生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ

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第14話 お泊まり2

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「……そ、それで……? ユキマサ……君……なんで……お婆ちゃんの病気……治せた……の……?」

 先程まで大泣きしていたクレハは「ヒック!」としゃっくりをしながら、鼻をかみつつ質問してくる。

「何でって聞かれてもな……? 昔から、生まれつきの病気と風邪以外は治せる」

 異世界に来てからは尚更だ。前いた世界では病気を治したらかなり疲労したりもしたが、異世界こっちに来たからだろうか? 今回は、ほとんど疲れてすらいない。

 あとは異世界に来てからは〝回復魔法〟を使うと、ボワッと緑色の光がでるようになった事ぐらいか。

 少なくとも〝元いた世界〟だと、こんな如何いかにも〝回復魔法です!〟みたいな緑の光は出なかった。

「な……何それ……そんなの聞いたことないよ……?」

 唖然とした顔のクレハ。テーブルを挟んで、クレハの向かいに座る婆さんも、ビックリした表情でいる。

「普通はじゃ病気は治せない筈でしょ?」

(──まじか!? この異世界なら、大なり小なり幅があるとしても、基本可能だと思ってたぞ?)

 こっちでは病気になったらどうするんだろうな?
 まあ、話を聞くには薬はあるみたいだが。

「いや、そう言われてもな……」

 どうするか……この際、クレハには〝異世界から来た〟って打ち明けてみるか? 
 何となく、クレハになら話してもいい気がする。

「別に私は感謝しかないからいいけどさ。何か、ユキマサ君がつくづく規格外なのは分かってきたよ……」

 さっきから時々クレハと目が合うのだが……
 大泣きしたのを見られたのが恥ずかしかったのか、目が合うと、すぐに目を逸らされる。

「ユキマサさんとおっしゃいましたね? この度はこんな老いぼれの病気を治していただき何と感謝すればいいのやら……本当に、本当にありがとうございます」

 深々と俺にクレハの婆さんが頭を下げてくる。

「どういたしまして。頭あげてくれ、俺が勝手にやった事だから気にしなくていい、治ってよかったな」

「またそうやって……本当に無欲だよね……」
「だから、俺はそんな酔狂な人間じゃない」

 それにヒュドラの件も結局は何だかんだで、礼としてエルルカから剣も受けとっちまったしな。

 本当に無欲な人間ならあれも受け取らないだろう。

「それとユキマサさん。クレハから話はお聞いおります、今晩はゆっくり泊まっていってくださいな」

 クレハの向かいに座り、俺とクレハの会話を二コニコと聞いていた婆さんは、病気の話しでれてしまってたが、俺が泊まらせてもらうという最初の話しに戻る。

「ありがとう。でも、本当にいいのか?」
「クレハの表情を見て、声を聞けば、ユキマサさんがどんな人かは直ぐ分かります。人を見る目は確かな子ですから」

 婆さんは優しい表情を向けてくれる。それを聞くクレハは顔を赤くし、照れ臭さそうな様子でいる。

「それにクレハが見込んだ男性なら何も問題はありますまい。この老いぼれも、確かに貴方のお人柄等色々と、この目で拝見させてもらいました。貴方は貴方が思うよりも、ずっと素敵な人ですよ」
「……ッ……そりゃ、好印象で良かったよ──後、お言葉に甘えて、お邪魔させて貰います」

 俺は世話になるクレハの婆さんに頭を下げる。

「狭いところですが、ユキマサさんならいくらでも泊まっていってくださいな」

 そう言いながら、クレハの婆さんは「お茶を煎れてくる」と立ち上がり台所へと向かう。
 
 てか、俺、今日色々お言葉に甘えすぎじゃないか?
 おにぎりの時といい、エルルカの時といい。

 ……それにエルルカには色々と驚かされたな。

 じーッ……
 何やら左隣からクレハの視線を感じる。

「何だ?」
「ユキマサ君、エルルカさんの事考えてたでしょ?」

「な……?」

 ──!? 何でわかった? 魔法か!?
 まだ鼻が少し赤いクレハは、ジトッとした目で俺を見ながら、不機嫌そうに俺の心を読んでくる(?)

「おや? エルルカというと、もしかして〝アルカディア〟のの〝剣斉けんさい〟かい?」

 ちょうど、そのタイミングで3人分のお茶を持ってきた婆さんが、俺達にお茶を配り、席につきながら話を聞き返す。

 六魔導士? ああ……確かエルルカはクレハが言うには『たった人の精鋭部隊──王国団』だったか? で、それを略してってわけか。

 確かに強かったな。少なくとも今まで生きてきて、戦った中では間違いなく一番強い相手だった。

 でも、あれはと言うわけでもないのか……
 エルルカは意識を狩り取る気ぐらいの攻撃はしてきたが、実際はわけで、殺意も無かったからな。

「うん、武器屋のレノンさんの所であったんだ」
「そうかい? クレハにはもう強力なライバルまでいるんだねぇ」

 婆さんは、楽しそうにクレハをからかう。

「だから、ユキマサ君と私はまだそんな関係じゃないから!」

 クレハが顔を赤くし抗議するが、婆さんは二コ二コと相変わらず楽しそうに笑っている。

 クレハは婆さんに抗議した後……

「もぉ……」

 と、言いながら婆さんがれたお茶を飲み始める。

「あ、それとユキマサ君、シャワー浴びる?」

 ──え、シャワーあるのか? 

 唐突な質問と、異世界にシャワーがあるのに驚く。

(そういや。家の中も普通に明るいし、どうなってるんだ?)

「あ、ああ……頼めるなら頼みたい」

 俺は取り敢えずシャワーを頼んでおく。人の家に泊まるのに、砂や汗まみれってのは流石に失礼だろうしな。

「うん、じゃあこっち来て!」

 と、案内されながら……

「少し変なこと聞いて良いか?」

 この部屋の明かりとか、そのシャワーとかが気になった俺は、クレハに聞いてみる事にする。

「どうしたの?」
「この明かりとかはどういう理屈だ? 魔法か?」

「えーっと……」

 あー、うん。この反応は分かってた……
 質問の意味が分からないっていう表情だ。

「ユキマサ君、一応聞くけどさ……〝ウィータクリュスタル〟は分かるよね?」

 クレハは『まさかね』といった感じで聞いてくる。

「……悪い。何だ、それは?」

 ウィータクリュスタル? 聞いたことないな。少なくとも異世界独自の品だろう。

「ユキマサ君……本当に今までいったいどこでどういう生活してたの? まあ、話したくなければ別にいいけど……」

 可哀想な人を見る目でクレハが俺を見てくる。

 まあ、そう思われても仕方ないだろうな。

 ……もう、クレハになら話してもいいか。
 別に特別隠す必要があるもんでもないしな。

「分かった……後で俺の事は色々話す」

 と、俺はクレハには異世界から来た事を打ち明ける事を決める。

 信じてくれるかは分からないけど──別にアルテナにも、口止めされてるわけでも無いしな。

「──ほ、本当!? や、約束だよ?」

 予想外の反応だったのかクレハは目を大きく開けて『えッ? 話してくれるの?』とビックリしている。

(いや、そんな期待されても困るんだが……?)

「ああ。信じてもらえるかは分からないが……」
「……? 信じるけど、嘘は絶対無しだからね?」

 しっかり、俺はクレハに念を押される。

「ああ、約束する。それで〝ウィータクリュスタル〟って……何か聞いても良いか?」
「あ、うん。えっとね……実物を見て貰った方が分かりやすいかな? あれだよ──」

 クレハが指を指す先には先程から謎だった部屋を明るく灯す──〝壁掛けのランタン〟のような物の中に〝菱形ひしがたのクリスタル〟のような物があり、それが日本で言う電球のように光り部屋を明るく照らしている。

「これが〝ウィータクリュスタル〟だよ。正確にはこの黄色の結晶は──光の〝ウィータクリュスタル〟で正式名称は〝光の結晶ルメン・クリュスタル〟かな? これはこうやって、部屋とかを明るく照らすのに使うのが一般的だよ」
「これもで動いてるのか?」

「そうだよ。試しに一回灯りを消してみるね」

 と、言いクレハがクリュスタルに触れると──ヒュンと灯りが消えて、それまで部屋を明るく灯していた〝クリュスタル〟がただの黄色い菱形の物体になる。

「灯りをつける時はもう一度を少し込めれば光って、逆に消したい時は、点いてるクリュスタルに流れてるを止めれば消えるって感じだよ?」

(……便利なもんだな? 普通にもう電気だな。違うとすれば科学か魔法かの違いぐらいだろうか?)

「後は他にも種類があって基本は4種類で──

 料理の火とか寒い時とかシャワーを温めるのに使う
 赤色は──火の結晶 〝イグ・クリュスタル〟

 これもシャワーに使ったり、後は飲み水にもなる
 青色は──水の結晶 〝アクア・クリュスタル〟

 後はトイレに使ったり、洗濯にとかにも使う
 緑色は──浄化の結晶〝ラヴェ・クリュスタル〟

 それとさっき説明した部屋とかを明るく灯す
 黄色は──光の結晶 〝ルメン・クリュスタル〟

 の4種類が基本かな。使い方は色々あるけど? 他にも珍しいクリュスタルはちょこちょこあるよ」

(凄いな、文明に必要な火水光そしてトイレまでこのシリーズで賄えるのか……)

「これは何からできてるんだ?」

 俺はふと思った率直な疑問を投げる

「〝魔力結晶〟だよ。魔物とか倒すとドロップするやつ。人工的なのもあるけど、基本は魔物のドロップ品かな? ドロップした時は黒色なんだけど、それに〝付与魔法〟を使うと色も変わってそれぞれの〝クリュスタル〟になるんだよ」
「ああ、あの(+1)とか(+2)とかのあれか?」

 俺はワイバーンとかからドロップした何に使うんだこれ? と思ってた黒い菱形の〝魔力結晶〟を思い出す。そうやって使うんだな。何かと思ってた。

「色によっても違うけど(+1)の〝魔力結晶〟だと大体〝黄色の光の結晶ルメン・クリュスタル〟はで1年ぐらいは持つよ? 〝赤の火の結晶イグ・クリュスタル〟だと燃焼時間で50時間ぐらいかな?」
「結構持つんだな?」

「それと元々の〝魔力結晶〟の魔力が消えて使い終わるとから注意だよ。まあ、消費してくと色がどんどん薄くなって、最終的には白く透明になって割れるから直ぐわかるけどね」

 使い終わると割れて消えるのか? 環境にも優しそうだな? というか、割れてって事は魔物みたいにラグみたいなのが走って消える感じか?

「何となくだが分かった。助かるよ、ありがとう」
「どういたしまして。シャワーの使い方も教えるね」

 そして、シャワー室へ案内されると──

 天井から四角いシャワーが固定され吊るされており。その上には先ほど説明された──〝火の結晶イグ・クリュスタル〟と〝水の結晶アクア・クリュスタル〟が設置されている。

 このシャワーは雨や滝みたいな感じで上から降ってくる水を浴びる系の、所謂いわゆる、オーバーヘッドシャワータイプのシャワーだ。

「〝水の結晶アクア・クリュスタル〟で水を出して、温度は〝火の結晶イグ・クリュスタル〟で調整してね? あとそっちの左のボトルが洗髪剤で髪の毛洗うやつ。右は洗身剤だよ。洗身剤はそこのザラザラした布に付けて身体を洗ってね? ──って、ここまで説明しちゃったけどよかったかな?」

 懇切丁寧にクレハが説明してくれる。
 ──てか、見た感じ洗髪剤は普通にシャンプーで、洗身剤はそのまんま石鹸だな。

 これもこの世界にもあるんだな。漫画などである異世界だと、風呂は水浴びみたいなイメージだったが。

「……助かる。これは故郷でも似たようなのを使ってた。ちなみにこれは何からできてるんだ?」

 俺は興味本意で洗髪剤の材料を聞いてみる。

「これは〝エルフの国〟で取れる〝妖精の花ディワフロース〟って植物から作られるものだよ」

 シャンプーには違い無さそうだが、作られる素材は全然違うみたいだ。

「〝エルフの国〟か──勝手なイメージだが、植物とか何か凄く品質が良さそうだな?」
「うん〝エルフの国〟の植物は珍しい物や〝エルフの国〟にしかない物も多いんだよ」

 そこはイメージどおりみたいだな。

「色々説明助かった。じゃあ、シャワー借りるぞ?」
「全然気にしないで、あと着替えとかはあるの?」

 聞かれて思い出したが、俺は元いた世界で着てた寝巻きが〝アイテムストレージ〟にあった筈なので……

「ああ〝アイテムストレージ〟に仕舞しまってある」

 と、答える。

 ちなみにあるのは旅館のような和風の黒い寝巻きだ。それにこれは、孤児院のチビ達が、俺の誕生日にと皆で買ってプレゼントしてくれたやつだ。

 俺よく考えたら寝巻きで異世界来たんだよな……
 アルテナが着替え今着てる服を用意してくれて助かったよ。

「なるほど、便利だね。あ、それとさっき約束したユキマサ君の話は、後でちゃんと聞かせてもらうからね!」

 俺は『絶対だよ!』とクレハに更に念を押される。

「分かってる、嘘も言わない」

 今更クレハに嘘なんて吐かない。

「うん! あとタオル出しておくから使ってね」
「悪いな、助かる」

「うん、じゃあ、また後で」
 と、クレハが脱衣所から出ていく。

 俺は服を脱ぎ、脱いだ服を〝アイテムストレージ〟にしまう──確かに便利だよな……これ?

 早速、教えて貰った通り少し魔力を込め〝水の結晶アクア・クリュスタル〟を起動させてみると……

 シャーっと水が雨のようにシャワーから出てくる。

 次に〝火の結晶イグ・クリュスタル〟を起動してみると……

 すると水が〝火の結晶イグ・クリュスタル〟で温められお湯になっていく。

(まるで湯沸し器だな……)

 次にエルフの国の〝妖精の花ディワフローズ〟で作られた洗髪剤を使い、シャカシャカと髪を洗う。

 うん、シャンプーだ。しかも品質は高い。

 個人的な話だが、このシャンプーの香りは、元いた世界で使っていた物よりも好きかもしれない。

 続いて身体を洗うが……これは普通に石鹸だな?
 こちらは品質も匂いも元いた世界と殆ど一緒だ。

 それにしても異世界に来てからは色んな意味で驚かされる。

 異世界で最初の食事はおにぎりだったしな。

 あれ、美味かったな。また作ってくれないかな?

「──ユキマサ君、タオルここ置いとくね!」

 扉越しにクレハに声をかけられる

「ああ、助かる」

 ……てか、普通漫画とかだと男女が逆じゃないか?

 何で俺がシャワー浴びて、クレハがタオル持ってきてるんだ……いや、勿論タオル嬉しいけどさ?

 まあ、漫画の読みすぎか。

(馬鹿な事考えてないで早くでよう……)

 と、そんな事を思いながら、俺はさっさと頭と身体を流して、シャワー室を出るのだった。
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