生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
60 / 378

第59話 ハイかYESで2

しおりを挟む


「おい、これ何がどうなってんだ……?」
「修羅場です……これが修羅場というやつですよ……」

 頭を軽く掻きながらボヤくフィップと、ごくりと唾を飲み込みながらドキドキした目で見てくるアトラ。

「──ユキマサ。そういうことだがら、いつでも返事を返しに来なさいな。基本的に私は〝アルカディア〟にいるけど〝エルクステン〟に来てる時はレノンの〝武器屋・プレーナ〟にいるわ」

 落ち着いた口調でゆっくりと話すエルルカに、
「……わ、分かったよ」
 と、俺は少し言葉に詰まりながら返事をする。

「……」

 ムスッ……とした様子で、黙ってクレハは俺とエルルカの会話のやり取りを聞いていたが……

「と、というか、エルルカさん! いつまで抱きついてるんですかッ!? 離れてください! ──それにユキマサ君もいつまで抱きつかれてるの……?」

 ジト目で不機嫌そう俺を見ながら、クレハがいまだに抱きついているエルルカを引き剥がしにかかる。

「私の気が済むまでよ?」
「ダメです!」

 クレハが即答でエルルカの解答を断ると
 エルルカは『ふむ……』と少し考え込み……

「……そうね。いつまでも抱きついてるのも悪くないけれど、次は抱きつかれる側になるという手もあったわね……悪くないわ……」

 そう呟くと、エルルカはゆっくりと俺から手を離し、その離したばかりの両手を俺がちょうど収まるぐらいの幅で胸の前で広げ「さあ、来なさい?」と、長く綺麗な黒髪を靡かせながら俺を待ち構える。

「それもダメです!」

 すると、クレハは俺の手を取り──

 ──ヒュン! パッ!

 自信のスキル〝空間移動〟で俺を連れ、いつぞやの武器屋の時みたいに、エルルカから距離を取る。

「──!!」

 一瞬で、周りの景色や場所が変わる感覚にまだあまり馴れていない俺は、クレハが俺を連れての〝空間移動〟に「おぉ……」と少し感嘆の声を漏らす。

 そして〝空間移動〟を終えたクレハは俺を見ると、

「……ユキマサ君? 帰ったら、じ~っくりと色々とお話し聞かせてもらうからね?」

 顔は表面上は笑っているが、目と心が笑っていない。そんな作り笑顔でクレハは、先程からニコニコと笑ってくる。

「えーと……」
「いーい?」

 それは何気ない二、三文字の言葉なのだが……

 ゴゴゴゴゴゴゴ……!! 
 と、クレハから謎の圧力を感じる。

 ミリアの言ってた『何か、今日のクレハは〝ゴゴゴゴ……!〟ってしてたので』ってのは……この謎の圧力の事で間違いないろう。

 恐らくは、簡単に言えば〝ご機嫌斜め〟……
 他の言い方にすれば〝おこ〟なのである。

 でも、激が付かないだけマシなのかもしれない。

「……わ、分かったよ」

 さっきから俺は『……わ、分かったよ』しか言って無い気がするが、別に定型文で、取り敢えず返事を返してるわけじゃないぞ? 

 てか、すぐそこに、嘘か本当かを見抜く事ができる──スキル〝審判ジャッジ〟を持ったフォルタニアがいるんだから、嘘なんてついても無駄だしな。
 ……まあ、いなくても嘘を吐く気は無いけどさ?

「……うん……なら、取り敢えずは……よし……」

 まだまだ不機嫌なクレハだが、取り敢えずはお怒りの剣をさやに収めてくれたらしい。

「あ、あの〝剣斎けんさい〟がデレのデレだと……!?」
「やはり〝黒い女たらし〟ってのは本当だったのか!」
「いや、それに〝剣斎けんさい〟相手に一歩も引かない、あの〝騎士隊の子〟も凄いぞ!」

 ざわざわと兵士達が話す声が聞こえる。

「まったく、お前は行く先々で何かしらの騒ぎを起こさないと気が済まないのですか?」

 トコトコと俺の前に歩いてきて、軽く溜め息を吐くのは〝リッチ熊のぬいぐるみ〟を抱き締めたアリスだ。

 アリスが俺の目の前に来ると、クレハはちゃんと頭を下げている。でも、その前に何か他に色々と失礼があった気がするが……まあ、アリスはそんな事をイチイチ気にするタイプじゃないし別にいいか。

「お、お嬢様、危険です!」
「そうです、さあ、早くこちらへ!」

 やはり俺が〝どこの馬の骨とも分からない奴〟という認識の、アーデルハイト王国の兵士達はアリスを俺から遠ざけたいらしい。

やかましいのです! 少なくとも私はコイツの事は嫌じゃないのです。それに責めるつもりは無いですが、理由は何であれ、みすみすと〝魔王信仰〟の襲撃を許した、お前達スットコドッコイよりは、コイツと一緒のが安全なのではないですか? ──それに、その〝魔王信仰〟の禁術使いを倒したのは、紛れもないコイツなのですよ……?」

「「……も、申し訳ありません!」」

 アリスにしっかりと怒られた兵士は、ぐうの音も出ない様子で、片膝をつきながら謝っている。

 それに対してアリスは「分かればいいのです。でも、心配してくれた事には礼を言うのです……」と兵士に言い──ちょっと照れ臭かったのか、自身の両手に抱える熊のぬいぐるみのリッチに、顔の目から下をモッフリと埋めている。

 最後に礼を言われた兵士達は「「お、お嬢様……!!」」と声を震わせ、感激した様子だ。

 その様子を、フィップは「ちっ……」と言いながら羨ましそうに見て、兵士を軽く睨んでいる。

 背後からフィップに睨まれてる事を本能的に〝危険〟と察したのか、睨まれた兵士達はブルりと身体を震わせている。

 ……まさに、飴と鞭だな。

 てか、フィップ。アリスが大好きなのは分かったから、殺意を込めて兵士達を睨むのは止めてやれよ?

 喜びながらおびえるという〝何かヤバい物にでも目覚めたんじゃないか?〟と思うような、兵士を見たアリスが「……ッ!?」と怪訝けげんそうな顔をしてるだろうが。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?

夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。 1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。 転生先で期待して初期ステータスを確認すると0! かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。 Ωといえば、なんか強そうな気がする! この世界での冒険の幕が開いた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...