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第十一章
あるギルドにて
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「なんだって!?鉄草団がすでに壊滅していた…?」
ファイン大陸南部。ブーラ地方にあるアムルの街。その街の冒険者ギルド内で衝撃的なニュースが走った。
「は、はい。先に偵察に向かった冒険者によると、アジト内にいた盗賊達はすでに全滅。リーダーであるスノームの遺体共々入り口付近で確認されたとのことです」
ギルドの職員は戸惑いながらも説明した。
鉄草団とは、ブーラ地方とサンユー地方の間に位置するエブラ山の山道にアジトを構えて通行人を襲う盗賊団の名称である。彼らは通行人から奪った食料や装備、貴重品などを法外な値段をつけて転売することで有名であった。
「全滅って…誰がやったの?」
「サンユー王国の騎士団か?」
「まさか猟兵が?」
冒険者達から一斉に質問が飛び交った。
「…魔族です。彼らは我々よりも先にアジトへ乗り込み、鉄草団を一人残らず排除してアジトを占拠。魔族達が入り口付近で団員の遺体処理を行う様子が目撃されたようです」
手を震わせながら職員は報告書を読み上げた。
「なんだって?」
「それじゃあ、奪われた品物は…」
「おそらく…」
確認こそされてはいないが、職員と冒険者達の頭の中には一つの仮説が思い浮かんでいた。
鉄草団の撃退と彼らに奪われた品物の奪還。この街の冒険者達はそのクエストを受注し、その準備を整えていた。
しかし、鉄草団の存在と行為はブーラ地方に支部を構える魔王軍にとっても疎ましいものであったため、魔勇者をはじめとする刺客が送り込まれることとなった。
その結果、鉄草団は一人残らず命を奪われ、品物も全て魔王軍に押収されることとなった。
「どーすんだよ!盗賊どもはともかく、品物を取り返せなけりゃクエストが達成できねぇじゃねぇか!」
「そうよ!これじゃポイントにならないじゃないの!」
冒険者達は一斉に不満を漏らした。
「なんか代わりはないのかよ!占拠した魔族を倒せとか!」
「い、いえ…まだそのような話は…」
『魔物の討伐』や『アイテムの調達』などの国や一般からの依頼は一度ギルド上層部に通す必要があり、彼らの承認を得て初めて正式なクエストとして冒険者が受注することが出来るようになる。そして、クエスト達成した際にギルドからもらえるポイントをためるとランクが上がる。ゆえに、クエストではない個人的な依頼は達成してもギルドからは報酬やポイントはもらえない。冒険の記録に記載し、提出すれば多少の反映はされるものの、それでも正式なクエストに比べればスズメの涙程度のものである。
「まだるっこしい!とっとと魔族どもをぶっ潰しに行こうぜ!」
盗賊の次は魔族が自分達に牙をむく。そう考えた大柄の冒険者はギルドを飛び出そうとしていた。
「お、落ち着けゴライ!そんなことしても報酬やポイントはもらえないぞ!」
隣にいた槍使いの冒険者はどうにかゴライをなだめようとした。
「そうっスよー。金にならない仕事なんてするだけ無駄っスー」
突然後ろから聞きなれない声がかかり、振り向くとそこには緑のベレー帽をかぶった女が立っていた。
ファイン大陸南部。ブーラ地方にあるアムルの街。その街の冒険者ギルド内で衝撃的なニュースが走った。
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手を震わせながら職員は報告書を読み上げた。
「なんだって?」
「それじゃあ、奪われた品物は…」
「おそらく…」
確認こそされてはいないが、職員と冒険者達の頭の中には一つの仮説が思い浮かんでいた。
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その結果、鉄草団は一人残らず命を奪われ、品物も全て魔王軍に押収されることとなった。
「どーすんだよ!盗賊どもはともかく、品物を取り返せなけりゃクエストが達成できねぇじゃねぇか!」
「そうよ!これじゃポイントにならないじゃないの!」
冒険者達は一斉に不満を漏らした。
「なんか代わりはないのかよ!占拠した魔族を倒せとか!」
「い、いえ…まだそのような話は…」
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「お、落ち着けゴライ!そんなことしても報酬やポイントはもらえないぞ!」
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