生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第129話 魔族2

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 *

(──クソッ! 何なんだよ、アイツは!?)

 まさか空中から地中へと、真っ直ぐに蹴り落とされる事になるだなんて、今まで微塵も考えた事のなかった──〝魔族アルケラ〟はブシュー! っと、頭から噴き出す血を手で押さえながら、怒りと驚きを交えた思考を頭に巡らす。

(あれは人間食いもんなんて可愛いもんじゃねぇ……ッ!)

 目をカッと開き、アルケラは臨戦態勢を取る。

「あれは、万が一にも〝魔王イヴリス様〟のさまたげとなる可能性がある……ここで俺が息の根を止める」

 *

「チッ……か……」

 アルケラの落ちた……というか、開けたクレーターの中から、禍々しい殺気と、先程までは無かった俺への明確なを感じ、俺は小さく舌打ちする。

 今までは、アルケラは俺達をただの人間エサぐらいにしか考えていなかったからだろう。
 簡単に言えば、油断と言うか、隙が多々見えた。

(本当なら最初の一撃と、次の攻撃の二撃で倒すつもりだったが……普通に耐えられちまったな……)

 そんな事を考えていると……

 ──ドンッ!

 と、地中から飛び出してきたが、俺の喉へと、蠍鎌さそりがまのように変化した鋭く大きな、その右腕で一直線に狙ってくる。

 瞬時に俺は、また〝アイテムストレージ〟から〝月夜〟を出し、その攻撃をガキン! と、受けながら、身体を右に逸らし、反撃をしかけようとする。

 が、アルケラが、もう片方の腕を、こちらは剣のように変化させ、ぐるりと振るう。

 その剣に変化した腕には、黒い霧のような物がまとわれている。嫌な気配だ。呪いや瘴気しょうき──そんな言葉がよく似合う。

 似たような物を、先日倒した。禁術で〝半巨人の影の化物〟に変身した〝魔王信仰〟の〝禁術者〟で見た気がするが、あれよりずっと禍々まがまがしく威力も強い。

 そして振るわれた、攻撃を俺は走り高跳びの背面飛びのように跳び、スレスレを避けながら、バン、ドンと、地面を蹴り──そのままアルケラの背後を取り、首を狙って斬りかかる!!

 これにはアルケラも予想外らしく、少し振り向いた目を丸くしている。

 ──バン! と、アルケラの背中から急に黒い翼が飛び出し、その勢いで俺を吹き飛ばしに来る。
 この翼の出現に今度は俺がビックリする番だった。

「この人間ガキ、あれ避けるのかよ!?」

 忌々いまいまし気にアルケラは、広げた黒い翼を使い、空に向かいながら、今の攻撃の後を目で追っているが、そこには俺の姿はもう無い──

「──ッ!? どこ行きやがった!?」

 慌てて左右を確認し、アルケラは俺を探す。

 次の瞬間、ザクリッ! ザクッ! と、アルケラの黒い翼が斬れる。

「うがッ!?」

 そして俺は痛みに声を上げる、アルケラの真っ正面に現れ、そのまま胴体を、腹の辺りから首の辺りまで、下から上に斬り上げる!

「ガハッ!」

 堪らず、アルケラは血を吐くが、まだ倒れない。

 俺はアルケラの背後を取り、アルケラに言い放つ。

「──どうした? 俺の心臓を食うんだろ? こっちだぞ?」

 ザクリ! ザンッ! ザン! と──
 アルケラを背中から斬って、斬って、斬る!!

「クソッ……この俺が……こんな人間ガキに……ぐふッ」
「魔族だか何だか知らねぇが、さっきから俺は機嫌が悪いんだよ──なぁ、アルケラ?」

 ──ザン! と、真っ正面から俺はアルケラの口から、剣を刺し、喉を貫通させる。

 ──先程、遠回しにそう言われてからと言うもの……自分でもビックリするぐらいに、俺の心中は穏やかでは無かった。
 今の剣も何の躊躇いも無く、アルケラに刺せた。

 にしても、死なないな……
 かなりのダメージを与えた筈だし、喉まで俺の剣が貫通してるんだぞ? 普通、人間なら即死だ。

(何か弱点というか……コアになる部分とか、そこを壊さないと死なないみたいなのが、あったりするのか?)

「──ユキマサ君! 魔族は頭の脳と心臓部の2つを破壊しなきゃ死なないよ! そこを狙って!」

 俺の心を読んだかのような、抜群のタイミングでクレハが重要な情報を教えてくれる。

 そこからの俺の動きは早い──

 アルケラの口から入り、喉を貫通している〝月夜〟を、そのまま更に上へ──ヒュンっと、瞬時に斬り上げ、アルケラの頭を真っ二つにする。

 そして、それと殆ど同時に、瞬時に〝アイテムストレージ〟から取りだした──〝魔力銃〟でアルケラの心臓をドバンと撃ち抜く! あまり時間が無かったが、魔力も強めに込めてある。

 だが、アルケラの心臓を目掛けて撃った〝魔力弾〟は、当たりはしたが、間一髪致命傷に

 アルケラの何かしらの魔法でギリギリ防がれた。
 何の魔法かは知らないが、それだけは分かった。

 魔族は、脳を破壊しても動けるし、魔法も使えるみたいだ。恐らく魔力で体を動かしているのだろう。

 そして魔力のみなもととなる場所は脳と心臓らしい。
 だから、その2つを破壊しなければいけない。

 後、もう一つ、俺は〝頭部と心臓の2つを破壊しなければいけない〟という、理由を見つける。

 回復しているのだ……
 少しずつだが……斬った頭が──

 恐らく、頭と心臓、どちらかだけを破壊しても、そのどちらかが残ってる限り、頭でも心臓でもコイツら魔族は時間が経てば
 だからアルケラは今の俺の攻撃に対して、頭部は捨て、心臓だけを集中して守ったんだ。

「逃がすかッ!」

 逃走を図ろうとする、アルケラを俺は逃がさまいと、もう一度──アルケラの心臓目掛け〝月夜〟を振るおうとするが、その時……

「──イルザッ!!!!」

 今までで一番の悲鳴が、ドレスのお姫様から上がる。

 確かめては無いが、その声音と直感で分かる。

 イルザが息を引き取った。
 もしくはそれに限りなく近い状態となったのだ。

 俺は反射的にクレハ達に意識が行ってしまう。
 ……その結果、それがアルケラの命を救ってしまった。

(しまっ──)

 一瞬、俺が気を取られた──
 その瞬間を逃すアルケラでは無かった。

 結果から言うと、アルケラは全力で逃げた。

 頭は裂け、おびただしい量の血がでているが、その顔に残った2つの鋭く赤い目玉で、さぞかし忌々いまいましそうに、

 ──俺と……そしてクレハを睨みながら。

「待ちやがれッ!」

 だが、その後を追おうとする俺にドレスのお姫様が、切実な思いを心から叫ぶように声をかける。

「──お、お願いしますッ! どうかイルザを助けてください! 私のとても大切な人なんですッ!」

 その声に、俺は一瞬また動きが止まってしまう。

「──ッ」

(ダメだ……)

 これ以上は1秒でも考える時間すら惜しい。俺はアルケラを追うのを一旦め、クレハ達の元に走る──
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