208 / 261
第十章
海魔王レヴィアーナ
しおりを挟む
「見事な働きであったぞ!魔勇者シズハとその下僕共よ!」
甲板に戻った静葉達を迎えたのは海に突如現れた海竜――が変化した妖艶な魔族の女性であった。臀部から海竜の尻尾を生やし、耳の位置にはリーヴァと同じ形のヒレがある。
「改めて名を申す。わらわの名はレヴィアーナ・ミウ・ドライゴン。この世の海を統べる海魔王じゃ」
海魔王レヴィアーナは厳かに頭を下げ、自己紹介した。その美しき姿は静葉一行だけでなく海魔王軍に包囲されて甲板の隅に固められている魔法使いと僧侶と貴族達の目を奪うに十分であった。
「また面倒なキャラと設定ぶち込んできたわね…」
静葉はあきれ顔で海魔王の前に出た。
「私は――」
「おっと。皆まで言う必要はないぞ。おぬしらの事はオグロから聞いておる」
レヴィアーナは静葉の言葉を遮った。
「さて、此度は我が愚息が世話になったようじゃな。礼を言わせてもらうぞ」
「母上!私はこいつらに世話など――ぐはっ!」
異議を申し立てようとしたリーヴァだが、レヴィアーナの右手から放たれた水砲が彼の鳩尾に直撃し、その場にうずくまった。
「たわけが。公の場では『海魔王様』と呼べと言うておるじゃろうが」
「ふ、ふぐう…」
レヴィアーナは右手の水気を払いながら溜息をついた。
「すまぬのう。そやつは座学は優秀なのじゃが、実戦経験が浅いお坊ちゃん故、そのザマなのじゃ」
「そうみたいね。腕は悪くないけど…」
実際の様子こそ見てはいないが、息子が今回の任務でどのような立ち回りをしてきたか、レヴィアーナは容易に想像していた。
「だいたい、預けておいた『深淵の鎌』はどうした?言うてみよリーヴァよ」
海魔王の厳しい問いかけにおののきながらもリーヴァは口を開いた。
「それは…」
「黙れ!」
「ぶふぇあ!」
海魔王の声が言葉を遮り、リーヴァは顔面に強烈な水砲を浴びた。
「え、えぇ…」
あまりの理不尽な仕打ちに静葉は思わず絶句した。
「未熟者めが!海の中しか目を向けておらぬから魔勇者になれぬのじゃ!」
「ご、ごぼぼぼぼ」
リーヴァの顔面に水を浴びせ続けながらレヴィアーナは説教を続けた。
「文句があるならばたった一人でこの船を制圧するぐらいの力と気概を見せてみせい!そこの魔勇者は片手だけで国一つを滅ぼすほどの実力じゃぞ!」
「ご…ごぼぼぼぼぼ」
「ちょ…誇張表現…」
事実と大きく異なる話をされて静葉はとても困惑していた
「ふふ。海の中でも有名人ね。魔勇者様」
「うっさい」
当時の協力者であるメイリスからの茶化しを流した静葉であった。
「それはさておき、魔勇者よ。おぬしは良い眼をしておるのう。昔のオグロによく似ておる」
息子に一通りの仕置きを済ませたレヴィアーナは話題を変えた。
「オグロ…魔王のこと?」
「そうじゃ。わらわも昔はあやつと何かと競ったものじゃが、当時のあやつは血気盛んでな。何者も近づけぬような覇気を纏っていたものじゃ」
「…全然嬉しくないわね。魔王に似てるなんて言われても」
昔を懐かしむレヴィアーナに対し、静葉は冷たく言い放った。
「ほっほっほ。そういう強気なところも奴にそっくりじゃ。まるで奴の子供じゃのう」
「やめなさいよ。ますます反吐が出そうだわ」
少し殺気のこめられた眼差しを向けられているにも関わらず、レヴィアーナはヘラヘラと笑っていた。
「そして、あの強烈な禁断魔法…あれを連発する戦法は奴でもまず思いつかぬぞ?なんと無謀で大胆な判断よ」
海竜の姿でこの海に姿を現したレヴィアーナはクイーン・ゼイナル号の側面に開けられた穴から魔勇者と灰色の髪の男の戦いを途中から見物していた。
「もう少しであの勇者殺しとやらを始末できたのにのう…惜しかったわい」
「惜しくなんてないわよ。正直、ギリギリだったのよ」
禁断魔法の連続攻撃。とっさに思いついたばくち戦法であった。
「そうでもなかろう?おぬしにはあるんじゃろ?奥の手が」
静葉の眼の奥を捉えたレヴィア―ナは薄ら笑いを浮かべ、意味深に尋ねた。その質問の意味を静葉はなんとなく理解した。
「…あれはそんないいものじゃない。できれば使いたくないわ」
「そうかそうか。まあ、あやつのようにはなりたくないよのう」
何かを知っているレヴィアーナは怪しげに笑っていた。
甲板に戻った静葉達を迎えたのは海に突如現れた海竜――が変化した妖艶な魔族の女性であった。臀部から海竜の尻尾を生やし、耳の位置にはリーヴァと同じ形のヒレがある。
「改めて名を申す。わらわの名はレヴィアーナ・ミウ・ドライゴン。この世の海を統べる海魔王じゃ」
海魔王レヴィアーナは厳かに頭を下げ、自己紹介した。その美しき姿は静葉一行だけでなく海魔王軍に包囲されて甲板の隅に固められている魔法使いと僧侶と貴族達の目を奪うに十分であった。
「また面倒なキャラと設定ぶち込んできたわね…」
静葉はあきれ顔で海魔王の前に出た。
「私は――」
「おっと。皆まで言う必要はないぞ。おぬしらの事はオグロから聞いておる」
レヴィアーナは静葉の言葉を遮った。
「さて、此度は我が愚息が世話になったようじゃな。礼を言わせてもらうぞ」
「母上!私はこいつらに世話など――ぐはっ!」
異議を申し立てようとしたリーヴァだが、レヴィアーナの右手から放たれた水砲が彼の鳩尾に直撃し、その場にうずくまった。
「たわけが。公の場では『海魔王様』と呼べと言うておるじゃろうが」
「ふ、ふぐう…」
レヴィアーナは右手の水気を払いながら溜息をついた。
「すまぬのう。そやつは座学は優秀なのじゃが、実戦経験が浅いお坊ちゃん故、そのザマなのじゃ」
「そうみたいね。腕は悪くないけど…」
実際の様子こそ見てはいないが、息子が今回の任務でどのような立ち回りをしてきたか、レヴィアーナは容易に想像していた。
「だいたい、預けておいた『深淵の鎌』はどうした?言うてみよリーヴァよ」
海魔王の厳しい問いかけにおののきながらもリーヴァは口を開いた。
「それは…」
「黙れ!」
「ぶふぇあ!」
海魔王の声が言葉を遮り、リーヴァは顔面に強烈な水砲を浴びた。
「え、えぇ…」
あまりの理不尽な仕打ちに静葉は思わず絶句した。
「未熟者めが!海の中しか目を向けておらぬから魔勇者になれぬのじゃ!」
「ご、ごぼぼぼぼ」
リーヴァの顔面に水を浴びせ続けながらレヴィアーナは説教を続けた。
「文句があるならばたった一人でこの船を制圧するぐらいの力と気概を見せてみせい!そこの魔勇者は片手だけで国一つを滅ぼすほどの実力じゃぞ!」
「ご…ごぼぼぼぼぼ」
「ちょ…誇張表現…」
事実と大きく異なる話をされて静葉はとても困惑していた
「ふふ。海の中でも有名人ね。魔勇者様」
「うっさい」
当時の協力者であるメイリスからの茶化しを流した静葉であった。
「それはさておき、魔勇者よ。おぬしは良い眼をしておるのう。昔のオグロによく似ておる」
息子に一通りの仕置きを済ませたレヴィアーナは話題を変えた。
「オグロ…魔王のこと?」
「そうじゃ。わらわも昔はあやつと何かと競ったものじゃが、当時のあやつは血気盛んでな。何者も近づけぬような覇気を纏っていたものじゃ」
「…全然嬉しくないわね。魔王に似てるなんて言われても」
昔を懐かしむレヴィアーナに対し、静葉は冷たく言い放った。
「ほっほっほ。そういう強気なところも奴にそっくりじゃ。まるで奴の子供じゃのう」
「やめなさいよ。ますます反吐が出そうだわ」
少し殺気のこめられた眼差しを向けられているにも関わらず、レヴィアーナはヘラヘラと笑っていた。
「そして、あの強烈な禁断魔法…あれを連発する戦法は奴でもまず思いつかぬぞ?なんと無謀で大胆な判断よ」
海竜の姿でこの海に姿を現したレヴィアーナはクイーン・ゼイナル号の側面に開けられた穴から魔勇者と灰色の髪の男の戦いを途中から見物していた。
「もう少しであの勇者殺しとやらを始末できたのにのう…惜しかったわい」
「惜しくなんてないわよ。正直、ギリギリだったのよ」
禁断魔法の連続攻撃。とっさに思いついたばくち戦法であった。
「そうでもなかろう?おぬしにはあるんじゃろ?奥の手が」
静葉の眼の奥を捉えたレヴィア―ナは薄ら笑いを浮かべ、意味深に尋ねた。その質問の意味を静葉はなんとなく理解した。
「…あれはそんないいものじゃない。できれば使いたくないわ」
「そうかそうか。まあ、あやつのようにはなりたくないよのう」
何かを知っているレヴィアーナは怪しげに笑っていた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
勇者召喚に巻き込まれたおっさんはウォッシュの魔法(必須:ウィッシュのポーズ)しか使えません。~大川大地と女子高校生と行く気ままな放浪生活~
北きつね
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた”おっさん”は、すぐにステータスを偽装した。
ろくでもない目的で、勇者召喚をしたのだと考えたからだ。
一緒に召喚された、女子高校生と城を抜け出して、王都を脱出する方法を考える。
ダメだ大人と、理不尽ないじめを受けていた女子高校生は、巻き込まれた勇者召喚で知り合った。二人と名字と名前を持つ猫(聖獣)とのスローライフは、いろいろな人を巻き込んでにぎやかになっていく。
おっさんは、日本に居た時と同じ仕事を行い始める。
女子高校生は、隠したスキルを使って、おっさんの仕事を手伝う(手伝っているつもり)。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる