムストレージ〟から取り出した月夜で斬りかかる!
だが、刹那の瞬間、駕楽のが早かった。
俺の剣が当たる瞬間、頭部を魔力で守りながら、避ける動作を見せた。
かすりはしたが、破壊するまではいかない。
でかい頭の兜にヒビが入りながらも、まだ駕楽は健在だ。
「いえ、終わりです。この瞬間を私は魔力を極限まで貯めて信じて待っておりました!」
そう言いながら、ドバン! っと、ヒビの入る兜に魔力を纏った戦斧を叩き込むのは修道服の金髪美女だ。
「バカな……」
バリバリ、バーン!
お馴染みのそんな音を立てながら駕楽が消える。
そして魔族を倒した証である〝魔力核〟をドロップアイテムのように残す。
……つーか、毎回ながら、あれだけ苦労する敵なのに、あっけない最後だと思う。
36
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる