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第139話 紅茶とメロン
しおりを挟む竜車では、俺が昨日ミリアに貰った〝メロメロン〟をレヴィニアが、どうやら気に入ったらしく、イルザが一口サイズに切ってくれた〝メロメロン〟をパクパクと食べ進めた。
一人で全部食べそうな勢いのレヴィニアは、途中、
「あ、ご、ごめんなさい。つい、美味しくて……」
と、顔を赤らめ、慌てて手を止めるレヴィニアに、
「まだまだあるぞ?」
と、もう2つばかり〝アイテムストレージ〟から〝メロメロン〟を出すと「わ、いいの?」と、言いながら、またレヴィニアは嬉しそうに笑ってくれた。
昨日から何も食べて無いと言っていた。恐らくは、昨日は精神的に全く喉が通らなかったのだろう。
そんな気持ちを心配していたイルザも、このレヴィニアの食べっぷりを見て嬉しそうに笑っている。
──と、そんなこんなで、竜車でティータイムを済ませると、その丁度ぐらいで竜車は〝大都市エルクステン〟に着く。
「レヴィニア達はこの後どうするんだ?」
この後、これには『運んできた遺体もどうするんだ?』という意味も込めて俺は聞いていた。
「私とイルザは、まだ数日はこの街に残るわ。迎えの兵達も来ないと帰れないもの。遺体はこの街で火葬してから、国まで持ち帰るつもりよ、だってこんな状態……遺族に見せられないでしょ?」
「確かにな……」
バラバラの遺体、人によっては遺体どころか、腕だけや、首しか無い奴もいた。
「まだ火葬して、綺麗に骨壺に詰めてあげた方が、遺族にも、亡くなった皆の為にもなる筈だわ」
「同意だ。それとレヴィニア……俺はあまり上手くこう言う事は言えないが──頑張れよ、色々と」
「ええ……ありがとう。でも、本当に貴方には感謝しきれないわ。遺体も、貴方がいなければ、どれが誰のかも分からないまま、纏めて弔う事になっていたわ」
「どういたしまして。後、依頼はこれで完遂でいいか?」
「勿論よ、護衛お疲れさまでした」
と、レヴィニアが言うと同時に、イルザが金貨100枚を渡してくる。
うーん、こんなんで金貨100枚って受け取っていいもんなのか? 今更だけどさ……
まあ、でも正当な報酬だ。堂々と受け取ろう。
「ああ、ありがとう」
受け取ると、俺は直ぐに〝アイテムストレージ〟に金貨を仕舞う。
そして、次に俺は……
「──これで今回の俺の役目は終わりだ。どうだ、不服か? ガーロック? いや、領主様と呼んだ方がいいか?」
街を出てから帰るまでの今までの間、ずっと俺を警戒し監視していた〝大都市エルクステン〟の領主──ガーロック・サカズキンに質問する。
「呼び方など何でもいいが、気づいていたのかね?」
「気づかないと思ったか?」
「失礼した。でも、悪く思わないで欲しい。一体何処から来たかも分からない人物への警戒は、私的には当然のことなのだ」
「そう言われちゃ、返す言葉も無いな。じゃあな、あんたともまた何処かで会いそうな気がする」
そう言い、俺はこの場を後にする。
*
エルクステンに戻ると、時刻は夕方だった。
(クレハ達は今日は騎士隊の仕事だと言って、朝からギルドに向かってたが、そろそろ帰ってくる頃か?)
と、そんな事を考えながら、
俺もギルドの方へ向かっていると──
「──ずどどどーーんっ♪」
そんな掛け声と共に白いフードを被った一人の少女が、飛び乗るように俺の背中を押してくる。
「って、な、何でこんな所にいやがる!? の……じゃなかった。白娘!」
突如として現れたのは、以前に落とし物を拾った時に知り合ったノアであった。
だが、俺はノアには、自分がノアと言うことを黙っていて欲しいと言われていた為、適当にノアのその服装から付けた白いフードの娘を略して〝白娘〟と代わりに渾名で呼ぶ。
「こんにちは、ユキマサ君、また会ったね♪」
相変わらず白いフードを深く被り、その素顔まではハッキリとは見えないが、明るいく楽し気な声音で、ノアは俺に笑いかけてくるのだった──。
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