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第73話 待ち合わせ
しおりを挟む俺はクシェラの孤児院から、急ぎ〝料理屋ハラゴシラエ〟に来ていた。それと、ここに来る途中にあった花屋にも寄り〝墓参り用の花〟を購入して〝アイテムストレージ〟にしまってある。
だが、異世界での墓参りの作法や、花の種類とかも俺はよく分からなかった為……花屋の店員に「申し訳ない。墓参り用の花が欲しいんだが、俺は花の知識には疎くてな? お任せで墓参り用の花を少し見繕って貰えないか?」と頼んで買ってきた。
花屋は優しそうな老夫婦がやっており、無知な俺が『お任せで』と頼んだからといって、ボッタくるような様子も無く、予算なども丁寧に聞いてくれながら、綺麗な花束を見事に見繕ってくれた。
ちなみに花の名前も教えてくれたが、聞いた事の無い名前の花だった。
多分、この花も〝異世界独自〟の植物みたいだ。
で、それはそうと……
──〝料理屋ハラゴシラエ〟準備中──
〝料理屋ハラゴシラエ〟に着いたのはいいのだが、立て札には準備中と書いてあり、その立て札の横には──〝本日、夜貸切!〟と手書きで書かれた紙も貼ってある。
(まあ、24時間のチェーン店じゃあるまいし、こんな朝っぱらから個人経営の料理屋は、営業してなくて当たり前か……)
「──おや、もう来たのかい? 早いのね?」
俺が張り紙を眺めていると、この〝料理屋ハラゴシラエ〟の女将さんがちょうど店から出てくる。
「最後の方の言葉はそっくりそのまま返すぞ? 飲食店ってのは、仕込みやら何やら色々と大変だよな?」
店の中を見てみると、厨房には明かりが点いており、もう既に店の仕込みは始まってるみたいだ。
「アトラから話しは聞いているよ。ドラグライト孤児院の子供達に〝大猪の肉〟を食べさせたいんだってね? ──それにしても……お兄さん、本物のお人好しだね。クレハちゃんの知り合いじゃ無かったら、逆に何か企んでるんじゃないかって疑がってる所だよ」
「……それはクレハ様々だな? ──後、その話なんだが、結構人数集めちまったんだけど大丈夫か? もちろん肉は持ち込むし、それに調理代も払おうと思ってたんだが?」
「何人ぐらいだい? それと調理代は要らないというか、受け取れないよ」
「最高で67人で……55人が13歳以下の子供だ」
男子孤児院24人+女子孤児院31人と、クシェリとクシェラの2人。それと卒業生10人で会わせて67人だ。まあ、卒業生は全員が来るのかは分からないけどな?
「それぐらいじゃないの? アトラから聞いていた話からだと、大体予想通りの人数だよ?」
アトラには『知り合いの冒険者の孤児院の子達』としか言ってなかった筈だが──よく考えたら、孤児院を運営する冒険者なんて、あの二人ぐらいしかいないだろう。
だから、アトラから話を聞いた女将さんは、その2つの孤児院の子達が来ると思ってたんだな。
これは運良く女将さんの想定内だったみたいだ。
「助かるよ。てか、しつこいようだが……調理代は本当にいいのか? どうみても、タダ働きになるぞ?」
(流石に少し気が引ける……)
「お兄さんに安く売って貰った〝大猪の肉〟のおかげで……このたった数日で一体何ヶ月分の売上と利益が出たと思ってるんだい? 調理代何て取ったら、それこそ神様からバチがあたるってもんだよ? ──それに昨日、家のアトラが、変な馬鹿共に絡まれてる所をお兄さんに助けて貰ったらしいわね? 礼を言うよ。本当にありがとう」
あー。あの、たまたま入った料理屋で、アトラが酔っ払った客に絡まれてた時の事か?
それにしても、あの店の店員はアトラが絡まれてるのに見て見ぬふりしてやがったよな? 万が一、アトラに何かあっても〝知らぬ存ぜぬ〟で通すつもりだったんだろう。多分、俺もアトラも、あの店には、恐らくもう行く事は無いだろう。
「具体的な売り上げと利益は知らないが……アトラを助けたのは、結果的にはアーデルハイト王国のフィップだ。有名人らしいから、女将さんも知ってるだろ? 礼ならそっちに言っときな?」
あのアトラに絡んでいた馬鹿共は〝アーデルハイト王国〟の最高戦力である、フィップの存在に気づくと真っ青な顔になって一目散に逃げていったからな。
「〝桃色の鬼〟だね。昨日の夜に家の店に食事に来てくださってね。勿論、その時にお礼を言っておいたよ。それにアトラが親しげに話していて驚いたわ。いつの間にあんな大物と仲良くなったのか疑問だったけど、お兄さんの名前が出て、やっと納得が言ったよ」
女将さんの顔からは少なからず驚愕の色が伺える。
「そうなのか? そーいや、フィップはアトラのこと気に入ったとか言ってたぞ? ……っと、この後に少し待ち合わせがあってな? 取り敢えず、約束の肉を置いてきたいんだがいいか?」
そろそろ、約束の1時間だ。待ち合わせ場所のギルドは目と鼻の先だが、待たせるのも悪いしな。
「ええ。じゃあ、店の中に入って貰えるかしら?」
俺は女将さんに案内され店に入ると──
「ようこそ来てくれた! また、あの素晴らしい肉を調理させて貰えるとは感激だ! 話は聞いている! 孤児院の子達に僕の全力の肉料理を振る舞おう!」
厨房から歓迎ムードの店主が出てくる。
「ああ、是非とも宜しく頼むよ? 期待している」
そんな話をしていると、女将さんがお馴染みのラーメン屋の寸胴みたいな鍋を持ってきてくれたので……
そこに俺は〝アイテムストレージ〟から、
──ドバババ! っと〝大猪の肉〟を取り出す。
「〝アイテムストレージ〟……というか、この量を仕舞えるって……お兄さん、本当に何者だい……?」
額に手を当てながらを呆れる女将さんと……
「す、素晴らしい……うおぉ! 燃えてきたぜぇ!」
燃え上がる店主。この夫婦……温度差がスゴいな?
そんな様子を見ながら──
「じゃあ、悪いが、後は宜しく頼むよ」
と、俺は後は女将さんと店主に任せて店を出る。
──そして、店を出てギルドに向かうと……
既にクレハ・エメレア・ミリアがギルド前で、それぞれリュックや花束を持って俺を待ってくれていた。
「遅い……一体、何分待たせるのよ!」
急ぎ、皆の元に向かうと、腕を組んで壁に寄りかかったエメレアに俺はギロリと睨まれる。
「悪い、待たせたな?」
「べ、別にユキマサのこと何て待ってないわよ///」
「……エメレア、私達がここに来てまだ1分も経ってないよ?」
すかさずミリアがエメレアに疑問を投げかける。
「……」
黙るエメレアは少し視線を逸らす。
(この野郎……)
「エメレアちゃんもユキマサ君も喧嘩しないの……」
と、溜め息混じりの声で俺とエメレアはクレハに軽く叱られる。
「じゃあ、皆揃ったし、行こっか? ミリア、体調は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
クレハの言葉に、ミリアは明るく返事を返す。
(つーか、俺もクレハに叱られてしまったが……あれは殆どエメレアが一方的に絡んできただけだぞ?)
おーい、聞こえてるか? お前、お前のことだぞ……? 幸せそうにミリアを撫でてる、そこのエルフさんよ?
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