生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
49 / 378

第48話 魔王信仰2

しおりを挟む


 *

「──な、何だ、今の爆音は! 落雷か!?」

 隊を統率しながら〝魔王信仰〟が現れたという、現場へ急ぎ向かう中、都市に轟く爆音に警戒したシスティアが足を止める。

「魔法ね。使ったのはユキマサみたいよ。それに〝千撃せんげき〟と〝桃色の鬼ロサラルフ〟にアリス王女も勢揃いだわ」

 都市に雷鳴が響くと同時に、ヴィエラは空高く飛翔し、その様子を確認すると、再び下に降りてきて、その見たまんまの状況を簡単に報告してくる。

「ユ、ユキマサくん、本当に何やってるの!?」
「ふふ。クレハちゃんはユキマサが心配?」

 呆れ顔のクレハにヴィエラが問いかける。

「し、心配と言いますか、何と言いいますか……」
「というか、あの馬鹿! クレハに心配かけてるんじゃないわよ!」

「え、エメレア、お、落ち着いて……!」

 ヴィエラの質問に、少し顔を赤くしながら答えるクレハを横目に、怒った様子のエメレアを、いつも通りあたふたとしながら、ミリアがなだめている。

「お前達、遊びに来てるんじゃないんだぞ! もっと気を引き締めろ!」

「「「すいません……!」」」

 システィアのお叱りで、
 改めて、一同は気を引き締める。

「そうね、今の雷撃で報告にあった〝禁術者〟も倒されたみたいだし。どちらにしろ合流を急ぎましょう」



「「「「「………」」」」」

 ──ビリ、バチッ、バチッ

「まあ、これぐらい、丸ごと焼いちまえばとやらも壊れるだろうし、再生も何も無いだろう?」

 俺は〝黒影元マント〟が跡形も無く消し飛んだのと、再び再生する様子が無いのを確認する。

「な、今のは何なのですか? というか、お前は本ッ当にバカなのですか!? こっちまで吹っ飛んでたらどうするつもりだったのですか!」
「いや、だから、少し威力は調整しただろうが? 現に、お前ら無傷だろ?」

 流石に大通りでは無くとも街中で、しかも近くにアリスや第3隊の〝鳥人族ハルピュリア〟がいる状態で、一切周りを気にせず〝雷撃〟を吹っ放っしたりはしない。

(まあ〝雷撃魔法〟自体を使うの初めてだったから、少し練習を兼ねて威力調整をしたって理由もあるが)

「「「「「……」」」」」
 何やら引き気味のアリスと第3隊の鳥人族達ハルピュリアズと、
「あはは! 頼もしいじゃねぇかよ!」
 楽し気に笑うフィップ。

「──ッ!?」

 すると、次の瞬間──

 バッ! っと、先程の報告のあった、残りの〝魔王信仰〟の奴等が一斉にアリスに向かい飛びかかる。

(この状況で来るのか?)

 今回の主戦力であろう〝影黒元マント〟が倒されたから、撤退するかと思っていたが、何か策があってか無くてかは知らないが、突撃してくるようだ。

(てか、皆〝怪しげなマント〟にマスクを被ってるじゃねぇかよ? 制服なのか……?)

 俺は応戦する為〝魔力銃〟を取り出そうとするが──

 ドンッ!!

 その前に動いた〝アーデルハイト王国〟のトップ戦力である──〝千撃せんげき〟と〝桃色の鬼ロサラルフ〟により〝突撃マント集団〟は、瞬時に殲滅させられる。

「ここに来て、突撃とは逆に気味が悪いですな?」
「〝魔王信仰〟何て元々こんな感じだろ? 頭の中は魔王か、殺しぐらいしか無い奴等だ。〝自爆〟とさっきみたいに特定の奴が使える〝禁術〟にだけ気を付けろ」

 さっきの件を、自分のミスだと言って、負い目を感じている様子のフィップは、自身も厳しい目で辺りを見渡す。

(まあ、後は心配無いだろう)

 この一瞬で、顎、心臓、顳顬こめかみ、後頭部、脛椎けいついといった、人体のを二人は的確に叩いている。

 〝魔王信仰〟の者は、立つことは愚か、意識をたもつの事さえも難しいだろう──それに今のコイツらには魔力の気配は一切ない。完全に意識も飛んでるな。

「──か、確保!!」
「「「「はッ!」」」」

「皆さん、私たちも手伝いますよ!」

「「「了解!」」」

 そして〝アーデルハイトの兵士〟と〝第3騎士隊〟が縄や魔法で〝魔王信仰〟の者を束縛していく。

「舌を噛みきられないようにもお願いします。この者達には少々聞きたい事がございますので……」

「「「了解しました!」」」

「……取りあえず。一段落か?」
「そのようでございますね」

「そうか。俺は〝第8騎士隊〟と鉢合わせたら、色々と面倒めんどそうだからな? フィップ、後は任せていいか?」
「あ? 待てよ、お前どこ行くんだよ?」

「ほとぼりが覚めるまでは街でもぶらつく予定だ」

「お、お待ちください! ユキマサ様、この一件で、ギルドから賞金も出るかと思いますので、よろしければ少しお待ちいただきたいのですが?」 

 慌てた様子で〝第3騎士隊〟のフィオレが、地面にグーにした片手を付きながら頭を下げ、俺に話しかけてくる。

「何だ、賞金がでるのか?」
「はい。元より〝魔王信仰〟には、懸賞金がかけられてる者もおりますので──しかも〝禁術者〟ともなれば、ある程度の賞金は確実かと思われます」

「……まあ、手柄はお前達にやるよ? じゃあな!」

 少し考えたが、俺はそう言い残し、恐らくはブチキレているであろう……エメレアが来る前に──この場から、そそくさと立ち去ろうとするのだが……


 がしッ……


 俺の服の袖をアリスに捕まれる。

「私も行くのです」

(ま、まあ、俺は構わないが……)

 俺は〝妖怪世話焼き爺〟こと──千撃せんげきをチラリと見て、目線アイコンタクトで『どうする?』と聞く。

「ふむ……」
「私も行くのです」

 大事な事なのか……クイ、クイッと俺の袖を引っ張りながら、先程と同じ台詞をアリスは二回繰り返す。

「──なら、あたしも行くぜ? それなら文句無いだろ? なあ、老いぼれ小僧?」

「……そうですな。フィップ先輩が一緒なら何も言えますまい。この件の後処理は私がやっておきましょう」
「む? たまには良いことを言うではないですか?」

「ユキマサ殿とフィップ先輩が同意見なら、私が例えで止めようとしても、勝ち目は無さそうですからの。ユキマサ殿、お嬢様を何卒よろしくお願い致します」

 妖怪世話焼き爺は深々とお辞儀をしてくる。

「……任された。街を少し回ったらギルドに戻るよ」
「畏まりました。申し遅れましたが、私は〝アーデルハイト家〟の〝執事長〟を勤めております──ジャン・ウィリアムと申します。以後、お見知り置きを」

 ―ステータス―
 【名前】 ジャン・ウィリアム
 【種族】 人間ヒューマン
 【性別】 男
 【年齢】 78
 【レベル】90

 と、異世界恒例のステータス画面を見せてくる。

「随分とレベルが高いな? 執事長?」

 そして俺もいつも通りのステータス画面を見せる。

 ―ステータス―
 【名前】 ユキマサ
 【種族】 人間ヒューマン
 【性別】 男
 【年齢】 16

「私の場合は、無駄に歳とレベルが上がってしまっただけに過ぎません。それと私の事は、気軽にジャンと呼んでくださいませ。勿論、呼びづらければ〝妖怪世話焼き爺〟でも構いませんぞ?」

 ほほほ。と、ジャンは冗談めかしに陽気に笑う。

「分かった。じゃあ、本当に気軽に呼ばせてもらうぞ? ──ジャン? アリスからは、朝から晩まで、それはそれは世話を焼くと聞いているよ?」

「それは、それは〝執事冥利〟に尽きますな!」

(執事冥利か……これも初めて聞く言葉だな? それはそうと、異世界には〝妖怪〟だとか〝幽霊〟だとかはいるのか? まあ、もう何が現れても、あまり驚きはしない自信はあるけどさ?)

 ──、……幽霊……か……。

『──お化けでも、幽霊でも、何でも良いから……私は……もう一度……もう一度だけ──おとーさんとおかーさんに会いたい!』

 そんな事を昔……理沙が泣きながら言っていた事があったな──

「ユキマサ、どうしたのです?」

 ぎゅッと、相変わらず〝リッチ熊のぬいぐるみ〟を抱き締めてるアリスが、じッと俺を下から見上げる形で聞いてくる。

「いや、何でもない……」

 だが、俺のその返答が、あまりお気に召さなかったらしい様子のアリスちゃん王女は……
「全く、人が心配してるのに、何なのですか!」
 と、少しご立腹みたいだ。

 それにしても……異世界に来てからというもの、やけに俺は理沙や昔の事を思い出す──何でだろうな? 

 ──新手のホームシックってやつだろうか……

 異世界ホームシック……いやいや……まさかな?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?

夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。 1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。 転生先で期待して初期ステータスを確認すると0! かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。 Ωといえば、なんか強そうな気がする! この世界での冒険の幕が開いた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...