生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
44 / 378

第43話 追いかけっこ2

しおりを挟む


 *

(……少し騒がしくなってきたな)

 屋根の上を走りながら、下を見てみると、頭から足の先まで、全身を鎧で多い隠した兵士達がそこら辺を多数うろちょろしている。
 
 ──ギルドの騎士達とも、また違った感じだ。
 恐らくは〝アーデルハイト王国〟の兵士だろう。

「お嬢様はどこだ!」
「アリスお嬢様! 出てきてください!」
「探せ! 黒髪にスイセン服の男が連れ去ったらしいぞ!」

 あーあ、俺が連れ去ってる事になってるよ。

 取り敢えず、目立つ屋根の上からは一度降りて、人通りの少ない路地を俺は進んで行く事にする。

「全く……ちゃんと書き置きも残して来たのに、あいつらは、字もまともに読めないのですか! あのスットコドッコイ共は!」

 降りた先の路地の地面を、ビシバシと足で叩きながら、ぷんすことアリスは怒っている。

 すると、その時……

「──ん、見つけたぞ! 食らえッ!!!!」

 ビュン!!

 パシッ!!

(……空からなんか降ってきたな)

 俺の脳天を目掛けて空から踵落としが降ってきた。
 ついでに〝魔力〟での強化ブーストのおまけ付きだ。

 で、その踵落としを、俺はバシッと片手で掴みとったわけ何だが……

 それに関しては、こいつも予想外だったらしく……

「……!! やるな? それとも、そんなに私の足に触りたかったのか?」

 などと、踵落としの襲撃者は驚いた表情を見せた後「意外とむっつりだな?」とか言ってくる。

「綺麗な足なのは認めるが、俺は別に足に対して変な性癖は無い。それに、再開の挨拶に踵落としはあまりお勧めはしないぞ? ──クシェリ?」

 今しがた〝脳天踵落とし〟を仕掛けてきたのは、先ほどの〝ロリコン紳士〟のクシェラの双子の妹である──クシェリ・ドラグライトであった。

「ふむ。でも、そのお陰でその私の綺麗な足に触れられたんだ。それで許せ。それに、私はそこのお姫様に用事がある」

「何なのです? この女は?」

 不機嫌そうな顔でクシェリを睨むアリス。

「さっきの金髪の男の、双子の妹のクシェリだ。ちなみに、ギルドの副マスフォルタニアからは〝ショタコン淑女〟とか呼ばれてたぞ?」
「ん、そう誉めるな……? 調子が狂うだろ?」

 本当に嬉しかったのか、クシェリは顔を赤くして視線をそらす……誉めたつもりは無いんだけどな。

(まあ、感想は自由だ。放っておこう……)

「つーか。何でお前がアリスを狙うんだよ? 〝アーデルハイト王国〟とやらに雇われたか?」

「雇われてはいないが……今、ギルドでは、そこの〝行方不明の王女様の捜索〟に〝アーデルハイト王国〟から賞金が出ている──そして私はその賞金で、孤児院の皆に〝大猪おおししの肉〟を振る舞いたいのだ」

 なるほど。王女様が行方不明ともなれば、賞金ぐらい簡単に出るか。この後は〝賞金稼ぎ〟みたいな仕事柄の連中にも、気を付けなきゃだな。

「随分、具体的だな? ……てか〝大猪おおししの肉〟って〝料理屋ハラゴシラエ〟の店か?」

「ん、情報が早いな? ああ、どうやら昨日と一昨日に入荷したらしい。しかも、品質は最高ランクなのに、破格で仕入れられたからと、今なら相場の半額以下で〝大猪おおししの肉〟を食えるらしくてな」

(あの店……安く置いていったとはいえ、相場の半額以下で販売してたのか? そりゃ混むわけだな? 店主の料理の腕も確かだったしな)
 
「あー、クシェリ? 孤児院分の〝大猪おおししの肉〟なら俺が分けてやるから、ここは引いてくれないか?」

「何? どういう意味だ?」

 クシェリは怪訝けげんに眉を動かす。

「そのまんまの意味だ。その破格とやらで〝大猪おおししの肉〟を卸したのは俺だ。それでその肉は、まだ残ってるから、それでどうだ?」

「……それで私に引けと?」
「だな。嫌なら断ってくれていい。ただ、どちらにしろ、俺はアリスを渡す気は無い。散歩に付き合うって約束したんでな?」

「ふむ、お前も物好きだな?」
「最後はちゃんとギルドに送るから心配すんな?」

「……分かった。それで手を打ってやろう。そもそも、ヒュドラの変異種ヴァルタリスを単独で倒すような奴に、私も挑む気は無いからな? 願ったり叶ったりだ」

 と、クシェリは警戒していた力をスッと抜く。

「そうか。なら、交渉成立だな? 肉は明日にでも届ける。それでいいか?」
「分かった。サービスで居場所は黙っておいてやる」

「そりゃ破格だな? 助かる。それじゃあ、俺達はもう行くぞ? じゃあな!」

 と、俺とアリスは再び路地を進む。



 クシェリと別れた後──俺はアリスと路地を走り、ある程度の所で、今度は通りの違う屋根の上に上がり、更に屋根を走って露天街から距離を取る。

「上手く巻いたのですか?」
一先ひとまずは、だな。それにあの〝妖怪世話焼き爺〟が諦めるとは思えないしな?」

 だが、あれから〝妖怪世話焼き爺〟が追ってくる気配は無い。

(クシェラの奴、よく時間を稼いだな?)

 こう言っちゃ悪いが、クシェラが、あの〝妖怪世話焼き爺〟に勝つことは、まず無理だろう。

 爺さんも手加減するって言ってたから任せてきたが、あの爺さんが本気で──それこそ、殺す気で向かって来ていたら、あの場は任せていなかった。

 これはクシェラが弱いのではない。あの、爺さんが……つまりは〝妖怪世話焼き爺〟が強いのだ。

 自分では、老骨ろうこつとか言ってたが、あんな老骨がそうそういてたまるか! ……ってぐらいには強い。

 
 ──!!


 ────ッ、何か来る! 今度は何だ!!


「──〝光戦閃鎌ラント・レイ〟!!」


 ──ピカッ! ビュンッ!!


(これは、魔法かッ!?)

 俺が、妖怪世話焼き爺が追って来る気配は無いな……とか考えていた矢先に、俺とアリスは真上からビームみたいな〝魔法〟で襲撃を受ける。

「──ふひゃあ!!」

 瞬時に俺は左手で『ふひゃあ!』と驚くアリスを庇うように抱え、同時に右手には〝月夜かぐや〟を構える。

 そして、剣に〝魔力〟を込め……
 後は半ば力業で、飛んできた魔法を吹き飛ばす!!

「クソ、何だ、今度は!!」

 と、魔法の放たれた方を俺は睨み付ける。

 すると、その場所……というか、には、桃色のサイドテールの髪に、大きくゴツめな大鎌を片手で持って、こちらを見下ろす女性の姿がある。

「〝老いぼれ小僧〟が、まだ、お嬢を保護できて無いって聞くから、だってのに折角せっかく出てきて見れば、随分と楽しそうだな? あたしも混ぜてくれよ?」

 アリスを〝お嬢〟と呼び──恐らくは、妖怪世話焼き爺の事を〝老いぼれ小僧〟と呼ぶ──

 この空中に浮かんでる。桃色の髪の20代ぐらいの見た目の女は、眠たげな様子で軽くあくびをしながら、挑発的な笑みを浮かべて話しかけてくる。

 そして、その挑発的な笑みの最中、チラりと見えた口の中には、牙の用な物が生えている。

「うげ……まさか……このに、コイツが出てくるとは予想外なのです……」

「──よう、お嬢? 元気そうで安心したぞ?」

「気を付けるのです! コイツは実力だけなら、あの妖怪じじいをも凌駕するのです! 通り名は〝桃色の鬼ロサラルフ〟──そして、見ての通り、吸血鬼ヴァンパイアなのです!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...