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第十二章
爆発音
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「そういやアヤカちゃん。時間の方は大丈夫かい?」
一通りの調理を終え、洗い物を開始した店長は尋ねた。
「あ。そういえばもうすぐですね」
店長の隣で洗い物の補助に回ろうとしたアヤカはふと壁の時計に目を向けた。
「時間?」
「はい。今日は記念祭の目玉イベントの大名行列がある日でして」
「ああ。そういや門番の人が言ってたわね」
「ええ。今日はそれに父上が――」
ドオオォォン!
リエルとアヤカの話を突然の轟音が遮った。
「な、何の音?」
「外から?」
席を立ったリエルが外へ飛び出すと、周囲から人々が騒ぐ声が聞こえた。
「ば、爆発だ!」
「どこからだ?」
「あっちから聞こえたぞ!」
「やばい!煙が上がってる!」
この路地裏に人の姿は見られない。おそらく表通りで起きた騒ぎだろう。その様子を見ようとリエルが足を一歩踏み出そうとしたその時だった。
「おい!なんだ今の音は?」
「予定よりも早すぎるぞ!」
「誰だ勝手に起爆させたのは!」
右手の方から不穏な会話が聞こえた。その方角にリエルが顔を向けると、街を練り歩くには不自然な黒装束の三人が固まっていた。フードを目深くかぶっているため、その顔はよく見えない。
「あなた達!何をしているの?」
「――!やべぇ!」
不意にかけられた声に反応した三人は反射的に腰の刀を抜いた。
「!」
三人のうち二人がリエルに迫って来た。目撃者の口封じ。その類の敵意を感じたリエルは剣の柄に手を掛けた。
「『アクア』!」
リエルの背後からビオラが水魔法を発動させた。黒装束の足元から発せられた水柱は彼らの身体を容易く飲み込んだ。
「ぐおっ!」
黒装束の二人は視界を奪われ、攻撃を阻まれた。その隙を捉えたリエルは一気に距離を詰め、左側の黒装束の顎に掌底を打ち込んだ。その威力は相手の頭蓋に衝撃を与え、そのまま仰向けに卒倒させるほどであった。
「ごばぁ!」
流れるような動きでリエルはもう一人の腹部にミドルキックを打ち込んだ。相手は後ろのゴミ箱に身体を叩き付けられ、中身のゴミを散らしながら路上に倒れこんだ。
「ぐぐ…ぐべぇ!」
先に掌底を喰らった黒装束は身体を起こそうと力を入れたが、鳩尾をリエルに踏みつけられ、呆気なく阻まれた。
「もう一人は…」
右足に力を入れながらリエルは周囲を見渡した。どうやら三人目は仲間を見捨てて逃走したようだ。
「ったく!なんなのよコイツら!」
食後のスイーツを食べ損ねて不機嫌のビオラはゴミまみれの黒装束の頭を踏みつけた。
「お二人とも!大丈夫ですか?」
店からアヤカが飛び出してきた。
「大丈夫よ。それより…」
リエルは屈みこみ、黒装束のフードをひっぺがした。緑色の肌色のスキンヘッド。普通の人間よりも長い耳と鼻。やたらととがった前歯。リエルはその特徴を持つ種族を知っていた。
「これは…ゴブリン…!」
一通りの調理を終え、洗い物を開始した店長は尋ねた。
「あ。そういえばもうすぐですね」
店長の隣で洗い物の補助に回ろうとしたアヤカはふと壁の時計に目を向けた。
「時間?」
「はい。今日は記念祭の目玉イベントの大名行列がある日でして」
「ああ。そういや門番の人が言ってたわね」
「ええ。今日はそれに父上が――」
ドオオォォン!
リエルとアヤカの話を突然の轟音が遮った。
「な、何の音?」
「外から?」
席を立ったリエルが外へ飛び出すと、周囲から人々が騒ぐ声が聞こえた。
「ば、爆発だ!」
「どこからだ?」
「あっちから聞こえたぞ!」
「やばい!煙が上がってる!」
この路地裏に人の姿は見られない。おそらく表通りで起きた騒ぎだろう。その様子を見ようとリエルが足を一歩踏み出そうとしたその時だった。
「おい!なんだ今の音は?」
「予定よりも早すぎるぞ!」
「誰だ勝手に起爆させたのは!」
右手の方から不穏な会話が聞こえた。その方角にリエルが顔を向けると、街を練り歩くには不自然な黒装束の三人が固まっていた。フードを目深くかぶっているため、その顔はよく見えない。
「あなた達!何をしているの?」
「――!やべぇ!」
不意にかけられた声に反応した三人は反射的に腰の刀を抜いた。
「!」
三人のうち二人がリエルに迫って来た。目撃者の口封じ。その類の敵意を感じたリエルは剣の柄に手を掛けた。
「『アクア』!」
リエルの背後からビオラが水魔法を発動させた。黒装束の足元から発せられた水柱は彼らの身体を容易く飲み込んだ。
「ぐおっ!」
黒装束の二人は視界を奪われ、攻撃を阻まれた。その隙を捉えたリエルは一気に距離を詰め、左側の黒装束の顎に掌底を打ち込んだ。その威力は相手の頭蓋に衝撃を与え、そのまま仰向けに卒倒させるほどであった。
「ごばぁ!」
流れるような動きでリエルはもう一人の腹部にミドルキックを打ち込んだ。相手は後ろのゴミ箱に身体を叩き付けられ、中身のゴミを散らしながら路上に倒れこんだ。
「ぐぐ…ぐべぇ!」
先に掌底を喰らった黒装束は身体を起こそうと力を入れたが、鳩尾をリエルに踏みつけられ、呆気なく阻まれた。
「もう一人は…」
右足に力を入れながらリエルは周囲を見渡した。どうやら三人目は仲間を見捨てて逃走したようだ。
「ったく!なんなのよコイツら!」
食後のスイーツを食べ損ねて不機嫌のビオラはゴミまみれの黒装束の頭を踏みつけた。
「お二人とも!大丈夫ですか?」
店からアヤカが飛び出してきた。
「大丈夫よ。それより…」
リエルは屈みこみ、黒装束のフードをひっぺがした。緑色の肌色のスキンヘッド。普通の人間よりも長い耳と鼻。やたらととがった前歯。リエルはその特徴を持つ種族を知っていた。
「これは…ゴブリン…!」
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