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第九章
打ち合い
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リエル達がハバキリ道場を訪れてはや一週間が経過した。
雲一つない晴天の下、広く整地された庭の一角でリエルとサリアはお互いに木刀を構えていた。ビオラとアズキとトニーは縁側に腰をかけてその様子を見守っている。
「…来い」
全身から静かに闘気を放つサリアはそう告げた。
「…はい!」
そう答えると同時にリエルは右足を大きく踏み込んだ。
「やあぁっ!」
一気に距離を詰めつつ、リエルは木刀を上段に構え、勢いよく振り下ろした。サリアは軽く右にステップして攻撃を回避。リエルの左側面に狙いを定めた。その動きを察知したリエルは空振りした攻撃の勢いをそのまま利用して前転。一回転して片膝をついたリエルは足をバネにして高く飛び上がり、空中で一回転した。着地と同時に木刀を横に振りながらサリアの方に向き直り、木刀を構え直した。
一方、反撃を空振りしたサリアは後ろへ振り向き、追撃することなくリエルの動作を注視した。彼女は足元の砂をじゃりっと踏みしめ、相手の次の一手を予測した。
リエルもまた、相手の出方を窺った。同じ手は通用しない。そう判断した彼女は地面を思いきり蹴りつけて右斜めに跳躍した。
「む?」
初めて見る動きにサリアが唸った。リエルは地面を再び蹴りつけ、今度は左斜めに跳躍。さらに、右斜め、左斜めと繰り返し、高速でジグザグに相手との距離を詰めていった。
「は、速い!」
アズキはその動きに目を奪われ、驚愕の声を漏らした。
「あの反復横跳びが役に立つとはね…」
ビオラはこの一週間の訓練のメニューの一つを思い返した。
「いや~。あれは辛かったなオイ」
「あんたはなんもしてないでしょうが」
横でふんぞり返るトニーにビオラはツッコミを入れた。
そんな外野のやり取りをよそに、リエルは自らの剣の間合いまでに相手との距離を詰めた。そして、サリアの左腰目掛けて一気に木刀を振りかぶった。
「ぬっ!」
利き手とは逆の方向からの攻撃だ。サリアは動じることなく木刀でそれを打ち払った。対するリエルは手を休めることなく木刀を振るい続けた。
「くっ…!」
反撃の隙を許さぬかのように前進しながら連続で攻撃を叩きこむリエル。しかし、その表情には優勢時に見られるような余裕はなかった。それに対して、サリアは後退しながらも涼しい表情で攻撃を払い続けていた。
「ふむ。フットワークは良くなってきたようだな」
連撃をかわし続けながらサリアは冷静に分析した。
「攻めの姿勢も悪くない…だが」
リエルが木刀を上段に振り上げた一瞬の隙をつき、サリアはがら空きの左わき腹にミドルキックをお見舞いした。
「うぐっ!」
リエルの身体は横に勢いよく吹き飛ばされた。サリアは、庭の池の近くに倒れこんだリエルに高速で接近し、木刀を握り続けている彼女の利き手を足で抑えつけ、顔面に木刀を突き付けた。
「剣に意識を向けすぎだ。敵は全身を武器にすると思え」
そう言いながらサリアはリエルの手から足を離し、彼女の身体を起こした。凄まじい一連の流れに対し、縁側の二人と一匹はただ息を呑むことしかできなかった。
雲一つない晴天の下、広く整地された庭の一角でリエルとサリアはお互いに木刀を構えていた。ビオラとアズキとトニーは縁側に腰をかけてその様子を見守っている。
「…来い」
全身から静かに闘気を放つサリアはそう告げた。
「…はい!」
そう答えると同時にリエルは右足を大きく踏み込んだ。
「やあぁっ!」
一気に距離を詰めつつ、リエルは木刀を上段に構え、勢いよく振り下ろした。サリアは軽く右にステップして攻撃を回避。リエルの左側面に狙いを定めた。その動きを察知したリエルは空振りした攻撃の勢いをそのまま利用して前転。一回転して片膝をついたリエルは足をバネにして高く飛び上がり、空中で一回転した。着地と同時に木刀を横に振りながらサリアの方に向き直り、木刀を構え直した。
一方、反撃を空振りしたサリアは後ろへ振り向き、追撃することなくリエルの動作を注視した。彼女は足元の砂をじゃりっと踏みしめ、相手の次の一手を予測した。
リエルもまた、相手の出方を窺った。同じ手は通用しない。そう判断した彼女は地面を思いきり蹴りつけて右斜めに跳躍した。
「む?」
初めて見る動きにサリアが唸った。リエルは地面を再び蹴りつけ、今度は左斜めに跳躍。さらに、右斜め、左斜めと繰り返し、高速でジグザグに相手との距離を詰めていった。
「は、速い!」
アズキはその動きに目を奪われ、驚愕の声を漏らした。
「あの反復横跳びが役に立つとはね…」
ビオラはこの一週間の訓練のメニューの一つを思い返した。
「いや~。あれは辛かったなオイ」
「あんたはなんもしてないでしょうが」
横でふんぞり返るトニーにビオラはツッコミを入れた。
そんな外野のやり取りをよそに、リエルは自らの剣の間合いまでに相手との距離を詰めた。そして、サリアの左腰目掛けて一気に木刀を振りかぶった。
「ぬっ!」
利き手とは逆の方向からの攻撃だ。サリアは動じることなく木刀でそれを打ち払った。対するリエルは手を休めることなく木刀を振るい続けた。
「くっ…!」
反撃の隙を許さぬかのように前進しながら連続で攻撃を叩きこむリエル。しかし、その表情には優勢時に見られるような余裕はなかった。それに対して、サリアは後退しながらも涼しい表情で攻撃を払い続けていた。
「ふむ。フットワークは良くなってきたようだな」
連撃をかわし続けながらサリアは冷静に分析した。
「攻めの姿勢も悪くない…だが」
リエルが木刀を上段に振り上げた一瞬の隙をつき、サリアはがら空きの左わき腹にミドルキックをお見舞いした。
「うぐっ!」
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「剣に意識を向けすぎだ。敵は全身を武器にすると思え」
そう言いながらサリアはリエルの手から足を離し、彼女の身体を起こした。凄まじい一連の流れに対し、縁側の二人と一匹はただ息を呑むことしかできなかった。
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