199 / 261
第十章
上空からの支援
しおりを挟む
「『シールド』!」
「『フリーズ』!」
僧侶が展開した防御魔法によって海賊の槍は阻まれ、魔法使いが放った氷魔法が別の海賊に直撃した。前衛が防御を固め、後衛が迎撃を行う。防衛の基本布陣だ。
「へぇ…基本はできてるみたいね」
ローストビーフの咀嚼を終えたメイリスは遠くから魔法使い達の戦いを見て感心した。勇者ともう一人の仲間であるはずの武闘家の姿がない。おそらく船内の貴族達の救助に向かったのだろう。
「ま、あっちはあっちで任せていいわよね」
勇者一行と貴族達に関しては特に指示は受けてない。こちらの任務に支障をきたさないならば無理に干渉する必要はない。むしろ、下手に近づかない方が自分達の正体に気づかれずにすむ。そう考えたメイリスは胃の中の油を洗い流すために赤ワインを手に取った。
「…うん。やっぱりお肉には赤ワインが合うわね」
周囲を飛び交う悲鳴をBGMにして上質な赤ワインを堪能したメイリスは正面に弓をつがえてこちらを狙う海賊を目撃した。
「ぬあぁっ!」
回避を試みようとした途端、上空から降って来た何かが海賊の頭上に突き刺さり、一瞬で海賊を絶命させた。放たれた矢はそのままあらぬ方向へ飛んでいった。
メイリスが足元に目をむけると、海賊の頭に刺さったものと同じ物が近くの床に突き刺さっていた。
「これは……羽?」
その羽の形には見覚えがあった。メイリスは足元の羽を拾い上げ、羽の先端に巻かれていた紙を広げた。
『上空にて現在の状況を把握。海魔王軍へはすでに連絡済み。援軍到着まで障害を排除しながら待機されたし。なお、不測の事態に対しては臨機応変に対応すること』
手紙を読み終えたメイリスは空を見上げた。晴天でもその姿をはっきりと目視できる距離ではなく、羽虫のように小さな点が辛うじて見えるだけである。しかし、探知できる強力な魔力とその地点から降り注ぐ羽の攻撃からその存在の正体を理解することができた。
「…オッケー!なんとかさせてもらうわ」
メイリスは上空に向けてOKサインをかざした。それに応えるかのように再び羽が降り注ぎ、メイリスの周囲に近づいていた海賊達の息の根をことごとく止めていった。また、乗客を守るために奮闘する勇者一行の周囲にも羽はにわか雨のごとく降り注がれ、彼女達を襲う海賊達もまた犠牲になった。思わぬ援護を受けた魔法使いと僧侶は困惑の表情を浮かべていた。
「…感謝しなくちゃね。至れり尽くせりのメイドさんに」
羽の雨によって海賊の亡骸が次々と床に転がり続ける中、メイリスは持参したタッパーに残りの肉料理をできる限り詰め込んだ。
「…さて、うちの可愛い魔勇者様はどうしているかしらね?」
「『フリーズ』!」
僧侶が展開した防御魔法によって海賊の槍は阻まれ、魔法使いが放った氷魔法が別の海賊に直撃した。前衛が防御を固め、後衛が迎撃を行う。防衛の基本布陣だ。
「へぇ…基本はできてるみたいね」
ローストビーフの咀嚼を終えたメイリスは遠くから魔法使い達の戦いを見て感心した。勇者ともう一人の仲間であるはずの武闘家の姿がない。おそらく船内の貴族達の救助に向かったのだろう。
「ま、あっちはあっちで任せていいわよね」
勇者一行と貴族達に関しては特に指示は受けてない。こちらの任務に支障をきたさないならば無理に干渉する必要はない。むしろ、下手に近づかない方が自分達の正体に気づかれずにすむ。そう考えたメイリスは胃の中の油を洗い流すために赤ワインを手に取った。
「…うん。やっぱりお肉には赤ワインが合うわね」
周囲を飛び交う悲鳴をBGMにして上質な赤ワインを堪能したメイリスは正面に弓をつがえてこちらを狙う海賊を目撃した。
「ぬあぁっ!」
回避を試みようとした途端、上空から降って来た何かが海賊の頭上に突き刺さり、一瞬で海賊を絶命させた。放たれた矢はそのままあらぬ方向へ飛んでいった。
メイリスが足元に目をむけると、海賊の頭に刺さったものと同じ物が近くの床に突き刺さっていた。
「これは……羽?」
その羽の形には見覚えがあった。メイリスは足元の羽を拾い上げ、羽の先端に巻かれていた紙を広げた。
『上空にて現在の状況を把握。海魔王軍へはすでに連絡済み。援軍到着まで障害を排除しながら待機されたし。なお、不測の事態に対しては臨機応変に対応すること』
手紙を読み終えたメイリスは空を見上げた。晴天でもその姿をはっきりと目視できる距離ではなく、羽虫のように小さな点が辛うじて見えるだけである。しかし、探知できる強力な魔力とその地点から降り注ぐ羽の攻撃からその存在の正体を理解することができた。
「…オッケー!なんとかさせてもらうわ」
メイリスは上空に向けてOKサインをかざした。それに応えるかのように再び羽が降り注ぎ、メイリスの周囲に近づいていた海賊達の息の根をことごとく止めていった。また、乗客を守るために奮闘する勇者一行の周囲にも羽はにわか雨のごとく降り注がれ、彼女達を襲う海賊達もまた犠牲になった。思わぬ援護を受けた魔法使いと僧侶は困惑の表情を浮かべていた。
「…感謝しなくちゃね。至れり尽くせりのメイドさんに」
羽の雨によって海賊の亡骸が次々と床に転がり続ける中、メイリスは持参したタッパーに残りの肉料理をできる限り詰め込んだ。
「…さて、うちの可愛い魔勇者様はどうしているかしらね?」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?
猪瀬
ファンタジー
終業式が終わったあと、気がつけば異世界に転移していた。
ドラゴン、魔方陣、不思議な生物。
唯一知ったものがあるとするならば、お互い苦手であり、特別な同級生。
苦手と特別は両立する。けれど互いに向ける特別という感情の名前はわからないけど……。
何も知らない人たちからすれば大なり小なり異質と思われてしまうような二人。
二人が互いの目的のために手を組み、元の世界に帰ることを目標に協力する。
本当に、利害だけで手を組んだのかは二人にすらわからない。
お互いに抱えるものを吐露する日はくるのか?
弱音を吐けるようになるのか?
苦手以外の、特別な感情とは?
凹凸コンビの異世界ファンタジー。はじまります。
恋愛要素とはあるものの、恋愛要素が出てくるのはもう少し後だと思います。
いいねとか、コメントとか、お気に入りとか気がるにしていってくれると、とても喜れしいです。ガッツポーズして喜びます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
毎日スキルが増えるのって最強じゃね?
七鳳
ファンタジー
異世界に転生した主人公。
テンプレのような転生に驚く。
そこで出会った神様にある加護をもらい、自由気ままに生きていくお話。
※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。
※感想・誤字訂正などお気軽にコメントください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる