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第九章
開眼
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「あれは…『突』の奥義、『疾風』!」
放たれた技の風圧を顔に受け、サリアは驚愕した。道場を初めて訪れたリエル達を伯爵の刺客と勘違いし、迎撃しようとサリアが応戦した時に用いた技。まだ教えてさえもいない技を目の前の門下生が寸分違えず放ったのだ。
全ての刺客を無力化したと感じ取ったリエルはゆっくりと構えを解いた。
「リエル!」
「大丈夫ですか?」
縁側からビオラとアズキが駆けつけてきた。
「ええ。大丈夫よ」
アズキから受け取った濡れタオルで顔をぬぐいながらリエルは答えた。
「恐ろしく速い突き…俺でなきゃ見逃しちゃうねオイ」
後からのこのことやって来たトニーが声をかけてきた。
「何偉そうにぬかしてんのよ」
「プギャ」
ビオラはトニーの顔を踏んづけた。
「ったく…ハラハラさせんじゃないわよバカ」
トニーの顔を踏み続けながらビオラは毒づいた。開眼一番にそんな相棒のジト目を直視したリエルは思わず苦笑した。
「見事――とまではいかないが、よくやった」
詫びの言葉を言おうとしたリエルを阻むようにサリアが二人の間に割って入って来た。
「しかし、解せぬな。一度しか見せていないあの技をなぜあそこまで完璧に模倣できた?」
サリアが腕を組みながら質問した。
「それは――…」
リエルは言葉を詰まらせた。どのように説明すればよいか思いつかなかった。
「身体が……勝手に……」
たどたどしい漠然とした答えであった。師範の言葉通りに従い、心を研ぎ澄ました時、敵の気配をぼんやりとだが捉えることができた。
そして、攻撃を試みた瞬間、サリアが自分達と出会った時に放った技が脳裏に浮かび、気が付けばそれを同じように放っていた。まさに、『身体が勝手に』であった。
「身体が勝手に…か……ふっ」
サリアは言葉を反芻し、小さく吹き出した。その様子を見たリエルは思わず身を竦めた。
「あ、あの…」
「うぁらあぁぁぁー!」
何を言われるかわからず、おののいたリエルがなにか言おうとした瞬間、背後からバンダナの猟兵が叫びながら突進してきた。
「アーランド!」
「!」
サリアが注意を呼びかけようと声をかけた。リエルは高速で振り向き、勢いよく木刀を振りかぶった。その木刀から発せられた衝撃波は突風のように猟兵に襲い掛かり、その身体を吹き飛ばした。
「ぐぶえぇぇっ!」
醜い悲鳴をあげながらバンダナの猟兵は勢いよく地面に倒れこんだ。
「え?ええ?」
とっさに放たれた技に周りの連中は驚愕していたが、一番驚いていたのはリエル自身であった。考えるよりも前に身体を動かした結果、未知の技を放っていたのだ。
放たれた技の風圧を顔に受け、サリアは驚愕した。道場を初めて訪れたリエル達を伯爵の刺客と勘違いし、迎撃しようとサリアが応戦した時に用いた技。まだ教えてさえもいない技を目の前の門下生が寸分違えず放ったのだ。
全ての刺客を無力化したと感じ取ったリエルはゆっくりと構えを解いた。
「リエル!」
「大丈夫ですか?」
縁側からビオラとアズキが駆けつけてきた。
「ええ。大丈夫よ」
アズキから受け取った濡れタオルで顔をぬぐいながらリエルは答えた。
「恐ろしく速い突き…俺でなきゃ見逃しちゃうねオイ」
後からのこのことやって来たトニーが声をかけてきた。
「何偉そうにぬかしてんのよ」
「プギャ」
ビオラはトニーの顔を踏んづけた。
「ったく…ハラハラさせんじゃないわよバカ」
トニーの顔を踏み続けながらビオラは毒づいた。開眼一番にそんな相棒のジト目を直視したリエルは思わず苦笑した。
「見事――とまではいかないが、よくやった」
詫びの言葉を言おうとしたリエルを阻むようにサリアが二人の間に割って入って来た。
「しかし、解せぬな。一度しか見せていないあの技をなぜあそこまで完璧に模倣できた?」
サリアが腕を組みながら質問した。
「それは――…」
リエルは言葉を詰まらせた。どのように説明すればよいか思いつかなかった。
「身体が……勝手に……」
たどたどしい漠然とした答えであった。師範の言葉通りに従い、心を研ぎ澄ました時、敵の気配をぼんやりとだが捉えることができた。
そして、攻撃を試みた瞬間、サリアが自分達と出会った時に放った技が脳裏に浮かび、気が付けばそれを同じように放っていた。まさに、『身体が勝手に』であった。
「身体が勝手に…か……ふっ」
サリアは言葉を反芻し、小さく吹き出した。その様子を見たリエルは思わず身を竦めた。
「あ、あの…」
「うぁらあぁぁぁー!」
何を言われるかわからず、おののいたリエルがなにか言おうとした瞬間、背後からバンダナの猟兵が叫びながら突進してきた。
「アーランド!」
「!」
サリアが注意を呼びかけようと声をかけた。リエルは高速で振り向き、勢いよく木刀を振りかぶった。その木刀から発せられた衝撃波は突風のように猟兵に襲い掛かり、その身体を吹き飛ばした。
「ぐぶえぇぇっ!」
醜い悲鳴をあげながらバンダナの猟兵は勢いよく地面に倒れこんだ。
「え?ええ?」
とっさに放たれた技に周りの連中は驚愕していたが、一番驚いていたのはリエル自身であった。考えるよりも前に身体を動かした結果、未知の技を放っていたのだ。
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