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番外編
メイリスの食事術
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これは僧侶メイリス・トレヴァーがまだ冒険者だった頃の話。サンユー地方の西部。日も暮れたこともあってリエル、ビオラ、メイリスの三人はとある川のほとりで野営することにした。
「ん~美味しい!やっぱりビオラちゃんが作るお料理は最高ね!」
きれいに焼かれた肉をかみしめ、メイリスは至福の表情でその味を堪能していた。
「料理って…今日のは調味料をかけて直火焼きしただけなんだけど…」
そう答えたビオラは手に持ったきゅうりを丸かじりした。
「何言ってんの。調味料のチョイスと匙加減。素材に合わせた切り分けかたと火加減。どれをとっても一流の料理人に引けを取らないものだわ。これは立派な料理よ」
メイリスは自分の手に持つ食べかけの肉を指し示した。これは近くの草原で採取したスローボアの肉である。
「そ、そう言われると悪い気はしないけど…」
「ふふ。べた褒めね」
珍しく照れるビオラを見たリエルはクスっと笑った。
「でも、メイリスさんってホントよく食べるのね。この前もギルドの食堂ですごい量食べてたよね」
「あーあれね。いくら冒険者割引があるからって牛丼五人前はドン引きしたわよ」
リエルとビオラは先日のメイリスの食事光景を思い返した。
「冒険者ってのは身体が資本のお仕事よ?たくさん栄養取って体力つけないといざという時に困っちゃうことになるのよ」
「そりゃ金がありゃたくさん食えるかもしれないけど、いつでも高額のクエストを受けられるとは限んないでしょ?受けられたとしても達成できるかどうかわかんないし…」
「甘い甘い。はちみつ餡子タピオカパンケーキノワールより甘いわよビオラちゃん」
ビオラの反論に対し、メイリスは指をチッチッと振り出した。
「お金なんかなくったって外に行けば美味しいものならいくらでもあるよの。現にこうやって美味しいお肉や木の実にありつくことが出来てるんだから」
メイリスは自分が食べた肉の骨をビオラの鼻先に突き付けた。その臭いにビオラは思わず顔を歪めた。
「でも、それを採取するための知識と技術はなかなか覚えられるものじゃないわよね?すごいねメイリスさん」
「ふふっ。数をこなしていけば自然と身に着くものよ」
「でもさぁ――」
ビオラが何か言おうと右手を前に出した時、彼女の手の上に何かが頭上の木から落下した。白くうごめく小さな芋虫だ。
「きゃあ!」
「うぎゃあ!」
リエルとビオラは同時に悲鳴を上げた。ビオラは思いきり右手を振り上げ、芋虫を吹き飛ばした。
「おっと」
宙を舞う芋虫をメイリスはつかみ取り、そのまま自分の口に放り込んだ。
「ちょ…何食ってんのよ!」
思わぬ行為を目にしたビオラは声を荒げた。
「シルキーモスの幼虫よ。ちょっと苦い汁が出るけど歯ごたえは悪くないし、栄養もあるのよ」
「詳しく解説しないでよ!想像しちゃうでしょうが!」
「噛んだ時に出る虫汁がね――」
「だから解説すんなって!」
ビオラは背筋を凍らせ、両耳を塞いだ。それを意に介することなくメイリスは近くの地面にいる幼虫を拾い上げた。
「知識があればこういう虫類だって食べられるってことがわかるし、その分食べ物に困ることもなくなるってわけなのよ」
「そ、そうなのね…」
自信満々に語るメイリスの言葉を聞き、リエルは複雑な表情で頷いた。
「あ、そうそう。スカルグモの幼虫を見たら油で揚げてちょうだい。エビみたいで美味しいのよアレ」
「イヤよ!」
ビオラは力強く拒否した。
「ん~美味しい!やっぱりビオラちゃんが作るお料理は最高ね!」
きれいに焼かれた肉をかみしめ、メイリスは至福の表情でその味を堪能していた。
「料理って…今日のは調味料をかけて直火焼きしただけなんだけど…」
そう答えたビオラは手に持ったきゅうりを丸かじりした。
「何言ってんの。調味料のチョイスと匙加減。素材に合わせた切り分けかたと火加減。どれをとっても一流の料理人に引けを取らないものだわ。これは立派な料理よ」
メイリスは自分の手に持つ食べかけの肉を指し示した。これは近くの草原で採取したスローボアの肉である。
「そ、そう言われると悪い気はしないけど…」
「ふふ。べた褒めね」
珍しく照れるビオラを見たリエルはクスっと笑った。
「でも、メイリスさんってホントよく食べるのね。この前もギルドの食堂ですごい量食べてたよね」
「あーあれね。いくら冒険者割引があるからって牛丼五人前はドン引きしたわよ」
リエルとビオラは先日のメイリスの食事光景を思い返した。
「冒険者ってのは身体が資本のお仕事よ?たくさん栄養取って体力つけないといざという時に困っちゃうことになるのよ」
「そりゃ金がありゃたくさん食えるかもしれないけど、いつでも高額のクエストを受けられるとは限んないでしょ?受けられたとしても達成できるかどうかわかんないし…」
「甘い甘い。はちみつ餡子タピオカパンケーキノワールより甘いわよビオラちゃん」
ビオラの反論に対し、メイリスは指をチッチッと振り出した。
「お金なんかなくったって外に行けば美味しいものならいくらでもあるよの。現にこうやって美味しいお肉や木の実にありつくことが出来てるんだから」
メイリスは自分が食べた肉の骨をビオラの鼻先に突き付けた。その臭いにビオラは思わず顔を歪めた。
「でも、それを採取するための知識と技術はなかなか覚えられるものじゃないわよね?すごいねメイリスさん」
「ふふっ。数をこなしていけば自然と身に着くものよ」
「でもさぁ――」
ビオラが何か言おうと右手を前に出した時、彼女の手の上に何かが頭上の木から落下した。白くうごめく小さな芋虫だ。
「きゃあ!」
「うぎゃあ!」
リエルとビオラは同時に悲鳴を上げた。ビオラは思いきり右手を振り上げ、芋虫を吹き飛ばした。
「おっと」
宙を舞う芋虫をメイリスはつかみ取り、そのまま自分の口に放り込んだ。
「ちょ…何食ってんのよ!」
思わぬ行為を目にしたビオラは声を荒げた。
「シルキーモスの幼虫よ。ちょっと苦い汁が出るけど歯ごたえは悪くないし、栄養もあるのよ」
「詳しく解説しないでよ!想像しちゃうでしょうが!」
「噛んだ時に出る虫汁がね――」
「だから解説すんなって!」
ビオラは背筋を凍らせ、両耳を塞いだ。それを意に介することなくメイリスは近くの地面にいる幼虫を拾い上げた。
「知識があればこういう虫類だって食べられるってことがわかるし、その分食べ物に困ることもなくなるってわけなのよ」
「そ、そうなのね…」
自信満々に語るメイリスの言葉を聞き、リエルは複雑な表情で頷いた。
「あ、そうそう。スカルグモの幼虫を見たら油で揚げてちょうだい。エビみたいで美味しいのよアレ」
「イヤよ!」
ビオラは力強く拒否した。
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