生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第118話 墓参り

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 ──ミリア湖・ハイルデート家 お墓前──

 ミリアの両親のお墓の前で、俺達はシート敷きながらお弁当を広げ、昼食の準備をする。

 メニューはクレハの作った、おにぎり、唐揚げに買ってきたお団子、そして俺の作った念願のだ。

 味噌汁は、今朝けさ俺が作っておいたのを〝アイテムストレージ〟から取り出してある。

 そしてそれらを少しずつミリアがお墓に供えた。

「というか、貴方、そのバカみたいに収納できる〝アイテムストレージ〟があるんなら、クレハのおにぎりや唐揚げもそこに仕舞って持って来なさいよ! 気が利かないわね! クレハに手間がかかるじゃない! バカなの?」

「バカはお前だ。手作り弁当ってのは、少し冷めたぐらいが一番上手いんだよ。おにぎりなら尚更だ──」

 その冷めてきたおにぎりを、温かい味噌汁と一緒に食うのが、これがまた最高にいいんだよな。

「あ、あなたの……そのおにぎり愛は何なのよ……」

 そして、ふとお墓の方に目をやると……

「──何で、ミリアは墓にシイタケしてんだ?」

 ズカズカ、ドスドスと……だが、何処か可愛らしく、ミリアは両親のお墓の手前辺りに椎茸シイタケを挿していた。

「あ、あの、お父さんの好物だったんです。お母さんも大好きだったので……」

 少し手を止め、ミリアがそんな話をする。

「そうか、じゃあ、いっぱいにするか」

 と、俺は墓の回りの地面に椎茸を挿すという、ミリアの作業を手伝う。

 雑草を抜きながら、椎茸を挿して行くのだが、その雑草の中に奇妙な植物を見つける。
 赤い〝はてな〟のような形の植物だ。なんだこれ?

「あ、ユキマサさん! それは絶対食べちゃダメです! し、死んじゃいますよ!」

 それを植物を手に持っていると、慌てたミリアに止められる。
 まあ、別に食うつもりはなかったんだが……

「そ、それは〝ポックリそう〟と言って、食べるとポックリと死んじゃう、も、猛毒の植物なんです!」

 ミリアが説明をしてくれる。

「ぽっくり……って、そう言う意味かよ」
「ちょっと、ユキマサ、その〝無礼な雑草〟をこっちに渡しなさい。燃やすわ」

 エメレアは〝ポックリ草〟を鋭く睨み始める。

「え? あ、ああ。ほれ──」

 別に断る理由もなかったので〝ポックリ草〟を普通にエメレアに手渡す。

 そしてエメレアは「ミリアの家の森に、毒を持って生えてくるなんて万死ばんしよ、燃えなさい」とか言って、火の魔法で〝ポックリ草〟を跡形もなく燃やす。

 ……俺も〝ポックリ草〟みたいにエメレアに燃やされないように、気を付けないとだな。

 その後、俺は〝大都市エルクステン〟で、買ってきた花束をミリアの両親の墓に手向たむける。

「つーか、エメレアは花いっぱいだな」

 〝エルクステン〟の街で、花屋の店員に墓参り用の花をと、見繕みつくろって貰ったが、エメレアは、その俺の買ってきた花束の四倍ぐらいの花束を持っている。

「ふふん、ユキマサ何かとは違うのよ♪ でも、システィア姉さんから預かってきた花もあるけど……」
「今更だが、システィアは仕事か? てっきり、来るもんだと思ってたんだが」

「……貴方ね。か分かってるの? ギルド騎士隊長は万が一の為に、その2日前から全員招集で大忙しよ。まあ〝アルカディア〟や〝シルフディート〟の方へ向かう人もいるけど」

 『明後日は何の日?』と聞かれたが……

 ……どうすっか。全く分かってない。
 明後日? 何かあんのか?

 いや、エメレアの事だ、ミリアの誕生日──
 ……だとか、そんな落ちもありそうだが、騎士隊長がどうのこうのとなると、それも違いそうだ。

 頼りのクレハも、今はお弁当を広げており、俺からも少し離れているので、いつものクレハからの、異世界初心者の俺への知識的フォローの期待もできない。

 そんな事を考えていると、クレハとエメレアとミリアが、お墓の周りを綺麗に花でいっぱいにする。

 そうして完成したお墓には、その手前左右には椎茸しいたけが挿され、色とりどりの花が華やかにお墓を包み込んでいる。お供え物は、おにぎり、唐揚げ、味噌汁、団子だ。椎茸しいたけもだが、おそなえ物に味噌汁というのも、中々に珍しいと思うが、ミリアの家のお墓参りは──その日の自分達のお弁当と、亡くなってしまった人の好物を何か供えるというのが、恒例こうれいらしい。

 作法なんて無い、気持ちが伝わればいい。
 ハイルデート家の墓参りはそんな墓参りだった。

 そしてもうひとつ、最後は皆で食事を摂る。
 墓前で、シートにお弁当を広げての昼食だ。

 俺とクレハとエメレアが、お墓に手を合わせ終わり顔をあげた後も、ミリアはまだずっと手を合わせていた。きっと沢山の事を話しているのだろう──
 そんなミリアを俺達は静かに見守るのだった。
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