生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第117話 千と二十八

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「──〝アルカディア〟の何とか魔導士? 俺も詳しくは知ないんだが、それは〝六魔導士〟の事か?」

 人類の中心──〝中央連合王国アルカディア〟そこのたった人の少数精鋭部隊、王国団。

 通称──〝六魔導士〟
 多分、今の質問の答えはこれであっている筈だ。

 だが、妙だ……六魔導士も、この世界では日本で言うところの、総理大臣ぐらいには有名な奴等な筈。
 数日前に異世界から来た俺じゃあるまいし、何なんだ──この〝エセ関西弁男〟は? 
 
「せやせや、それや。でも、反応からするに少年は違うみたいやな?」

 と、この〝エセ関西弁男〟はポンッと自分の手を叩き、思い出せなかった記憶をパッと思い出したかのような、スッキリとした表情を見せる。まあ、実際そうなのだろう。

「残念ながらな、こう見えて扱い的には〝冒険者〟だ。それに〝六魔導士〟って言えば超が付く程の有名人だろ? ド忘れにしては、忘れ過ぎやしないか?」

 少し気になった俺はそんな質問をしてみる。

「ハハハ、そうやな。でも、別に忘れてたわけやないで。単に記憶してなかっただけや、簡単に言うと僕は君が思ってる程、今の人類に全く興味がないんや」
「なんだそりゃ? まあ、俺も〝六魔導士〟はエルルカしか知らないんだけどな。他の奴等は名前も知らん──逆に、魔王とかはどうなんだ? 詳しいのか?」

「せやな。強いて言えば、今の人類の事よりは、魔王共の事の方が、僕は遥かに詳しいかもなぁ」

 そう言って軽く笑う、この男性ははたから見ればかなり胡散臭いだろうが、多分嘘は吐いていない。

「えーと、ユキマサ君、知り合い?」

 そんな会話を繰り広げていると、隣に座るクレハが、ちょんちょんと俺の袖を引っ張りながら質問をしてくる。

「いや、はじめましてだ」
「あれ? そうなの……あ、でもそっか、そうだよね」

 俺が異世界から数日前に来たばかりだと言う事を知っているクレハは、納得の表情を見せる。

「おっと、失礼。僕の方から話し掛けといて、申し遅れてしもうたなぁ。改めまして、僕は──まだらと言うもんや、よろしゅう頼むで、

 クレハが俺の名を呼んだ事で、まだ名乗ってない俺の名を呼んできたまだらは、軽く自己紹介をして来る。

「ああ、こちらこそ」

 俺は名前も知られているので、当たり障りの無い返事を返す。
 まだらは特に〝ステータス画面〟を見せてくる雰囲気も無いので、俺も見せずに話をする。

「──ちょっと、今度は誰をたらし込んでるのよ?」

 と、俺の隣の、そのまた隣に座るエメレアが俺に向けて、そんな声をかけて来る。

「誰もたらし込んでねぇよ。つーか、まだらは男だろうが」

 ……男だよな? 見た目はどうみても男だ。

 だが、ここは異世界だ。元いた世界の色んな常識は、この異世界では通用しない。
 目の前の、どうみても男にしか見えない人物が、実は女だと言う可能性は十分にある。

 いやまあ、まだらが男だろうが女だろうが、だからと言って、何か特別にどうと言う事は無いんだが。
 強いて言えば、とっても驚くかなってぐらいだ。

 エメレアの減らず口だろうが、何となく変に気になってしまった俺はスキル〝天眼〟を使い──失礼ながら、まだらの〝ステータス画面〟を

 ―ステータス―
 【名前】 斑
 【種族】 人間ヒューマン
 【性別】 男
 【年齢】 1028

「──は……? 1028?」

 ほらみろ、男だ! ……とか言う以前に、思わぬ項目の数字を見て、無意識にその数字を口にしてしまう。

「……ッ!? おぉ、凄いな。ユキマサ君、キミ相手の〝ステータス画面〟見えるんか? 驚いたで」

 俺が呟いた数字から、俺がまだらの〝ステータス画面〟を見たと、瞬時に気づいた斑が驚き半分、感心半分と言った表情で俺を見る。

「悪い、失礼だったな」
「ハハハ、気にせんといてや。むしろ、その行動は正しいで、素性の知れへん相手の情報を集めるのは、こんなご時世では生き抜く為の基本や」

「そう言ってくれると助かる」

 だが、俺は覗いてしまった〝ステータス画面〟のお詫びに自分の〝ステータス画面〟を斑に見せる。

 ―ステータス―
 【名前】 ユキマサ
 【種族】 人間ヒューマン
 【性別】 男
 【年齢】 16

「律儀やなぁ、好感高いで」
「そりゃよかった。にしても驚いたよ。あんた、長生きなんだな。確か〝天聖てんせい〟だったか? 1000年以上生きているなら、その時代の人間なんじゃないのか?」

 ──〝天聖てんせい
 フォルタニアから聞いた話だと、1000年前に4人の魔王を封印した人物。

 そして、もし魔王が復活した時の為に〝八柱の大結界〟という、八つの魔術柱コムルナを基盤に〝大魔術結界〟を発動させ〝人類の英雄〟とも呼ばれているらしい。

 ──〝八柱の大結界〟
 これがあれば、4人の魔王(現在は残り3人)は1人ずつしか行動ができないという、かなり優秀な結界だ。

 つまり、これがある限りは、魔王が全員で攻めてくる事は無いという事だ。
 それこそ今の人類にとっては、生命線とも呼べるような代物だろう。

天聖てんせいか……せやな、よう知っとるで……」

 まだらうれいを帯びた表情で遠い目で空を見上げる。

「──はい、お待たせしました!」

 すると、そのタイミングで、お団子屋のおばさんが、俺達の頼んだ団子と斑の頼んだ『いつもの』とやらが運ばれてくる。

 斑は団子の乗った皿と温かいお茶を受け取り、ミリアは持ち帰りで頼んだ団子の包みを受けとる。

「なんや、もう帰ってしまうんか?」

 そしてミリアが団子を受け取るとほぼ同時に、長椅子から立ち上がった俺に斑が話しかける。

「ああ、話しに興味はあるが、その話しを聞くには、今はも足らなそうだ。また今度ゆっくり聞かせてくれよ? ──礼と言っちゃ何だが、俺からは世にも珍しい〝異世界の話〟をしてやるよ」

 正直、斑の話しはかなり気になるが、今日の目的はミリアの母親のお墓参りだ。
 ここであまり長く話し込むわけにもいかない。まあ、ミリアに頼めばダメとは言わないと思うが、今日の所は遠慮しておこう。

 だが、きっちりと次の約束は取り付ける。
 こっちからも、俺が元いた世界の話──この世界から見て〝異世界の話〟という話のタネもえてな。

「ハハハ! なんやそれ? えらいけったいな話しが聞けそうやな? でも、確かに今この場所じゃ時間も料理も足らなそうや、この話には団子よりも酒のが合うやろからなぁ──ええで、その話し乗ったで!」

 ケラケラと斑は腹を抱えて笑い出す。

「あーあ、何時いつぶりやろな、久しぶりにこんな笑うたわ。それこそ1000年ぶりかもしれへんな」

 〝異世界の話〟というのがツボったのか『ハハハ』と斑はまた声を上げて笑う。

 にしても、1000年ぶりにとは本当に気が遠くなるようなスケールだ。

 調子に乗って、ハードル上げちまったが……
 あまり期待されてもだな。やべ、大丈夫かな?

 まあいい〝異世界の話〟の他にも、本物ガチの神様に会った話しとかもあるしな? 何とかなるだろ──それこそ神話だ! 神話!

 それにここ最近は不思議体験ばかりなんだ。1日ぐらいなら話しっぱでも、話題には事欠かない筈だ。

「よかった、楽しみにしてる。じゃあ、またな──」

 まだ笑うまだらに声をかけ、店を後にすると、その様子を黙って聞いてたクレハに少しムスっとした表情で、

「私も聞くからね! ユキマサ君の話!」

 と、言われたので……

「ああ、クレハにならいくらでも話してやるよ」

 と、返す。

 今更、クレハには何も隠す事は無いからな。

 それが何だが、クレハは嬉しかったようで──

「そ、そっか……/// うん、じゃあ、約束だよ!」

 少し顔を赤くし、ご機嫌な様子だ。

 すると、

「──クレハー!!」

 少しと遠くからエメレアの声がする。
 よく見ると、会計を済ませた団子の包みを抱えたミリアを連れて、エメレアは既に帰路に就いている。

 それと相変わらず俺の事はスルーである。

「あ、うん、今行くよー! ユキマサ君、行こ!」

 クレハが元気にエメレアに返事を返し、そして俺はクレハに優しく手を引っ張っぱられ、エメレア達の元へ走って行くのだった。

 *

 ──ルスサルペの街 団子屋・花選はなより──

 そこには一人の常連客の男が、空を見上げながら団子を食べていた。

「──あの少年なら、もしかすると、もしかしてくれるかもしれへんな──なぁ、あねさん」

 団子を食べ、時折お茶を飲みながら、まだらは今ここにはいない、先程名前のあがった──かつては姉とまで慕ったへと向けた、独り言を呟くのだった。
 
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