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第十章
海賊の襲撃
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「貴様…!」
あくまで態度を改めない魔勇者に対し、リーヴァは歯噛みした。わけのわからぬ言葉を並べるこの不届きな少女にどうにか制裁をくわえたい。そう考えながら彼は体内の魔力を昂らせていた。その時であった。
ドオォン!
「な…!」
突如、部屋全体、否、船全体を大きな震動が襲い掛かった。
「何?」
震動に驚いた静葉は黒い炎をひっこめた。
「まさか、海魔王軍ってヤツ?」
「いや。それにしては早すぎる」
動揺することなくリーヴァは部屋の窓に駆け寄り、外を見た。
「…あれは…!」
「何?骨法使いのコアラでも海に浮かんでた?」
静葉も続いて窓に近づいた。その瞬間、再び震動が襲い掛かってきた。静葉はリーヴァの背中ごしに窓の外を覗いた。
「…海賊…!」
特徴的なドクロのマークを描いた大きな帆をあげた船が二、三隻、この船に向かっていた。その船のうち一隻は船体を横に向け、胴体部からせり出した大砲をこちらに向けて砲弾を撃ち込んでいた。
「ちょっとちょっと…マジで海賊が来ちゃったんだけど…」
「安心しろ。この船のオーナーも言ってたが、ああいう輩が来ることは想定内だ」
「そのために勇者を招いたの?」
「いや。あれはただのプロパガンダだ。見ろ」
リーヴァがそう言った瞬間、この部屋の窓の下から海賊船に向けて砲弾が撃ちだされた。部屋の下のフロアにある大砲によるものだ。しかし、その弾速はお世辞にも速いとは言えず、着弾する前に海面に落下しそうな勢いだ。
「ええ~…なんかへぼくない?」
「甘いな。よく見てみろ」
「…あれ?」
海に落下すると思われた砲弾は突如、空中でその軌道を変え、まるで吸い寄せられるように曲線を描き、一隻の海賊船に命中した。
「な、何あれ?」
「『ホーミング』の魔法を付与した魔法弾だ。情報通り実装していたようだな」
この船から撃ちだされた特殊な砲弾をリーヴァは冷静に説明した。
「魔法弾?」
「そうだ。この船はオーナーのイッサク大臣がサンユー海軍から秘密裏に買収した軍艦を改装したものだ。そのため、今の魔法弾を用いる『魔大砲』などの最新鋭装備を有している」
「確かに言ってたみたいね。でも、まさか丸々軍艦だったとはね…」
静葉が納得したその時、次の砲弾がクイーン・ゼイナル号から発射された。轟音と共に着弾した砲弾は海賊船の甲板上に広く炎をまき散らし、帆や船員を瞬く間に焼き尽くした。『フレイム』の魔法を付与した魔法弾である。
「…頑丈な装甲と強力な装備の前に海賊船は近づくことすらままならない。内部からの破壊工作でもない限り、奴らは貴族達の余興として哀れにもこの海に沈んでゆく運命なのだ」
リーヴァはあたかも自分の船を自慢するかのように笑った。
(あ…これはやばいフラグが立ってるわね…)
その様子を見た静葉の心中には不吉な予感が芽生えていた。
あくまで態度を改めない魔勇者に対し、リーヴァは歯噛みした。わけのわからぬ言葉を並べるこの不届きな少女にどうにか制裁をくわえたい。そう考えながら彼は体内の魔力を昂らせていた。その時であった。
ドオォン!
「な…!」
突如、部屋全体、否、船全体を大きな震動が襲い掛かった。
「何?」
震動に驚いた静葉は黒い炎をひっこめた。
「まさか、海魔王軍ってヤツ?」
「いや。それにしては早すぎる」
動揺することなくリーヴァは部屋の窓に駆け寄り、外を見た。
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「…海賊…!」
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「ちょっとちょっと…マジで海賊が来ちゃったんだけど…」
「安心しろ。この船のオーナーも言ってたが、ああいう輩が来ることは想定内だ」
「そのために勇者を招いたの?」
「いや。あれはただのプロパガンダだ。見ろ」
リーヴァがそう言った瞬間、この部屋の窓の下から海賊船に向けて砲弾が撃ちだされた。部屋の下のフロアにある大砲によるものだ。しかし、その弾速はお世辞にも速いとは言えず、着弾する前に海面に落下しそうな勢いだ。
「ええ~…なんかへぼくない?」
「甘いな。よく見てみろ」
「…あれ?」
海に落下すると思われた砲弾は突如、空中でその軌道を変え、まるで吸い寄せられるように曲線を描き、一隻の海賊船に命中した。
「な、何あれ?」
「『ホーミング』の魔法を付与した魔法弾だ。情報通り実装していたようだな」
この船から撃ちだされた特殊な砲弾をリーヴァは冷静に説明した。
「魔法弾?」
「そうだ。この船はオーナーのイッサク大臣がサンユー海軍から秘密裏に買収した軍艦を改装したものだ。そのため、今の魔法弾を用いる『魔大砲』などの最新鋭装備を有している」
「確かに言ってたみたいね。でも、まさか丸々軍艦だったとはね…」
静葉が納得したその時、次の砲弾がクイーン・ゼイナル号から発射された。轟音と共に着弾した砲弾は海賊船の甲板上に広く炎をまき散らし、帆や船員を瞬く間に焼き尽くした。『フレイム』の魔法を付与した魔法弾である。
「…頑丈な装甲と強力な装備の前に海賊船は近づくことすらままならない。内部からの破壊工作でもない限り、奴らは貴族達の余興として哀れにもこの海に沈んでゆく運命なのだ」
リーヴァはあたかも自分の船を自慢するかのように笑った。
(あ…これはやばいフラグが立ってるわね…)
その様子を見た静葉の心中には不吉な予感が芽生えていた。
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