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第114話 ミリア・ハイルデートはミリアである35
しおりを挟む──ハイルデート家・敷地内 森中──
「──こ、ここまで来れば、だ、大丈夫!」
ミリアは、ホッと息を吐く。私の後ろからは、お父さんの冒険者パーティー仲間の人達と、お父さんの冒険者仲間の人に背負われた、お団子屋のおばちゃんとおじちゃんがいる。
お団子屋のおじちゃんは、最初は私が担いでいたけど、走る途中、お父さんの冒険者仲間の男の人が変わってくれた。
「み、ミリアちゃん、皆、ありがとう……何て御礼を言えばいいのかしら……それに本当にごめんなさいね」
「巻き込んじまって、すまねぇ……でも、助かった」
おばちゃんとおじちゃんが深々と頭を下げ、御礼を言って来る。
「俺達は何も……ミリアちゃんと、あの騎士隊長さんのお陰だ。でも、本当に大丈夫だろうか? 俺達は戻った方がいいんじゃねぇか?」
お父さんの冒険者仲間の人が、そういいながら他の仲間の人達に視線を向ける。
仲間の皆はそれぞれ頷き返したり「賛成だ」「そうね、あたしもそう思うわ。戦力は多い方がいいに決まってるもの」等と肯定の返事を返している。
──ヒュン! パッ!
「──ミリア! よかった、見つけた!」
次の瞬間、突然、私にそんな声が投げかけられる。
「あ、あれ!? クレハ! エメレア!?」
思いがけぬ二人の登場に私はビックリする。
まだ時間も、約束の午後でも無い筈。
「「「「「「「──ッ!?」」」」」」」
突然〝空間移動〟で現れた二人に、全員が目を見開いて驚いている。
「ミリアぁぁ! 心配したのよ! 怪我は無い!?」
バッと、エメレアが私に抱きついてくる。
「うん、私は大丈夫だけど──」
〝まだ、戦ってる人がいる〟と喋ろうとした……
ちょうど、その時──
「──クレハ! エメレア! 無事か!」
私の背後から、クレハとエメレアを呼ぶ声がする。
「「「「「「「「──ッ!?」」」」」」」」
今度は私も含めて皆が驚く。
そこに現れたのは、さっき盗賊から私達を助けてくれた、腰まで伸びた金髪をポニーテールにした女の人だ。
「システィアお姉ちゃん!」
「システィア姉さん!」
クレハとエメレアが嬉しそうに返事を返す。
(お、お姉ちゃん!?)
──バサリ!
「ガウッ!」
そして、金髪の騎士隊長さんを睨むタケシが現れる。
「タケシ、この人は私を助けてくれたの。大丈夫だよ」
そういうと「ガウ」っと、一言残し、タケシは来た道を戻っていく。
「あ、あれが噂の青い竜か……強いな」
去っていった、タケシを見ながらシスティアは額に汗を滲ませる。
「騎士隊長さん、よかった、無事だったんですね」
お父さんの冒険者仲間の1人が、騎士隊長さんに話しかける。
「ああ、盗賊達も倒してある。それにあの後、すぐにやって来た〝エルクステン〟の憲兵達80名が盗賊を拘束して、もう護送している所だ。お団子屋の女将さん方も、店に戻って大丈夫な筈だ。もし心配であれば、私も店まで同行しよう」
システィアが事の顛末を伝え、今回の一番の被害者である、お団子屋の夫妻に気をかける。
「騎士隊長さん、本当にありがとうございます。俺たちゃ助けられてばかりだ」
「ありがとうございます。皆様も本当に助かりました」
何度も、何度も、お団子屋のおばちゃんとおじちゃんは頭を下げる。
お父さんの冒険者仲間の人達や、金髪の騎士隊長さんは、手をハラハラと振って、頭を下げるおばちゃん達に「顔をあげてくれ」と言っている。
「それと水色の髪の君、先程はお陰で助かった。君があの時、飛び出してくれなければ、私は女将さん方の救出に間に合わなかったと思う、本当にありがとう」
システィアは少し屈みながら、ミリアの目線を合わせると、しっかりと称賛と御礼の言葉を送る。
「あ、いえ、あの、はい……こ、こちこそです」
ミリアは噛み噛みで返事をする。
その顔は少し赤い。照れているようだ。
「ミリア、凄いわ!」
エメレアが、私の頭をなでなでと撫でてくる。
「あ、それとね、ミリア。ちょうど紹介しようと思ってたんだ。何か順番逆になっちゃったみだいだけど、紹介するね──この人はシスティアお姉ちゃん。呼び方通り、私達の友達というより、どちらかと言うと、お姉ちゃんみたいな人かな。多分、ミリアも仲良くなれるんじゃないかなって思って。この人だけは、私もエメレアちゃんも絶対紹介しておきたかったんだ」
クレハは金髪の騎士隊長さんを紹介する。
「そうか。やはり君が、クレハとエメレアの言っていた、昨日友達になったという、ミリア殿か」
「あ、は、はい、ミリア・ハイルデートです。後、ミリアで大丈夫ですから、ミリアって呼んでください」
ミリアは自己紹介を終えると、そっとエメレアの影に隠れてしまう。
だが、その目は、じっとシスティアを見ている。
「ああ、分かった。ミリアだな、宜しく頼む。私のこともシスティアでいい、敬語も要らん」
「……えーと、じゃあ、し、システィアお姉ちゃん?」
恐る恐ると、システィアを呼ぶ。
「ふふっ。ああ、それでいい、宜しく頼むぞミリア」
最初は少し驚いた顔をするが、直ぐにシスティアは優しく破顔し、ミリアの頭を撫でる。
「あら、ミリアちゃんにお友達ができたのね」
すると、ホッとしたような顔で、おばちゃんが私に話かけて来る。
「うんっ──あ、あのね、本当は今日おばちゃん達に、それを伝えようと思って、お店に向かったんだ」
ミリアは頷き、今日の経緯を伝える。
「そうだったのね。ありがとう。それに、よかった、よかったわ──ミトリちゃんも心配していたから」
「お母さんが?」
「ええ、あ、でも、ミリアちゃんに友達ができないって心配じゃないわよ? ずっと家の湖と森での生活だったから、友達ができるまでに少し時間がかかるんじゃないかって心配していたわ──ふふ、でもこんな素敵な友達ができたのなら、もう心配要らないわね」
おばちゃんもおじちゃんも、そしてお父さんの仲間の冒険者の人達も微笑んでくれる。
クレハやエメレアやシスティアお姉ちゃんも、嬉しそうに私を見て笑ってくれた。
──その後、お墓参りに行くことになった。
勿論、お父さんとお母さんのお墓参りだ。
特にお父さんの冒険者仲間の人達が〝是非に〟との事だった。
クレハ達も来てくれた。
お墓の前に着くと、二人が亡くなってから、これが初のお墓参りとなる、お父さんの仲間の冒険者の人達やお団子屋のおじちゃんが、手を合わせたり、色んな事をお墓に向かって話していた。
……後、私はお母さんが亡くなってから、このお墓の前で寝ていたので、その場に薄いシートや軽い布が置きっぱなしになっていて、慌てて片付けたけど、流石に見つかってしまい、押し黙る私を──クレハがそっと抱き締めて「辛かったね、心細かったよね」と、言ってくれて、心が軽くなったのを強く覚えている。
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