生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

文字の大きさ
上 下
18 / 378

第17話 クレハ・アートハイム

しおりを挟む


 昔、寝る前にお母さんがよく絵本を読んでくれた。

 それは、何処にでもあるような、お伽噺とぎばなしで──

 悪い魔王にさらわれたお姫様を、突然現れた勇者様が、その魔王を倒して助け出してくれて、お姫様がその勇者様に恋をして、そしてその勇者様と結婚して、幸せになるお話だったり。

 〝魔法の鏡〟を持っていた、何処かの国のお姫様が、毒の入ったリンゴを食べてしまい、一度は息絶えてしまうけど、それを憧れの王子様に救われるお話だったり。

 いじめられていた女の子が〝魔法使い〟に貰った、綺麗なドレスやカボチャの竜車で、素敵な王子様に会い行って恋をする物語など様々だった。

 小さい頃の私は、寝る前にそうやって本を読んでもらったり、お母さんやお父さん──そして、お婆ちゃんとお話するのが、私は大好きだった。

『──ねぇ、お母さん、恋ってなぁに?』

『そうね。まだ、クレハには難しいかしら? でも、とっても素敵なことよ』

『お母さんは、お父さんに恋をしたの?』

『そうよ。お母さんはお父さんに。それとお婆ちゃんはお爺ちゃんに恋をしたのよ』

『お母さんはお父さんのどこが好きなの?』

『優しい所や、思いやりのある所や、その他にも全部よ。それにお婆ちゃんも、クレハが生まれる前に亡くなってしまった、お爺ちゃんの優しくてカッコいい所とか、全部が大好きだったのよ!』

『いいなぁ! 私も恋ってできるかな?』

『勿論! クレハなら、きっと素敵な人が見つかるわ! でもね、恋はしたいからするんじゃないのよ?』

『どうゆうこと?』

『恋はね、探すんじゃなくて見つかるの──いつの間にかその人の事を好きになってるのよ? 何かこう……ビビッと! そう、ビビッと来るのよ!』

『び、ビビッと!?』 

『そうよ。それは会ったその瞬間かもしれないし、会ってから少しずつ好きになっていって、気づいたら恋をしてるかもしれないわ。それは人それぞれね』

『む、難しい話? でも、いつか私にも好きな人ができたらいいな』

『あと、ちゃんと見極めなきゃダメよ! 恋は生涯で1人だけ! 人生と同じで1人1回までなのよ! これは本当に幸せになるお母さんのよ──例え50年でも、100年かかっても良いから、クレハが一番に大切な人で、クレハを一番に大切にしてくれる人を見つけなさい! そんな人が見つかるまでは、恋は憧れるだけで十分よ』

『うん! それは分かったけど……でも、一番大切な人って事は、お母さんやお父さんや、お婆ちゃんよりもってこと?』

『そうよ。じゃなきゃ恋じゃないわ』

『うーん。何か急に見つかる気が無くなって来ちゃったな……わふッ!』

 ──私は、突然勢いよく抱きついてきた、お母さんによって声を遮られた。

『あ~。もぉ! 可愛すぎよ~! 流石私の娘ね!』

『く、苦しいよ……お母さん』

『ふっふっふ! まだまだ本気じゃないわよ。私のプリティキュートな娘への〝母親スキンシップ〟のフルコースは始まったばかりなのよ!!』

 すりすり、なでなで、ぎゅッ、もふもふ、ぷにぷに、クンカクンカ、むぎゅ~っと、される私──

『もぉ! 嬉しいけど限度があるよ。死んじゃう!』

 ぷはッ! と何とか私は〝母親スキンシップ〟なる、フルコースから抜け出す。

『あら、ごめんなさい。お母さん、少しはしゃぎ過ぎちゃったわ』

『本当だよ。でも……嫌ってわけじゃ無かったよ』

『………ハッ! 危ない危ない、落ち着け私……娘をハグ殺してしまう所だったわ……』

『それは本当に落ち着いて。というか、ハグ殺すって何?』

『とにかく、恋を見つけるのは焦らなくていいのよ! でも『ああ、この人だッ!』って分かったら本気で頑張るのよ! 後、それとね──』


 ……んッ……z……何か凄く……温かい……z……それに……何だか……凄く懐かしい夢を見てた気がする……

(──夢!? ユキマサ君! お婆ちゃん!)

 私は昨日の事を思い出し、一気に目を開けるが……

「……ふ……ぇ……ッ……///」

 気づくと、私は──今まさに、探そうとしていた、ユキマサ君の胴体に、思いっきり抱きついていた。

 ななななッ何で!! こんなことに……///

 それに、何か温かいなと思ったら、抱きついてる私を更に包むように、ユキマサ君の腕が私の身体を抱き締めている。

(ど、どうしよう……と、取り敢えず、退かなきゃ……)

 そして良く見ると、ベッドを半分こして、私が左半分で、ユキマサ君が右半分って言ったのに……

 ──今、私はベッドの右半分の場所にいる。

 これ、私から抱きついたことになっちゃうよね?

(あ、でも……もう少しだけこうしてたい……かも……)

 ──って待って待って待って!
 何を考えてるの私! ユキマサ君と、まだそういう関係じゃないしダメだよ!!

 私は昔、お母さんに言われた
『〝ああ、この人だッ!〟って分かったら本気で頑張るのよ!! 後、それとね──』
 という言葉を思い出すが……
「──ッ……///」
 ちょ、ちょっと待った!!

 それに恋とかまだよく分からないし!

 でも……ビビッと来たか? って、聞かれたら……

(──多分……来た……かな……うん……)

 そ、それでも……! 
 ま、まだ恋と確実に決まったわけじゃ……///

 あ、ダメ、何かよく分からないけど身体がもだえる

 でも、嫌じゃない。けど、何か凄くもどかしい!
 な、何? 何なのこれッ……!?

 ──でも、これだけは分かる。

 もし、これがで……所謂いわゆる、そういう関係……私の大切な人達──お母さんやお父さん、お婆ちゃんやエメレアちゃん、ミリアやシスティアお姉ちゃんを越える……

 私の人生で一番の大切な人になってくれる人。

 もし、そんな人が私にもできるなら……
 
 そんな相手は……

 私は、ユキマサ君がいいな──

 そ、その……絶対……!!

 ──って、待って待って! だから待って?
 こういうのは、じっくり、しっくり、しっぽりと考えなきゃダメな事なのッ!!

 わーわー! と、私の頭が結構大パニック!

(落ち着け……私……深呼吸だ……すぅ~。はぁ~)

「──!!」

 ここで、私は重大なミスにようやく気づく。

 今、私は寝てるユキマサ君の胴体に抱きつき、ユキマサ君の腕に抱き締められている。

 そこで、深呼吸をすると、どうなるのか?

 答えは簡単……

 ──ユキマサ君の匂いがする。

 しかも、寝てる異性の匂いを
 『すぅ~。はぁ~。』と嗅ぐ形で……。

 これでは、ただの変態だ……

 は、早く、退かなければ……!

(あ、でも、この匂い好きかも? 凄く落ち着く……)

 て、そうじゃなくて! 早く退かないと!

 寝てる男の子に抱きついて、深呼吸をするように匂い嗅いでる何て……変態だと思われちゃうよ!

 あ、でも、後……少し……もうちょっとだけ……

 せめて、ユキマサ君が起きるまで……

 そ、それに、ユキマサ君の腕に抱き締められて、動けないんだから……
 わ、私だけが悪いわけじゃ無いし……

(それに……やっぱり、すごく温かい……)

 そんな事を考えていると、何だが、うとうと……としてきてしまい……私は不覚にも、普段はまずしない筈の二度寝をこのタイミングでしてしまうのだった──。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...