生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第159話 駕楽

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 ──大都市エルクステン 大砦の門──

「魔族と戦うのは初めてじゃないけど、やっぱり強いね。文字通り桁違いだ」

 つー、と額から血を流し、六魔導士──パンプキック・ジャックが呟く。

 その後ろには肩で息をする──第8騎士隊長システィア、第2騎士隊長リーゼス、拳の拳聖マリア・アートハイムの姿がある。
 この場の主戦力で無傷なのは聖女──ジューリア・クーローだけだ。サポートや周りの魔物の討伐に当たっている第8騎士隊員にも疲労の色が見える。

 対する、魔族は一人。
 駕楽ガラクも無傷では無いが、魔族を殺す為に必要な──頭部と心臓部の破壊はどちらも

 だが、パンプキックが加わってからは、それまで余裕を見せていた駕楽ガラクが余裕を失ったように見えた──

 *

 ──大都市エルクステン・壁外──

「クソッ、本っ当にキリがねぇな! 何なんだこの魔物の数は!? バーゲンじゃねぇんだぞ!」

 倒しても倒しても、わんさかと出てくる魔物に俺を頭を抱える。
 事の発端は、魔族である奴孔楼ドクロウの〝座標石〟なる物で、街の外の遥か上空へと飛ばされ、その落下最中に発見したバカみたいな数の魔物の大群の中を、俺は今、月夜を持ち、斬り進んでいる。

 ……のだが、これが斬って、蹴って、射ったりしても全然減らない。少しずつ魔物の大群が街に近づいてるまである。

 〝アイテムストレージ〟を使い、剣と2丁の魔力銃を使い分けて戦う──
 大群の中にいる魔物も様々だ。ワイバーンにミノタウロス、鎧骸骨に蛇熊、それとさっきケルベロスみたいな三首の魔物を倒したら、次の瞬間、その下に潜んでいた、角のある髑髏ドクロから生えた大きな蛇の大群が襲ってきたりもした。

(こんな所で足止め食ってる場合じゃない、だが、この数の魔物の大群を放置ってのもできないしな)
 
 と、そんな時、魔物の大群の中から、一際ひときわでかい魔物を見つける。

 ……いや、正確にはコイツはだったか?
 
 の首を持つ、そいつはヒュドラだ。

「これがか? 確かにクレハの言っていた通りだな」

 俺は剣を逆手に構え──

 ギュンッ! と、ヒュドラを螺旋状らせんじょうに斬り付ける!

(流石に変異種ヴァルタリスと比べるとかなりな)

 ヒュドラの首を全て切り落とすと──

 ──バリバリバリ、バーン!!

 と、いつもながらゲームの如くラグが走り、ヒュドラが消える。

 さっきからアイテムドロップもしてるが、拾ってる暇は無いな。勿体ない気もするが、今は先を急ごう。

 その後も俺は魔物を倒して行く。

 そこには異世界特有の見たことない魔物や、元いた世界で漫画なんかでよく出てくる魔物も多くいた。

 *

「──やっと、終わったか!」

 俺は魔物を倒しきる。
 100や200じゃない、正確に数えてないが1000近くの魔物がいた。

 次に俺は街に戻ろうとするが……

「てかここ、大砦の門じゃねぇかっ!」

 普通に振り出しじゃねぇか! つーか、飛ばされた場所、振り出しより前じゃん! これがもしすごろくなら『魔族に座標石で飛ばされた。に戻る!』だぞ? ──なんつー、クソゲーだ!

 ──!?

(んなこと言ってる場合じゃなさそうだな)

 門の中からは激しく戦う音が聞こえる。
 急ぎ門の中に向かう──てか、転がってる魔王城の残骸が邪魔だな。

「て、え? ユキマサ? 何でそんな所から。」

 いち早く俺に気づいたのはパンプキックだ。
 流石は六魔導士だな。

「ユキマサ君!!」
「ユキマサか!?」
「おやまあ」
「こっちは助かったわい」
「あれが噂の……」

 続いて、クレハ、システィアに……えーと、クレハの婆さん? と、リーゼスと修道服の金髪美女がいる。

「あー、簡単に言えば座標石で飛ばされてな。振り出しより前に戻された、悪いな」

 次の瞬間──

 ──ガッ

 俺は足で魔族の攻撃を止める。

「話の最中だが、待ってはくれねぇか。確か〝魔王信仰〟の奴が言ってた話だとお前が駕楽ガラクだな?」

 この巨大カブトの槍魔族からの返事は無い。

 その魔族の動きが止まった一瞬の出来事だ。

「ナイス、ユキマサ!」

 そう言葉にし、パンプキックが動く。
 その手にはのような物が渦巻いている。

「〝霧桜村雨キリザクラムラサメ〟!」

 ザクリと駕楽ガラクの心臓部を抉る。

「うぐっ!?」

 駕楽ガラクからは呻き声があがる。

 すかさず俺は駕楽ガラクの頭部を目掛け──〝アイテムストレージ〟から取り出した月夜で斬りかかる!

 だが、刹那の瞬間、駕楽ガラクのが早かった。
 俺の剣が当たる瞬間、頭部を魔力で守りながら、避ける動作を見せた。

 かすりはしたが、破壊するまではいかない。
 でかい頭の兜にヒビが入りながらも、まだ駕楽ガラクは健在だ。

「いえ、終わりです。この瞬間を私は魔力を極限まで貯めて信じて待っておりました!」

 そう言いながら、ドバン! っと、ヒビの入る兜に魔力を纏った戦斧せんぷを叩き込むのは修道服の金髪美女だ。

「バカな……」

 バリバリ、バーン!
 お馴染みのそんな音を立てながら駕楽ガラクが消える。

 そして魔族を倒した証である〝魔力核〟をドロップアイテムのように残す。

 ……つーか、毎回ながら、あれだけ苦労する敵なのに、あっけない最後だと思う。
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