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第十二章
どこで食べようか
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「あー。にしても腹減ったわ」
お腹を手でおさえる仕草をしながらビオラが呟いた。
混雑するギルドをいったん後にしたリエル一行は昼食をどこでとろうか思案を始めた。中央広場を経由し、南区画を歩く一行は周囲を見渡した。
「せっかくオウカに来たんだから美味しいもの食べたいわよね」
「この辺りはどこも混んでますね」
「ヤベーなオイ」
スシ。テンプラ。ソバ。その他多数の名物料理が存在するオウカ公国。昼時であることと、建国記念祭の最中ということもあり、周辺の露店を含む飲食店はどこも混雑していた。
「言っとくけど、こないだみたいなクソマズ店はいやよ」
地図を見ながらビオラはぼやいた。数日前、馬車停を目指す途中で発見した一軒の食堂。雨宿りも兼ねて食事を摂ろうとリエル一行は意気込んで入店した。
ぱっと見は悪くない雰囲気の店だった。しかし、その日のオススメをコースで出すので単品注文は不可能。海鮮料理をメインにしているくせにその横に添えられているツマやスープの具に使われる野菜の新鮮さをこれでもかとアピールする店主。テンプラの衣は予想以上に油がギトギトで食べた瞬間体内が重油でコーティングされたような感覚に襲われる。刺身はわさびを多めにつけないと食えたものじゃない味。挙句はトイレは外の公衆トイレのみというクセだらけの異常な店であった。
「あの店主の『だからとっても新鮮なんです』は圧が強かったわね」
リエルは野菜について解説する店主の顔を思い出した。
「あの味噌あえのこんにゃく。薬品っぽい味してましたね…」
その味を思い出したアズキは思わず口をおさえた。
「あたしが大人だったら酒で舌をごまかしてたわね」
色々思い出したビオラは思わず舌打ちした。
「ああいう店に限って潰れねぇんだよな…」
トニーは溜息を漏らした。
「お食事処をお探しですか?」
不意に声を掛けられ、リエルは横を向いた。そこには純白の割烹着を身に着け、白いスカーフで長い黒髪をまとめ、唐草模様の買い物袋を手にした少女が立っていた。買い物袋の中には魚や野菜などの食材や調味料、割りばしなどの消耗品が詰め込まれている。
「あなたは?」
「突然声をおかけしまして申し訳ございません。何やらお困りのようでしたので」
少女は深々と頭を下げた。
「私、アヤカ・ハナサキと申します。よろしければ、私が勤めるお店にご案内いたしましょうか?」
「え?お店?」
「はい。丁度買い出しの途中であなた方をお見掛けしましたので声をおかけした次第であります」
妙に丁寧な言葉でアヤカは答えた。
「それじゃあ、お願いしてもいいかしら?」
「わかりました。こちらです」
リエル一行はアヤカの案内に従い目立たない路地裏へ移動した。
お腹を手でおさえる仕草をしながらビオラが呟いた。
混雑するギルドをいったん後にしたリエル一行は昼食をどこでとろうか思案を始めた。中央広場を経由し、南区画を歩く一行は周囲を見渡した。
「せっかくオウカに来たんだから美味しいもの食べたいわよね」
「この辺りはどこも混んでますね」
「ヤベーなオイ」
スシ。テンプラ。ソバ。その他多数の名物料理が存在するオウカ公国。昼時であることと、建国記念祭の最中ということもあり、周辺の露店を含む飲食店はどこも混雑していた。
「言っとくけど、こないだみたいなクソマズ店はいやよ」
地図を見ながらビオラはぼやいた。数日前、馬車停を目指す途中で発見した一軒の食堂。雨宿りも兼ねて食事を摂ろうとリエル一行は意気込んで入店した。
ぱっと見は悪くない雰囲気の店だった。しかし、その日のオススメをコースで出すので単品注文は不可能。海鮮料理をメインにしているくせにその横に添えられているツマやスープの具に使われる野菜の新鮮さをこれでもかとアピールする店主。テンプラの衣は予想以上に油がギトギトで食べた瞬間体内が重油でコーティングされたような感覚に襲われる。刺身はわさびを多めにつけないと食えたものじゃない味。挙句はトイレは外の公衆トイレのみというクセだらけの異常な店であった。
「あの店主の『だからとっても新鮮なんです』は圧が強かったわね」
リエルは野菜について解説する店主の顔を思い出した。
「あの味噌あえのこんにゃく。薬品っぽい味してましたね…」
その味を思い出したアズキは思わず口をおさえた。
「あたしが大人だったら酒で舌をごまかしてたわね」
色々思い出したビオラは思わず舌打ちした。
「ああいう店に限って潰れねぇんだよな…」
トニーは溜息を漏らした。
「お食事処をお探しですか?」
不意に声を掛けられ、リエルは横を向いた。そこには純白の割烹着を身に着け、白いスカーフで長い黒髪をまとめ、唐草模様の買い物袋を手にした少女が立っていた。買い物袋の中には魚や野菜などの食材や調味料、割りばしなどの消耗品が詰め込まれている。
「あなたは?」
「突然声をおかけしまして申し訳ございません。何やらお困りのようでしたので」
少女は深々と頭を下げた。
「私、アヤカ・ハナサキと申します。よろしければ、私が勤めるお店にご案内いたしましょうか?」
「え?お店?」
「はい。丁度買い出しの途中であなた方をお見掛けしましたので声をおかけした次第であります」
妙に丁寧な言葉でアヤカは答えた。
「それじゃあ、お願いしてもいいかしら?」
「わかりました。こちらです」
リエル一行はアヤカの案内に従い目立たない路地裏へ移動した。
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