上 下
119 / 261
第七章

鉱山の中の遺跡

しおりを挟む
「ここがゴロンダ遺跡…」
「山の中にこんなでかい遺跡があるなんて…」

 村の北にそびえたつ無骨な山。村のドワーフ達はここから資源を採掘し、様々なアイテムを生産している。そして最近、その奥から謎の遺跡が発見された。ドワーフ達はその遺跡を調査し、発掘されたアイテムの研究やレプリカの作成、展示などあらゆるビジネスで観光業を発展させ、村の経済に大きく貢献した。

「ここに来る途中、露店で色々売ってたわね」
「遺跡饅頭なんて買う人いるのかしら…」

 しかし、遺跡の内部で発見されたのはアイテムだけではなかった。人の手の届かなかった地にはいつしか狂暴な魔物も幾分か住み着くようになっていたのだ。その被害を防ぐためにドワーフ達は遺跡の内部に入ることができる外部の者を冒険者のみに限定した。

「思ったより簡単に入ることができてよかったですね」
「ええ。観光客には今のところ冒険者はほとんどいなかったみたい」

 長い行列を作る観光客用の入り口とは対照的に冒険者用の入り口はガラガラであり、リエル達は入り口を管理するドワーフに冒険者ライセンスを見せるだけであっさりと遺跡に入ることができたのだ。ドワーフ達に整備されたのか内部は思ったよりもきれいであり、壁には等間隔で松明が灯されていて視界は良好であった。

「入り口の人によるとけっこう危険な魔物がいるらしいですけど…」
「ギルドに情報が入ってない場所だからね。気を付けて行きましょう」
 自分を含む全員を鼓舞するようにリエルは自分の拳を握りながら言った。

「張り切ってるところ悪いんだけど…」
「ん?何?」
 後ろからのビオラの呼びかけにリエルは振り返った。

「そのハガーってどんな顔してんの?」
「あ…」

 大事な情報を聞き忘れたことに気づき、リエルは思わず固まった。

「そ、そういえば聞いていませんでしたね…」
「やっちまったなオイ」
 アズキは気まずそうな表情になり、トニーは呆れるように鼻を鳴らした。
「はぁ~…相変わらずどっか抜けてんだからあんたは…」
 溜息と共にビオラは遠慮なく毒づいた。
「ま、いいわ。出会ったドワーフにかたっぱしから声かけりゃわかんでしょ」
「ご、ごめんね。手間増やしちゃって…」
 冷や汗をかきながらリエルは謝罪した。
「いいのよ。今に始まったことじゃないし。夕食にスイーツ追加で許してあげるわ」
「わ、わかったわ。それじゃ行きましょ」
 気を取り直してリエルはそそくさと先へ進んだ。その背中を追いながらビオラはアズキとトニーに目を向けた。

「…とまぁ、こんな感じよ。うちのリーダーは」

 肩を竦めながらビオラは小さく笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

憧れの世界でもう一度

五味
ファンタジー
かつて一世を風靡したゲームがあった。 多くのゲーム好きが待望してやまない仮想世界へ自分自身が入り込んだと、そう錯覚するほどのゲーム。 これまで視覚を外部から切り離し、没頭しやすい、それだけでVRゲームと呼ばれていた物とは一線を画したそのゲーム。 プレイヤーは専用の筐体を利用することで、完全な五感をゲームから得ることができた。 月代典仁もそのゲーム「Viva la Fantasia」に大いに時間を使った一人であった。 彼はその死の間際もそのゲームを思い出す。 そこで彼は多くの友人を作り、語らい、大いに楽しんだ。 彼が自分の人生を振り返る、その時にそれは欠かせないものであった。 満足感と共に目を閉じ、その人生に幕を下ろした彼に、ある問いかけがなされる。 「あなたが憧れた世界で、もう一度人生を送ってみませんか」と。

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

朝チュン転生 ~地味に異世界を楽しみたいのに女神サマが邪魔をします~

なる
ファンタジー
 いつのまにか異世界に転生する事になっていた"オレ"。  「仲良く」し過ぎたせいか、目立たない転生をしたいオレに、無理矢理チートを授けようとしてくる女神サマ。  なんとかチートを拒否し、転生したものの、後々に発覚していく女神サマのやらかし…  破天荒にはなりきれない、おっさん思考のリアル冒険譚!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

クーヤちゃん ~Legend of Shota~ このかわいい召喚士は、地球からアイテムを召喚してしまったみたいです

ほむらさん
ファンタジー
 どうやら、人は死ぬと【転生ルーレット】で来世を決めるらしい。  知ったのはもちろん自分が死んで最後の大勝負を挑むことになったからだ。  虫や動物で埋め尽くされた非常に危険なルーレット。  その一発勝負で、幸運にも『ショタ召喚士』を的中させることに成功する。  ―――しかし問題はその後だった。  あの野郎、5歳児を原っぱにポイ捨てしやがった!  召喚士うんぬんの前に、まずは一人で異世界を生き抜かねばならなくなったのです。  異世界言語翻訳?そんなもん無い!!  召喚魔法?誰も使い方を教えてくれないからさっぱりわからん!  でも絶体絶命な状況の中、召喚魔法を使うことに成功する。  ・・・うん。この召喚魔法の使い方って、たぶん普通と違うよね? ※この物語は基本的にほのぼのしていますが、いきなり激しい戦闘が始まったりもします。 ※主人公は自分のことを『慎重な男』と思ってるみたいですが、かなり無茶するタイプです。 ※なぜか異世界で家庭用ゲーム機『ファミファミ』で遊んだりもします。 ※誤字・脱字、あとルビをミスっていたら、報告してもらえるとすごく助かります。 ※登場人物紹介は別ページにあります。『ほむらさん』をクリック! ※毎日が明るくて楽しくてほっこりしたい方向けです。是非読んでみてください! クーヤ「かわいい召喚獣をいっぱい集めるよ!」 @カクヨム・なろう・ノベルアップ+にも投稿してます。 ☆祝・100万文字(400話)達成! 皆様に心よりの感謝を!  

処理中です...