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第七章
降参?
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「は?なんでよ?」
ビオラの疑問に答えるようにアズキはこっそりとジェレミィが持つ怪しげな壺を指さした。発掘したと思われるアイテムの山の横で彼はニヤニヤと笑いながら戦いを観戦している。その傍らには壺に向けて鈍器をチラチラと向けるジェレミィの手下が控えていた。そして、リエルをよく見ると彼女の視線は時折その壺に向けられているのだ。
「…そういうこと…!」
ビオラは思わず歯噛みした。あの壺の中にはトニーとハガーの友人のオーカワが閉じ込められている。正々堂々など完全な建前。実際は人質をちらつかせてなぶりものにするという卑劣な作戦であった。横にいるハガーもそれを理解しているらしく、悔しそうに目の前の光景を見ていた。
「だったら、あたし達の手であの壺を取り返せば――」
「駄目です。僕達の動きは彼らからは丸見えです。ちょっとでも変な動きをすればおそらく――」
「薬師の姉ちゃんの言う通りだ。ここからじゃどうにもできねぇ」
アズキの推測にハガーもうなずいた。
「くそっ!どうすんのよ!」
「とにかく様子を見るっきゃねぇ。チャンスの一つくらいはあるはずだ」
いら立つビオラをなだめるようにハガーは声をかけた。
「ほらほら!もう後がないわよ!」
「く…!」
パーネの斬撃をかわし続けていたリエルだったが、それにも限界が訪れようとしていた。やがて彼女は壁際に追い詰められ、横薙ぎされたショーテルが胸元を掠めた。
「おっと!惜しい…」
パーネは半ば楽しそうに呟いた。リエルはパーネの後ろでのんきに観戦するジェレミィの手に握られたフキホラの壺に目を向けた。
下手に手を出せばあの壺の中にいるトニーとオーカワがどうなるかわからない。折れた聖剣の柄を握りながらもそれを抜くことができないのはそれが理由であった。壺を見ながらリエルはある考えを浮かべた。
「…あなたにはかないません!降参します!」
突如リエルは跪き、折れた聖剣を手にしたまま床に置いた。
「は!?ええぇ?」
まさかの敗北宣言にビオラは目が飛び出しそうな顔で驚きの声をあげた。
「え?マジで?」
驚いたのはパーネも同じであった。
「はい!私をあなたの舎弟にしてください!パーネ様!」
そうリエルが頭を下げた瞬間、フキホラの壺が輝き、彼女の身体は勢いよく壺の中に聖剣ごと吸い込まれていった。
「え?ちょ…ちょっとリエル!」
まさかの事態の連続にビオラの頭はこんがらがっていた。
「おいおい。降参とかつまんねぇなオイ」
ヘラヘラしながらジェレミィが壺を目の高さまで持ち上げた瞬間、壺の表面に亀裂が走り、生じた隙間から光の刃が飛び出した。
「どわあぁぁっ!」
光の刃が頬をかすめ、ジェレミィは思わず壺を手放した。床に落下した壺はやがて全体にひびが入り、内側からの強い衝撃で破片が周囲に吹き飛んだ。
ビオラの疑問に答えるようにアズキはこっそりとジェレミィが持つ怪しげな壺を指さした。発掘したと思われるアイテムの山の横で彼はニヤニヤと笑いながら戦いを観戦している。その傍らには壺に向けて鈍器をチラチラと向けるジェレミィの手下が控えていた。そして、リエルをよく見ると彼女の視線は時折その壺に向けられているのだ。
「…そういうこと…!」
ビオラは思わず歯噛みした。あの壺の中にはトニーとハガーの友人のオーカワが閉じ込められている。正々堂々など完全な建前。実際は人質をちらつかせてなぶりものにするという卑劣な作戦であった。横にいるハガーもそれを理解しているらしく、悔しそうに目の前の光景を見ていた。
「だったら、あたし達の手であの壺を取り返せば――」
「駄目です。僕達の動きは彼らからは丸見えです。ちょっとでも変な動きをすればおそらく――」
「薬師の姉ちゃんの言う通りだ。ここからじゃどうにもできねぇ」
アズキの推測にハガーもうなずいた。
「くそっ!どうすんのよ!」
「とにかく様子を見るっきゃねぇ。チャンスの一つくらいはあるはずだ」
いら立つビオラをなだめるようにハガーは声をかけた。
「ほらほら!もう後がないわよ!」
「く…!」
パーネの斬撃をかわし続けていたリエルだったが、それにも限界が訪れようとしていた。やがて彼女は壁際に追い詰められ、横薙ぎされたショーテルが胸元を掠めた。
「おっと!惜しい…」
パーネは半ば楽しそうに呟いた。リエルはパーネの後ろでのんきに観戦するジェレミィの手に握られたフキホラの壺に目を向けた。
下手に手を出せばあの壺の中にいるトニーとオーカワがどうなるかわからない。折れた聖剣の柄を握りながらもそれを抜くことができないのはそれが理由であった。壺を見ながらリエルはある考えを浮かべた。
「…あなたにはかないません!降参します!」
突如リエルは跪き、折れた聖剣を手にしたまま床に置いた。
「は!?ええぇ?」
まさかの敗北宣言にビオラは目が飛び出しそうな顔で驚きの声をあげた。
「え?マジで?」
驚いたのはパーネも同じであった。
「はい!私をあなたの舎弟にしてください!パーネ様!」
そうリエルが頭を下げた瞬間、フキホラの壺が輝き、彼女の身体は勢いよく壺の中に聖剣ごと吸い込まれていった。
「え?ちょ…ちょっとリエル!」
まさかの事態の連続にビオラの頭はこんがらがっていた。
「おいおい。降参とかつまんねぇなオイ」
ヘラヘラしながらジェレミィが壺を目の高さまで持ち上げた瞬間、壺の表面に亀裂が走り、生じた隙間から光の刃が飛び出した。
「どわあぁぁっ!」
光の刃が頬をかすめ、ジェレミィは思わず壺を手放した。床に落下した壺はやがて全体にひびが入り、内側からの強い衝撃で破片が周囲に吹き飛んだ。
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