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第七章
いざ出口へ
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「それにしても驚いたわ。私達が探していたハガーがまさかあなただったなんて」
聖剣の灯りでハガーを照らしながらリエルは声をかけた。
「ははは。よく言われるよ!そういう奴らには腕前を見せて黙らせているけどな!」
見た目で判断されることに慣れているハガーは筋肉の立派な右腕を見せながら答えた。ゴロンダの中では彼の鍛冶の技術において右に出る者はいない。
「あら。それじゃ帰ったらその腕前さっそく見せてもらわなきゃね」
「おうおう。言ってくれるねぇ」
ビオラからの挑戦的な言葉にハガーは嬉しそうに返した。
「驚いたといやぁ、俺らも驚いたな。こんなかわい子ちゃんがあんなすげぇ武器を使いこなしてんだからよ」
「ああ。他にもいい武器持ってるみたいだしな」
オーカワとハガーはリエルをまじまじと見つめながら言った。
「そ、そんなことは…ん?」
謙遜するリエルだったが、彼女は二人の視線に妙な違和感を感じた。その視線をたどると、自分の服の胸元が先ほどの戦闘で下着ごと破れており、服の下の肌が露出していた。
「……きゃあああぁぁぁぁぁ!」
事態を理解したリエルは顔を赤らめ、両腕で胸元を隠しながらその場にしゃがみこんだ。ちなみに破れたのは上の方なので致命的な部分は見えていない。
「見んな!」
ビオラは二人のドワーフの顔面に杖を叩き付け、足元の黒豚の顔面に蹴りをお見舞いした。
「え?俺も?」
見えていないトニーは思わぬとばっちりを受けた。
「ったく!さっさと出るわよこんなトコ!こちとらハガーに用があるんだからね!」
頭から湯気を出しながらビオラはカンテラに火を灯し、出口目指して歩きだした。
「うっす」
「前が見えねぇ」
顔面を殴打されたドワーフ二人は彼女に続くように歩いた。リエルは折れた聖剣を腰の鞘に納め、右手で胸元を隠しながら立ち上がった。
「ほら!リエルも行くわよ!」
「う、うん…」
ビオラの呼び声に応じて後に続こうとしたリエルだったが、ふと何かを思い出したかのように立ち止まり、天井を見上げた。天井は静寂の闇に包まれてよく見えない。
「…?どうしました?」
その様子を訝しんだアズキはリエルに声をかけた。
「あ、ごめん。なんでもないわ」
アズキの声掛けで我に返ったリエルは再び歩きだした。
(…あれは聖剣の力じゃなかった…)
歩きながらリエルは先ほどの崩落の瞬間を振り返った。
(…誰かが『バリア』を…?)
『空のロッド』による重力魔法で動きを封じられたリエルだったが、突然身の回りを包んだ青い光の壁によってその身体は重力から解放された。その好機を活かし、リエルは天井から降って来た大量のがれきを光の刃で切り払うことでがれきの下敷きにならずに済んだのであった。
その青い光は魔法の攻撃を防ぐ防御魔法『バリア』によるものだったが、今のリエルのパーティーにそれを使える者はいない。一体誰が何のためにそれを自分に使ったのか。リエルには見当がつかなかった。
ズンッ!
思考を阻むかのように地響きが周囲を震えさせた。
「…ここに長くいるのは危険ね…」
晴れぬ疑問を抱えたままリエルはゴロンダ遺跡を後にした。
聖剣の灯りでハガーを照らしながらリエルは声をかけた。
「ははは。よく言われるよ!そういう奴らには腕前を見せて黙らせているけどな!」
見た目で判断されることに慣れているハガーは筋肉の立派な右腕を見せながら答えた。ゴロンダの中では彼の鍛冶の技術において右に出る者はいない。
「あら。それじゃ帰ったらその腕前さっそく見せてもらわなきゃね」
「おうおう。言ってくれるねぇ」
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「驚いたといやぁ、俺らも驚いたな。こんなかわい子ちゃんがあんなすげぇ武器を使いこなしてんだからよ」
「ああ。他にもいい武器持ってるみたいだしな」
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「……きゃあああぁぁぁぁぁ!」
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「見んな!」
ビオラは二人のドワーフの顔面に杖を叩き付け、足元の黒豚の顔面に蹴りをお見舞いした。
「え?俺も?」
見えていないトニーは思わぬとばっちりを受けた。
「ったく!さっさと出るわよこんなトコ!こちとらハガーに用があるんだからね!」
頭から湯気を出しながらビオラはカンテラに火を灯し、出口目指して歩きだした。
「うっす」
「前が見えねぇ」
顔面を殴打されたドワーフ二人は彼女に続くように歩いた。リエルは折れた聖剣を腰の鞘に納め、右手で胸元を隠しながら立ち上がった。
「ほら!リエルも行くわよ!」
「う、うん…」
ビオラの呼び声に応じて後に続こうとしたリエルだったが、ふと何かを思い出したかのように立ち止まり、天井を見上げた。天井は静寂の闇に包まれてよく見えない。
「…?どうしました?」
その様子を訝しんだアズキはリエルに声をかけた。
「あ、ごめん。なんでもないわ」
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歩きながらリエルは先ほどの崩落の瞬間を振り返った。
(…誰かが『バリア』を…?)
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その青い光は魔法の攻撃を防ぐ防御魔法『バリア』によるものだったが、今のリエルのパーティーにそれを使える者はいない。一体誰が何のためにそれを自分に使ったのか。リエルには見当がつかなかった。
ズンッ!
思考を阻むかのように地響きが周囲を震えさせた。
「…ここに長くいるのは危険ね…」
晴れぬ疑問を抱えたままリエルはゴロンダ遺跡を後にした。
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