生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
146 / 378

第145話 黒い山

しおりを挟む


 ──隕石が落ちて来る。

 街の中もギルドも大騒ぎだ。
 そりゃ当たり前だ、急に隕石何て降ってくれば。

 だが、今はみんな固唾かたずを呑んで、その様子を静かに見守っている。

 理由は簡単、それに対抗する手段である、街を一つ包み込む、ノアの結界が張られたからだ。

「俺は念の為、近くまで行くぞ?」
「分かりました、予測落下地点近くには第8隊の方々がいる筈です」

 フォルタニアが情報をくれる。

(つーか、第8隊の方々って──あいつら悪運強いんだが、弱いんだか……変な所の変な確率引くよな)

「私も行きます」

 そうシラセが言う。

「分かった」

 断る理由もないので、俺はシラセの言葉に頷く。

 勿論、走っていくのだが、シラセに合わせて最初は少し加減して走っていたら「私にお構い無く走ってください」と言われた。

 俺とシラセは屋根から屋根を走る。
 障害物が無いのと、空がよく見えるからだ。

 もうすぐ結界に隕石がぶつかる。
 思ったよりも早い。

 隕石の落ちる落下予想地点──
 その場所は俺も何度か通った、街をぐるりと囲む城壁の合間にある〝大砦おおとりでの門〟付近だ。

 すると、砦の方から第8隊がこちらへ待避してくる。

「ユキマサ君!?」
「クレハか、無事みたいだな。よかった」

「ユキマサと──そちらは六魔導士の」

 システィアが俺とシラセに目を向ける。

「〝独軍ウヌエクルトス〟!? 何でこのバカは、毎回毎回そんな大物連れてるのよ! この大物ホイホイ!」

 毎度の如く、変な渾名あだなを付け、俺を呼ぶのはエメレアだ。隣にはしっかりと臨戦態勢のミリアがいる。

(ミリアはこういう所はホントしっかりしてるんだよな……)

「──話してるいとまはありませんよ。皆さん、万が一の事態に備えてください」

 シラセが冷静な口調で言う。
 そのシラセの声を聞き、第8隊は気を引き締める。

 よく見ると、周辺には、逃げ遅れたのか、ノアの結界を信じてか、それ以外の理由なのかは知らないが、市民も多くいるみたいだ。

「ぶつかるぞ!」

 俺がそう言った瞬間だ──

 ──ヒュウゥゥン!! ドォォォンッ!!

 結界に隕石が当たると同時に辺りがピカッと赤く光る。

 ドカドカドカーーンッ!!

 結界に当たった隕石は結界から先に来ることは無く、結界に当たると共に雪崩のように崩れていく。

 隕石が防がれ、少しの沈黙の後──

 ──うわぁぁぁ!!
 と、周りからは歓声が上がる。

 隕石の危機が去ったのだ。
 声をあげて喜びたい気持ちも分かる。

(……だが、何だこの違和感は──)
 
 それにノアの神託しんたくには、
 〝赤い石〟の他に〝〟があった筈だ。

 その〝黒い山〟ってのは、文字通りノアの結界の外でのようになっている、隕石の残骸のことなのか?

 ……違う気がする。嫌な感じだ。

「ユキマサ君、何だろ、私、凄く怖い……」

 震えるクレハが俺の手の袖を掴む。

「エメレア、私も何か嫌な予感がする」

 ここで今日初めてミリアが口を開く。
 そんな二人の様子を見てか、他の第8隊員達にも同様が広がる。第8隊員は50名はいるだろうか? 
 
 〝変異種ヴァルタリス〟のヒュドラの時にいた顔ぶれだ。
 ちらほらと覚えのある顔がある。

「シラセ、お前はどう思う?」
「私も胸騒ぎがします」

 シラセが空を仰ぐ。

 と、その時だ、
 俺は空におかしな物を見つける──

「雨雲? 豪雨スコールでも来るのか?」
「違います! あれは……嘘……!?」

 暗く陰った地面が近づいてくる。
 これは空に何らかの日を遮る物があるからだ。

 パッと見、は雨雲かと思ったが違う。

「なんだありゃ、空に──?」

 雷鳴を纏う黒雲に包まれ、
 その中にあるのは、どうみても城だ。

 そして、この大きな城は、山のようにも見えなくもない。

(嫌な感じだ──ノアの神託にあった、というのは、多分、これのことで間違いなさそうだな?)

「嘘……でしょ……」
「エメレア、フォルタニア殿に報告だ!」
「わ、分かりました!」

 クレハは口を手で覆いながら城を見て、システィアは慌ててエメレアに指示を出し、エメレアが急ぎフォルタニアに〝精神疎通テレパス〟で、事態を報告している。

 すると、シラセも焦った様子で口を開く。

「……魔王城。あれは〝魔王ガリアペスト〟の城です。魔王が攻めて来ました。が始まります──」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界に召喚されたけど無理、普通に。

谷本 督太
ファンタジー
 順風満帆な高校生活を送る少年、卓斗。友達にも恵まれ、何不自由なく幸せに毎日を暮らしていた。  いい会社に就職し、成績を上げて収入を増やし、やがて結婚をして子供を授かり、ただただ幸せな人生を思い描いていた。――ある事件が起こるまで。  予想だにもしない、というより予想とは程遠く本来ならばあり得ないことが起こった。それは、――異世界召喚である。  思い描いていた人生の未来設計図は粉々に砕け散って、非現実的な、夢であって欲しいような、あり得ない世界という名の人生が待ち受けていた。  そして、こんな出鱈目な世界へと召喚したであろう人物を前に、卓斗は言った。――無理!?普通に!!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...