80 / 378
第79話 ミリア湖4
しおりを挟む「──本当に申し訳ありませんでした……」
エメレアの平謝りである。
そして土下座である……クレハとミリアに。
「わ、わ、大丈夫だから、か、顔、上げて!」
焦るミリアと、
「私には謝らなくて大丈夫だから。でも、エメレアちゃん、お家の中では、攻撃魔法も喧嘩もしちゃダメだよ。ここはミリアの大切なお家なんだからね?」
ド正論で叱るクレハ。
「う……はい……分かりました……」
終始敬語でエメレアは反省の色を見せる。
「──私、お茶煎れて来るね。とにかく、ユキマサ君もエメレアちゃんも喧嘩したらダメだからね! あ、ミリア、台所借りるね?」
台所に行くクレハに俺は「分かった」と返し。エメレアは「……はい」と反省モード継続で返事をする。
ちなみにチラっと見えたのだが、ミリアの家には何と水道があった。何か凄く久しぶりに見た気がする。
(この世界に来てからは、家の中での水は、飲み水を含めて──〝魔導具〟である〝水の結晶〟しか使ってなかったからな)
それに、ミリアの家の水道は湧水を利用した、天然の水道みたいだ。外を見れば一目瞭然だが、辺りの森や湖はとても綺麗だから水質も凄く良いのだろう。
クレハがその水を使って、お茶を煎れて来てくれた所で、俺達は皆でお茶を飲みながら一息つく。
「そーいや、エメレア。前に〝大聖女〟を遠目にだが見た事があって魔力がどうのとか言ってたよな?」
お茶を飲みながら俺は唐突にエメレアに質問する。
「な、何よ……いきなり……それがどうしたのよ?」
エメレアは急の質問に戸惑い気味の返事だ。
ちなみにクレハに叱られたばかりなので、今のエメレアの返事は、普通のトーンで、凄く平和な態度だ。いいな、平和、平和最高だ。
「どんな奴だった? それと髪の色とか分かるか?」
「ど、どんな奴って言われても……見たと言っても本当にチラッと見ただけよ? 普段は〝聖教会〟の〝大聖堂〟から殆ど出てこない方だし、出てきても護衛の数が尋常じゃないから。それに髪の色は銀髪よ?」
「銀髪か……」
「な、何でそこを気にしてるのよ? というか、それは別に、実際に見たこと無くても誰でも知ってる事よ。貴方、本当にそんな事も知らないの?」
「……悪い。知らなかったから聞いた。忘れてくれ」
俺が何故こんな質問をしたかと言うと──昨日、街でスレ違ったあの白フードの少女が高確率で噂の〝大聖女〟だと考えたからだ。
何故このタイミングで聞いたのかは、ちょうど目の前に『大聖女を見た事ある』って言ってたエメレアがいたからだ。特に他に深い意味はない。
白いフードで顔を隠していたが、チラリと見えていたノアの髪は紫色だった。しかもあれは、ヅラや染めた髪とかじゃなく確実に地毛だ。
(もしあの白娘が噂の〝大聖女〟なら、色々と合点がいったんだが、これは振り出しだな)
後は号外記事にも載っていた〝白獅子〟ってのも気になるが……
これは今度クレハにでも聞こう。
「なんなのよ……もう……」
ムスッとするエメレアは、俺をジト目で見ながら、クレハの煎れてくれたお茶を啜っている。
「それと墓参り……場所はここから近いのか?」
俺はここに来た当初の目的の話に戻す。
「あ、はい。お墓はお家のすぐ横にあります……!」
「そうか。それと本当に今更の質問だが、ミリアの母さんに俺は会った事は無いんだが……よければ俺も花を手向けさせて貰ってもいいか?」
まあ……『ダメです』とは多分言われないだろうが、それでも念の為……俺はミリアに許可を取る。
「は、はい! お父さんとお母さんも喜んでくれると思います。よろしくお願いします……!」
今の台詞から察すると、ミリアの母親だけでは無く、父親も一緒に二人でそこに眠ってるんだな。
クレハは『今日はミリアのお母さんのお墓参りなんだ』と言っていたのは、恐らく今日はミリアの母さんの命日と言う意味だったのだろう。
「ミリアがいいなら私は構わないわ。感謝しなさい」
そして少し調子が戻って来てしまったエメレア。
「実は私やエメレアちゃんも、ミリアのお母さんにもお父さんにも会った事は無いんだけどね……?」
と、苦笑いのクレハは何故か疑問系で言う。
「そうなのか?」
いや、言われてみれば別にあり得ない話では無い。
「ミリアと私やエメレアちゃんが初めて会ったのは4年ぐらい前だから──私が12歳で、エメレアちゃんが13歳で、ミリアが8歳の頃かな? ……というかミリアと出会ってまだ4年なんだね。何だか、もっと前からずっと一緒にいたような気がするよ」
そしてこの後、俺はこの思いもよらぬタイミングで、クレハやエメレアが如何にして、ミリアと出会ったかの話を3人の口から語られるのだった──。
77
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる