生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
149 / 378

第148話 魔王の一撃

しおりを挟む


 あれが魔王──

 人型では無いな。魔族のアルケラのが人に近かった。勝手な最近の漫画とかのイメージだともっと人間に近いか、外見は人間と差ほど変わらないような魔王を想像していたが、思ったよりザ・モンスターだったな。
 パッと見だが、会話はできそうに無いな。力の限り暴れる化物、少なくとも死に際まで追い詰めても世界の半分をどうのみたいな事は言って来なさそうだ。

 まあ、世界の半分で手を打ってやるつもりは無いけどな。俺が頼まれたのは世界全部の平和だ。
 夢物語と笑いたい奴は笑え、俺は諦めないぞ!

αアルファΩオメガ──!!」

 シラセの呼び声で、透明な〝人工精霊タルパ〟である、犬神のαアルファと白龍のΩオメガがシラセを守るような位置に付く。

「第一に奴孔楼ドクロウを狙ってください! あの魔族の能力が一番厄介です!」

 瞬時にαアルファΩオメガ奴孔楼ドクロウを狙い攻撃を仕掛ける。

 だが……

 ──ヒュン、バン!

 と、奴孔楼ドクロウは辺りに散らばる黒い玉──〝座標石〟と自分のαアルファΩオメガの攻撃を避ける。

 その時だ、シラセの方を向いた魔王が大きく口を開けると、その口元に光が集まる──嫌な感じだ。ビリビリとあの場所の空気だけ重い……
 つーか、これはどうみても、さっきのノアの結界にヒビを入れた熱線レーザービームだ!

 シラセは険しい顔でその様子を見て、自身のサーベルに魔力を込める。魔力を込めた剣で受け止める気だ。

 だが、あれでは恐らくは防ぎきれない──

 シラセは強い、この世界でも指折りだろう。

 これはシラセが──
 桁違いに! 

 幅数百mメートルの隕石3つを易々と防いだノアの結界に致命的なヒビを入れるような光線ビームだ。
 客観的にだが、結果だけ見れば、あの熱線ビームは、その隕石3つよりもと言うことになる。

 万が一、街に当たったら壊滅的な被害を受ける。そんな物が人体に何て当たったら、恐らくシラセでも即死だ。

 ビュン、ドババババババンッ──!!

 魔王ガリアペストから熱線レーザービームが放たれる。

 αアルファΩオメガが駆け付けようとするが、間に合わない。

 ──バン!!

 俺はシラセと熱線レーザービームの間に入り〝アイテムストレージ〟から取り出した月夜に魔力を強く込め、シラセに向かう、魔王の熱線ビームを真正面から止める!

(やはり、重いな……)

 ──ギンッ!

「ゆ、ユキマサさん!?」
「──よう、シラセ? 任せっきりで悪かったな。あっちはもう大丈夫だ、怪我は無いか?」

「あ、はい、わ、私も大丈夫です……お陰さまで」

 シラセはホッと胸を撫で下ろす。
 さっきの魔王の熱線レーザービームは、自分の剣と魔力じゃ、防ぎきれないのが分かってたような表情だ。

「あれが魔王か、ちょっと行ってくる──」

 こちらから行こうと思ってたんだが、向こうの方から、わざわざ現れてくれるとは気が利いている。

 異世界召喚以降は、毎日魔王の事が頭から離れなかった。正直、どんなもんかの興味もあったし、それにこれはだしな、それも超美人の。

 そうして俺が魔王に向き合おうとした、
 次の瞬間──

 ──ヒュン、バン!

 魔王が

「は──消え……いや、違う、これはさっきの〝座標石〟での移動かッ!?」

 不味いぞ、どこに行きやがった!?

「しくじりました……やはり先に奴孔楼ドクロウを倒すべきでした。私のミスです、すみません」

 帽子を直しながらシラセが悔しげに言う。

 街の何処かにはいる筈だ、すぐ分かる、追うぞ!

 *

 ──大都市エルクステン
       ギルド・ギルドマスター室──

「エメレアさんからの連絡は確かですかッ!?」

 ロキは珍しく本気で焦り、目の前にいるフォルタニアに問いかける。

「はい、間違いありません。、それに隕石を防いだ、街を囲んだ大聖女様の結界も、魔王の攻撃により破壊されたようです」

「現在、魔王の出現場所には第8隊が?」
「はい、それと〝六魔導士〟の──シラセ・アヤセ様と、ユキマサ様がおられるようです」

「〝独軍ウヌエクルトス〟と彼が!? それは一体どういった偶然ですか! 彼らならば、もしかすると!」

 ロキは兆しが見えたとばかりに表情を明るくする。

「はい、私も報告を聞いてそう考えてます」

「魔王の一番の狙いは恐らく、この都市の〝八柱の大結界〟の、その名の通り8本の基盤である〝魔術柱コムルナ〟のでしょう。残りの〝魔術柱コムルナ〟は、この都市を含む四ヶ所に合計4本、これは絶対に死守しなければなりません」

 すると、フォルタニアが耳に手を当てる。
 何か〝精神疎通テレパス〟で受け取ったようだ。

「──ロキ、悲報です。経緯は分かりませんが、魔王が〝聖教会〟の

 *

 ──大都市エルクステン
        〝聖教会〟大聖堂──

「──大聖女様、ま、魔王が……急に……!!」

 ノアのお付き人である、黄緑色の長い髪のエルフの女性──ヴィクトリア・フィーは青ざめた顔でノアに現状を伝える

「うん、了解。そこまでは読めなかったかな? 報告にあった〝座標石〟──これが予想外だったね」

 そう言いながら、ノアは大聖堂の外に出る。

 外に出ると、直ぐに魔王ガリアペストが視界に入って来る。

 その近くには大勢の人が倒れている。
 〝座標石〟で、突如として現れた魔王に対処できなかったのだ。

 だが、魔王はまだ何もしていない。
 ただ単に、現れ、そこにいるだけだ。

 それなのに被害は甚大じんだいであった。

 魔王ガリアペストが現れた場所には不自然にクレーターができている。

 魔王の迫力に押され腰を抜かす者、そして魔王の吐くに苦しみ、のたうち回る者がいた。

 魔王ガリアペストの周囲に渦巻く、2種類の色の紫と黒ガスのような物──それは強烈な毒と病原体であった。
 それに触れた者は、体に黒い発疹が出て、急激な高熱にさいなまれている。
 その数はもう80、90、100人を越えた。

 そんな中、魔王の毒ガスを平然とした顔で通り、真っ直ぐ魔王ガリアペストの前まで歩いて行き、極自然に魔王ガリアペストに話しかける少女の姿があった。

「こんにちは、魔王様──貴方を止めに来たよ」

 の美しい長い髪を風になびかせながら〝大聖女〟──ノア・フォールトューナは、いつもと変わらない落ち着いた口調で、魔王ガリアペストを相手に優々ゆうゆうと告げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...