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第十章

告白お断り

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「いや~。クールに決めたわね~シズハちゃん」
「さすがは魔勇者様。マジパネェです」
「くっつくんじゃないわよ。暑苦しい」
「あら。アンデッドの私は冷たいんでしょ?」
「距離的なものよ」
 テーブルに戻った矢先にアンデッドメイリスハーピーアウルに両腕をしがみつかれた静葉はしかめっ面で振り払った。

「実力、判断、人望…どれをとっても今の私にはかなわぬか…」

 再びしがみつこうとしているアウルの頭を抑えつけている静葉の前にリーヴァが近づいてきた。

「悔しいが、魔王様の判断は正しかったようだ…」
 静葉の顔を見るリーヴァの表情は苦々しいものだった。彼の足は悔しさと静葉からもらった急所蹴りのダメージによるしびれによって激しく震えていた。
「今日のところは負けを認めてやる。だが、私はあきらめない」
 リーヴァは力強く静葉の顔を指さした。
「さらに修行を積み、必ずや貴様に私の実力を認めさせてやる!」
 情熱的に語るリーヴァとは対照的に静葉は冷ややかな目で彼を見ている。

「そして…その暁には貴様を私の妻にしてやる!いや!なってください!」

 まさかのプロポーズであった。その言葉を少し離れた場所で聞いた『守護の風』の二人は身体を硬直させた。

「ごぱぁ!」

 ほとんど間を開けることなくリーヴァの左頬に静葉の右ストレートがさく裂した。

「ええええ!?」

 人間の目から見ても容姿端麗な魔族の青年の告白に対し、思い切った暴力で返事するという魔勇者の行動に魔法使いと僧侶は絶句した。一方で、メイリスとアウル、レヴィアーナは感心するような表情でその光景を眺めている。

「何をどう考えてこのタイミングでいけると思ったのよ」

 床に突っ伏したリーヴァを見下ろし、静葉は吐き捨てた。
「とりあえず、さんざん舐め腐った態度をとったことに関して謝ってくれない?」
「え?ちょ…ぐへっ!」
 要求に返答する間もなく、リーヴァの腹部に静葉の足が襲い掛かった。
「私はラノベの主人公ほど甘くはないの。日和ってハーレムを作るつもりはないし、気に入らない告白はお断りするって決めてんのよ」
 そう断言しながら静葉はリーヴァの腹を何度も踏みつけた。

「あらあら、ほんとに手厳しいのねぇ」

 物騒なプロポーズお断りシーンを眺めているメイリスはのんきにクスクスと笑っていた。
「多少痛めつけることになりますが…よろしいですか?海魔王様」
 アウルは横にいるレヴィアーナに確認をとった。
「かまわぬ。丈夫なだけが取り柄の男じゃからのう」
 愚息への仕置きを代わりに実行してもらえる。そう考えたレヴィアーナは無慈悲に了承した。

「え…ええぇ…」
「これは…」

 冒険者達の脅威である魔勇者とその周りに集う魔族達。彼女達のとんでもない光景に『守護の風』の生き残り二人は理解が追い付かなかった。

「…帰ったら冒険者やめよう…」
「うん…」

 心身疲れ果てた魔法使いと僧侶は引退を決心した。

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