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第94話 ミリア・ハイルデートはミリアである15
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「ふみゅ……」
短い声を漏らしながら、ミリアは目を覚ます。
目を開けると、ベッドの掛け布団の上であった。
すぐ隣では、ミトリがまだ寝息を立てて寝ている。
(私……確か……お母さんに〝回復魔法〟してたら〝魔力枯渇〟を起こしちゃって……そのまま倒れちゃったんだった……)
──は! お母さん!!
ミリアは、慌ててミトリの様子を見ると、まだ熱はありそうだが……今はぐっすりと寝ている。
その様子を見て、ミリアはホッと胸を撫で下ろす。
次にミリアは、自分の背中に毛布が掛けられている事に気づく、倒れる前には無かった物だ。
様子を見るに──お母さんが掛けてくれた感じでも無いと、ミリアは首を傾げる。
ミリアは〝魔力枯渇〟を起こし、
時間にして、約5時間程意識を失っていた。
これは〝魔力枯渇〟の症状では軽度の部類である。
重度になると、10日──下手をすれば、それ以上の間、目を覚まさない事もある。
重度の者は、その間に適切な処置がされなければ、そのまま亡くなってしまう事も少なくない。
そしてミリアは、この毛布を誰が掛けてくれたのかは直ぐに見当が付いた。
……というか、一人しかいない。
お団子屋のおばちゃんだ。
失礼な言い方かもしれないけど、おばちゃんは魔法や魔力には、あまり詳しくない。
勿論、おばちゃんも魔力は持ってるし〝魔力枯渇〟の最低限の知識はある。
でも、今回は症状が軽度だった事と、私が倒れ込んだ先が、お母さんの寝ているベッドだったという事で──おばちゃんは、私が〝魔力枯渇〟を起こしたのに気づかず、看病の最中に、疲れて寝てしまったのだと勘違いをしたんだと思う。
(う……気をつけなきゃ……)
ミリアは反省する。
そして、急いで棚から〝魔力回復薬〟を取り出し、勢いよくそれを飲む。
「ふぅ……」
すると、ミリアは家のテーブルの上に、見覚えの無いリュックの荷物と置き手紙を発見する。
「何だろ、これ?」
[─ミトリちゃん、ミリアちゃんへ─
声を掛けても、返事が無く、心配になり勝手に上がらせて貰いました。リュックには私からのお見舞いの品を入れてあります。(ミリアちゃんにはお団子です)
ミトリちゃんに頼まれていた物は棚の上に置いてあります。お大事にゆっくりと休んでください。
─お団子屋・花選 女将より─]
手紙を確認すると、おばちゃんからの手紙だ。
リュックの中身はお見舞いの品らしい。
(──お団子!)
ミリアは目を一瞬、キラリ! と輝かせると──
ガサガサとリュックの中身を確認し、手紙に書いてあった自分へのお団子を見つける。
そう言えば、朝から何も食べていない。
意識すると、ぐぅ~とお腹が鳴り始めた。
じー。
(おばちゃんの手紙には、私にお団子って書いてあったから、これ食べてもいいんだよね……? それに〝魔力枯渇〟を起こした時は、早めに食事も取りなさいってお母さん言ってたし……)
じー。
すると、ミリアはタッタッタと台所に走り出す。
──数分後。
湯飲みに煎れた温かいお茶を両手で運んで持ってくると、ミリアはテーブルに着き、お団子の包みを広げて、お行儀良く「いただきます」をする。
ぱくり、お団子を口に運ぶとモチモチしてて、ほんのりと甘い、三色団子の味が口いっぱいに広がる。
(美味しい!)
夢中で食べ続けること、更に、数分後──
ミリアは、漸くある事に気づく。
……リュックの中身の、実に半分を占めていた、三種の団子が、いつの間にか綺麗に無くなっている事に。
「あ……お母さんとお父さんの分のお団子……」
だが、時すでに遅し。
お団子なら、今はミリアのお腹の中だ。
ミリアは一頻り、あたふたと焦った後……
残りのお茶を飲み干し「ご、ご馳走さまでした」と言うと同時に、後でお母さんに正直にちゃんと謝ろうと、そっと心の中で決意するのだった──。
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