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第十二章
カホクトー学園
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翌日、魔王からの指令を受けた静葉一行はオウカ公国に足を踏み入れた。
「意外とのどかね」
小鳥のさえずりが響く林の中、静葉は木々の隙間から見える平原に目を向けた。人の気配はまるでなく、いくつかの小動物がのんきに歩いている。
「中心部から離れればこんなものよ。首都セダンに行けば打って変わって賑やかよ」
そう静葉に教えたメイリスは手元に抱えたバーレルからチキンナゲットを一つつまんだ。
「それで…ここにも魔王軍の支部があるって聞いたけど…」
静葉はくるっと真後ろを向いた。その先にある大きな建物のデザインはこの世界の雰囲気にマッチしたファンタジー風だが、全体的な構造は静葉にとって馴染み深いものであった。
「あれは…学校?」
そこには大きな学校、否、学校だったと思われる廃墟があった。周囲を囲むのどかな林には不似合いなほどに荒れ果てている。壁はひび割れ、グラウンドと思われる広場には多種多様な雑草が生い茂っている。
「あの建物を支部にしているってこと?」
「ええ。そしてあれはカホクトー学園。昔、この辺りに住んでた人々が通っていた学校よ」
メイリスはボロボロに錆びた門を開いた。
「昔?てことは二百年前くらい?」
「ええ。騎士団にいた頃、同僚の何人かがこの学園の卒業生だったみたいでね。とても変わってる学園だったらしいの」
「変わってる?ラノベみたいに不良とか変態の生徒ばっかりだったとか?」
「んー…どちらかというと、教師の方が変わり者だらけだったらしいわ」
「教師?」
「ええ。同僚の話によると、当時二百歳現役の体育教師とか、覆面をかぶった魔法学の教師とか色々いてね。あと、犬の数学教師がいたなんて話もあったわ」
「犬?犬型の魔族の?」
「いいえ。『犬』そのものよ。四足歩行で『わん』と鳴く正真正銘の犬だってさ」
「ええ…?」
何があってもおかしくないファンタジーな異世界とはいえ、犬を教師として雇う学園の発想は静葉にとって理解しがたいものであった。
「同僚によると、教え方は上手だったらしくてね。生徒からは好評だったらしいわ」
「『わんわん』だけでどうやって教えてんのよ…」
さすがに想像がつかなかった。
「でもある日、音楽教師が意中の魔法学教師に仕掛けた罠に巻き込まれて記憶を失ってね。自分が犬であることを忘れてしまったらしいの。その時から彼は自分が人間だと思い込んで二本足で歩き、人の言葉を話すようになったとか」
「何その急展開…まるで打ち切り直前の漫画みたいね」
そんな話をしながら荒れ果てた校庭を歩くと、学園長を象ったらしい銅像のもとにたどり着いた。
「これが…学園長?」
顔つきは平凡な老齢の男性だが、上半身はあまりにもアンバランスなマッチョ体型の銅像である。
「その銅像は当時の学園長。学園の利益と自分の気まぐれのために多くの奇抜な校則を作った人物です」
「うおっ!」
銅像の足元から聞こえた声に静葉は驚いた。視線を下げると、隠された入り口を開いたモグラの魔族が彼女を見上げていた。
「お待ちしておりました魔勇者様。オウカ支部長のボルグと申します」
ボルグは頭を下げた。
「もう…どこから出てきてんのよ」
「失礼。ちょっと地下室の改装中でして。さぁさぁこちらへ」
地下の入り口から出てきたボルグの案内を受け、静葉一行はカホクトー学園改め魔王軍オウカ支部に足を踏み入れた。
「学校を拠点って…どこの芸能事務所よ…」
「意外とのどかね」
小鳥のさえずりが響く林の中、静葉は木々の隙間から見える平原に目を向けた。人の気配はまるでなく、いくつかの小動物がのんきに歩いている。
「中心部から離れればこんなものよ。首都セダンに行けば打って変わって賑やかよ」
そう静葉に教えたメイリスは手元に抱えたバーレルからチキンナゲットを一つつまんだ。
「それで…ここにも魔王軍の支部があるって聞いたけど…」
静葉はくるっと真後ろを向いた。その先にある大きな建物のデザインはこの世界の雰囲気にマッチしたファンタジー風だが、全体的な構造は静葉にとって馴染み深いものであった。
「あれは…学校?」
そこには大きな学校、否、学校だったと思われる廃墟があった。周囲を囲むのどかな林には不似合いなほどに荒れ果てている。壁はひび割れ、グラウンドと思われる広場には多種多様な雑草が生い茂っている。
「あの建物を支部にしているってこと?」
「ええ。そしてあれはカホクトー学園。昔、この辺りに住んでた人々が通っていた学校よ」
メイリスはボロボロに錆びた門を開いた。
「昔?てことは二百年前くらい?」
「ええ。騎士団にいた頃、同僚の何人かがこの学園の卒業生だったみたいでね。とても変わってる学園だったらしいの」
「変わってる?ラノベみたいに不良とか変態の生徒ばっかりだったとか?」
「んー…どちらかというと、教師の方が変わり者だらけだったらしいわ」
「教師?」
「ええ。同僚の話によると、当時二百歳現役の体育教師とか、覆面をかぶった魔法学の教師とか色々いてね。あと、犬の数学教師がいたなんて話もあったわ」
「犬?犬型の魔族の?」
「いいえ。『犬』そのものよ。四足歩行で『わん』と鳴く正真正銘の犬だってさ」
「ええ…?」
何があってもおかしくないファンタジーな異世界とはいえ、犬を教師として雇う学園の発想は静葉にとって理解しがたいものであった。
「同僚によると、教え方は上手だったらしくてね。生徒からは好評だったらしいわ」
「『わんわん』だけでどうやって教えてんのよ…」
さすがに想像がつかなかった。
「でもある日、音楽教師が意中の魔法学教師に仕掛けた罠に巻き込まれて記憶を失ってね。自分が犬であることを忘れてしまったらしいの。その時から彼は自分が人間だと思い込んで二本足で歩き、人の言葉を話すようになったとか」
「何その急展開…まるで打ち切り直前の漫画みたいね」
そんな話をしながら荒れ果てた校庭を歩くと、学園長を象ったらしい銅像のもとにたどり着いた。
「これが…学園長?」
顔つきは平凡な老齢の男性だが、上半身はあまりにもアンバランスなマッチョ体型の銅像である。
「その銅像は当時の学園長。学園の利益と自分の気まぐれのために多くの奇抜な校則を作った人物です」
「うおっ!」
銅像の足元から聞こえた声に静葉は驚いた。視線を下げると、隠された入り口を開いたモグラの魔族が彼女を見上げていた。
「お待ちしておりました魔勇者様。オウカ支部長のボルグと申します」
ボルグは頭を下げた。
「もう…どこから出てきてんのよ」
「失礼。ちょっと地下室の改装中でして。さぁさぁこちらへ」
地下の入り口から出てきたボルグの案内を受け、静葉一行はカホクトー学園改め魔王軍オウカ支部に足を踏み入れた。
「学校を拠点って…どこの芸能事務所よ…」
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