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第七章
鉱山の中の遺跡
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「ここがゴロンダ遺跡…」
「山の中にこんなでかい遺跡があるなんて…」
村の北にそびえたつ無骨な山。村のドワーフ達はここから資源を採掘し、様々なアイテムを生産している。そして最近、その奥から謎の遺跡が発見された。ドワーフ達はその遺跡を調査し、発掘されたアイテムの研究やレプリカの作成、展示などあらゆるビジネスで観光業を発展させ、村の経済に大きく貢献した。
「ここに来る途中、露店で色々売ってたわね」
「遺跡饅頭なんて買う人いるのかしら…」
しかし、遺跡の内部で発見されたのはアイテムだけではなかった。人の手の届かなかった地にはいつしか狂暴な魔物も幾分か住み着くようになっていたのだ。その被害を防ぐためにドワーフ達は遺跡の内部に入ることができる外部の者を冒険者のみに限定した。
「思ったより簡単に入ることができてよかったですね」
「ええ。観光客には今のところ冒険者はほとんどいなかったみたい」
長い行列を作る観光客用の入り口とは対照的に冒険者用の入り口はガラガラであり、リエル達は入り口を管理するドワーフに冒険者ライセンスを見せるだけであっさりと遺跡に入ることができたのだ。ドワーフ達に整備されたのか内部は思ったよりもきれいであり、壁には等間隔で松明が灯されていて視界は良好であった。
「入り口の人によるとけっこう危険な魔物がいるらしいですけど…」
「ギルドに情報が入ってない場所だからね。気を付けて行きましょう」
自分を含む全員を鼓舞するようにリエルは自分の拳を握りながら言った。
「張り切ってるところ悪いんだけど…」
「ん?何?」
後ろからのビオラの呼びかけにリエルは振り返った。
「そのハガーってどんな顔してんの?」
「あ…」
大事な情報を聞き忘れたことに気づき、リエルは思わず固まった。
「そ、そういえば聞いていませんでしたね…」
「やっちまったなオイ」
アズキは気まずそうな表情になり、トニーは呆れるように鼻を鳴らした。
「はぁ~…相変わらずどっか抜けてんだからあんたは…」
溜息と共にビオラは遠慮なく毒づいた。
「ま、いいわ。出会ったドワーフにかたっぱしから声かけりゃわかんでしょ」
「ご、ごめんね。手間増やしちゃって…」
冷や汗をかきながらリエルは謝罪した。
「いいのよ。今に始まったことじゃないし。夕食にスイーツ追加で許してあげるわ」
「わ、わかったわ。それじゃ行きましょ」
気を取り直してリエルはそそくさと先へ進んだ。その背中を追いながらビオラはアズキとトニーに目を向けた。
「…とまぁ、こんな感じよ。うちのリーダーは」
肩を竦めながらビオラは小さく笑った。
「山の中にこんなでかい遺跡があるなんて…」
村の北にそびえたつ無骨な山。村のドワーフ達はここから資源を採掘し、様々なアイテムを生産している。そして最近、その奥から謎の遺跡が発見された。ドワーフ達はその遺跡を調査し、発掘されたアイテムの研究やレプリカの作成、展示などあらゆるビジネスで観光業を発展させ、村の経済に大きく貢献した。
「ここに来る途中、露店で色々売ってたわね」
「遺跡饅頭なんて買う人いるのかしら…」
しかし、遺跡の内部で発見されたのはアイテムだけではなかった。人の手の届かなかった地にはいつしか狂暴な魔物も幾分か住み着くようになっていたのだ。その被害を防ぐためにドワーフ達は遺跡の内部に入ることができる外部の者を冒険者のみに限定した。
「思ったより簡単に入ることができてよかったですね」
「ええ。観光客には今のところ冒険者はほとんどいなかったみたい」
長い行列を作る観光客用の入り口とは対照的に冒険者用の入り口はガラガラであり、リエル達は入り口を管理するドワーフに冒険者ライセンスを見せるだけであっさりと遺跡に入ることができたのだ。ドワーフ達に整備されたのか内部は思ったよりもきれいであり、壁には等間隔で松明が灯されていて視界は良好であった。
「入り口の人によるとけっこう危険な魔物がいるらしいですけど…」
「ギルドに情報が入ってない場所だからね。気を付けて行きましょう」
自分を含む全員を鼓舞するようにリエルは自分の拳を握りながら言った。
「張り切ってるところ悪いんだけど…」
「ん?何?」
後ろからのビオラの呼びかけにリエルは振り返った。
「そのハガーってどんな顔してんの?」
「あ…」
大事な情報を聞き忘れたことに気づき、リエルは思わず固まった。
「そ、そういえば聞いていませんでしたね…」
「やっちまったなオイ」
アズキは気まずそうな表情になり、トニーは呆れるように鼻を鳴らした。
「はぁ~…相変わらずどっか抜けてんだからあんたは…」
溜息と共にビオラは遠慮なく毒づいた。
「ま、いいわ。出会ったドワーフにかたっぱしから声かけりゃわかんでしょ」
「ご、ごめんね。手間増やしちゃって…」
冷や汗をかきながらリエルは謝罪した。
「いいのよ。今に始まったことじゃないし。夕食にスイーツ追加で許してあげるわ」
「わ、わかったわ。それじゃ行きましょ」
気を取り直してリエルはそそくさと先へ進んだ。その背中を追いながらビオラはアズキとトニーに目を向けた。
「…とまぁ、こんな感じよ。うちのリーダーは」
肩を竦めながらビオラは小さく笑った。
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