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第六章
意外と馴染む
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「えー…そんなわけで…新しく魔王軍に参加することになった魔法使いのマイカ・フランベルさんです…」
お馴染みの魔王城の食堂。とりあえず今いる人達に私は半ば強引について来た人間の少女を紹介した。たぶん、今の私の目は死んでいる。
「よろしくね!」
当の本人は元気よく挨拶した。額の傷は食堂に来る前にウーナに処置してもらった。額に貼ってある絆創膏がなんか第三の目を隠しているように見える。関係ないけど。ちなみに魔王とゴードンにはすでに話を通している。
「あらあら。ずいぶんと可愛い娘を連れてきたじゃない」
メイリスはのんきに笑っていた。今日の彼女の夕食は牛丼の特盛である。ホントよく食べるわね。
「おぉー!また人間のお仲間が増えたっスねー!よろしくっスー!」
魚肉ソーセージを食べながらヌコがマイカに握手を求めてきた。マイカはためらうことなくそれに応じてヌコの手を握った。
「よろしく。あら、猫の獣人なだけあって肉球があるのね。ぷにぷにしてるわ」
「おほ!あたしの肉球の良さがわかってくれるとは嬉しいっスねぇ!」
あ、やっぱり肉球あるのね。
「はいよ!カレーセット二人前お待ち!新人さんにはサービスしといたよ!」
厨房からカルボが私とマイカの分のお膳を運んできた。マイカの分にはおまけのスイーツとしてプリンがついている。おいしそうだ。
マイカはカレーライスをスプーンで一口すくい、そのまま口に入れた。
「…美味しい!何これ?ギルドの酒場で食べるヤツとは比べ物にならないわ!」
目を輝かせながらマイカは驚きの声をあげた。
「このサラダも野菜が新鮮だし、ドレッシングも相性いい!魔族ってこんないい物食べてるの?」
相当気に入ったらしい。というか、よくためらいもなく食べたわね。
「そこまで喜ばれると料理人冥利に尽きるぜ!ははは!」
カルボの方も褒められてご機嫌だ。
「そううらやむなって!魔勇者様の分もあるからよ!」
私の視線に気づき、何を察したのかカルボは一段と豪華なプリンを運んできた。いや、別にそんなつもりじゃなかったんだけど。確かにプリンおいしそうだとは思ったけど。
「あ!いいなぁ!ちょっとちょうだいよ!」
そう言いながらマイカは私のプリンに手をつけようとしたが、それを私のマフラーが阻んだ。
「あいた!な、何よそれ?」
「私のボディーガードよ」
そう答えながら私はカレーを口に運んだ。私が座る椅子に巻かれた赤いマフラーはマイカを威嚇するようにうごめいている。
「そんな便利な装備まで作れるの?魔族って器用ねー」
感心しながらマイカはヨーグルトドリンクを飲み干し、カルボにおかわりを要求した。いい飲みっぷりね。
それにしても、メイリスといいコイツといい、どうしてこんなにも早く魔王城になじめるのかしら?陰キャの私には考えられないわ。
「いやぁ~。人間が自ら魔王軍に志願してくるなんて珍しいっスねー。どういう風の吹き回しっスかー?」
「うん?…まぁ…色々あってね…」
ヌコに当然の疑問を投げかけられてマイカはスプーンをいじりながら憂げに答えた。
「おぉ?色々ってなんスかー?もしかしておとゴブぁっ!」
ウザ顔で食い下がろうとするヌコの鼻と口にメイリスが指を突っ込んだ。
「ヌコちゃん。女の子にはね、みだりに口にしたくない事情があるのよ?あなたも女の子ならわかるでしょ?」
威圧的な笑顔とやたらと優しい口調でメイリスが咎めた。
「ふごごが…ず…ずんばべんべじば…」
女子にあるまじき表情にされながらヌコはモゴモゴと謝罪した。もしこの世界にカメラがあったならその変顔は誰かに撮られていたであろう。さすがの魔王軍にもそんな物はないようだが。…ないよね?
「そんなわけでごめんね、マイカちゃん」
「い、いやいいのよ。えーと…」
「メイリスよ。気軽にメイリスお姉さんって呼んでね」
メイリスはウィンクしながら名乗った。
「あぁ、よろしく…って、あなたも人間?」
彼女の顔をまじまじと見てマイカは尋ねた。ゾンビであるにも関わらずメイリスはきれいな容姿であり、ぱっと見は色白な美女である。戸惑うのも無理はない。
「えぇ、そうよ。ついこないだまで私も冒険者やってたのよ」
「マジで?」
そういえばそうだったわね。エイルと彼女に続き、マイカで三人目。元冒険者がこんなにも魔王軍に参加するとは正直驚いた。ちなみにエイルは今日もズワースと修行している。午前中に顔を出した時はズワースとキャッチボールをしていた。
「まあ、正確に言うと今は『人間』ではないのよね」
そう言ってメイリスは自分の左腕を掴み、思いきり引きちぎった。
「「ぶうぅっ!」」
ちょ…おま!食事中になんちゅうことしとんじゃ!色々吹き出した私とマイカを気にすることなくメイリスはちぎった腕を身体にくっつけ、何事もなかったかのように動かした。
「え?えぇ?そ…それって…」
目を白黒させながらマイカは尋ねた。まぁ、当然の反応よね。
「ふふっ。私も色々あってね。今はこうやってアンデッドとして魔王軍にお世話になっているのよ」
魅惑的に微笑みながらメイリスは答えた。そして、消費したエネルギーを補充するべく追加注文したハンバーグを上品に口に入れた。
「はえ~…そういうパターンもあるのね…」
マイカは感心する声をあげた。
「魔王軍も結構いい所よ。ごはんは美味しいし、住まいも快適だし、立派なお風呂もあるし、それに…」
メイリスはチラッと私を見た。
「こちらの魔勇者様がまた魅力的でね。一緒にいてホント退屈しないわ」
なんか頬を赤らめながら説明した。おい!なんか誤解されそうな表情すな!
「あなたも彼女に声をかけたのは大正解だと思うわ。彼女のテクニックでそのうちメロメロになると思うわよ?」
なんのテクニックだよ!そんなもん持った覚えないわ!
「え~?それは困っちゃうかな~?」
マイカも顔を赤くして戸惑った。だからやめい!
お馴染みの魔王城の食堂。とりあえず今いる人達に私は半ば強引について来た人間の少女を紹介した。たぶん、今の私の目は死んでいる。
「よろしくね!」
当の本人は元気よく挨拶した。額の傷は食堂に来る前にウーナに処置してもらった。額に貼ってある絆創膏がなんか第三の目を隠しているように見える。関係ないけど。ちなみに魔王とゴードンにはすでに話を通している。
「あらあら。ずいぶんと可愛い娘を連れてきたじゃない」
メイリスはのんきに笑っていた。今日の彼女の夕食は牛丼の特盛である。ホントよく食べるわね。
「おぉー!また人間のお仲間が増えたっスねー!よろしくっスー!」
魚肉ソーセージを食べながらヌコがマイカに握手を求めてきた。マイカはためらうことなくそれに応じてヌコの手を握った。
「よろしく。あら、猫の獣人なだけあって肉球があるのね。ぷにぷにしてるわ」
「おほ!あたしの肉球の良さがわかってくれるとは嬉しいっスねぇ!」
あ、やっぱり肉球あるのね。
「はいよ!カレーセット二人前お待ち!新人さんにはサービスしといたよ!」
厨房からカルボが私とマイカの分のお膳を運んできた。マイカの分にはおまけのスイーツとしてプリンがついている。おいしそうだ。
マイカはカレーライスをスプーンで一口すくい、そのまま口に入れた。
「…美味しい!何これ?ギルドの酒場で食べるヤツとは比べ物にならないわ!」
目を輝かせながらマイカは驚きの声をあげた。
「このサラダも野菜が新鮮だし、ドレッシングも相性いい!魔族ってこんないい物食べてるの?」
相当気に入ったらしい。というか、よくためらいもなく食べたわね。
「そこまで喜ばれると料理人冥利に尽きるぜ!ははは!」
カルボの方も褒められてご機嫌だ。
「そううらやむなって!魔勇者様の分もあるからよ!」
私の視線に気づき、何を察したのかカルボは一段と豪華なプリンを運んできた。いや、別にそんなつもりじゃなかったんだけど。確かにプリンおいしそうだとは思ったけど。
「あ!いいなぁ!ちょっとちょうだいよ!」
そう言いながらマイカは私のプリンに手をつけようとしたが、それを私のマフラーが阻んだ。
「あいた!な、何よそれ?」
「私のボディーガードよ」
そう答えながら私はカレーを口に運んだ。私が座る椅子に巻かれた赤いマフラーはマイカを威嚇するようにうごめいている。
「そんな便利な装備まで作れるの?魔族って器用ねー」
感心しながらマイカはヨーグルトドリンクを飲み干し、カルボにおかわりを要求した。いい飲みっぷりね。
それにしても、メイリスといいコイツといい、どうしてこんなにも早く魔王城になじめるのかしら?陰キャの私には考えられないわ。
「いやぁ~。人間が自ら魔王軍に志願してくるなんて珍しいっスねー。どういう風の吹き回しっスかー?」
「うん?…まぁ…色々あってね…」
ヌコに当然の疑問を投げかけられてマイカはスプーンをいじりながら憂げに答えた。
「おぉ?色々ってなんスかー?もしかしておとゴブぁっ!」
ウザ顔で食い下がろうとするヌコの鼻と口にメイリスが指を突っ込んだ。
「ヌコちゃん。女の子にはね、みだりに口にしたくない事情があるのよ?あなたも女の子ならわかるでしょ?」
威圧的な笑顔とやたらと優しい口調でメイリスが咎めた。
「ふごごが…ず…ずんばべんべじば…」
女子にあるまじき表情にされながらヌコはモゴモゴと謝罪した。もしこの世界にカメラがあったならその変顔は誰かに撮られていたであろう。さすがの魔王軍にもそんな物はないようだが。…ないよね?
「そんなわけでごめんね、マイカちゃん」
「い、いやいいのよ。えーと…」
「メイリスよ。気軽にメイリスお姉さんって呼んでね」
メイリスはウィンクしながら名乗った。
「あぁ、よろしく…って、あなたも人間?」
彼女の顔をまじまじと見てマイカは尋ねた。ゾンビであるにも関わらずメイリスはきれいな容姿であり、ぱっと見は色白な美女である。戸惑うのも無理はない。
「えぇ、そうよ。ついこないだまで私も冒険者やってたのよ」
「マジで?」
そういえばそうだったわね。エイルと彼女に続き、マイカで三人目。元冒険者がこんなにも魔王軍に参加するとは正直驚いた。ちなみにエイルは今日もズワースと修行している。午前中に顔を出した時はズワースとキャッチボールをしていた。
「まあ、正確に言うと今は『人間』ではないのよね」
そう言ってメイリスは自分の左腕を掴み、思いきり引きちぎった。
「「ぶうぅっ!」」
ちょ…おま!食事中になんちゅうことしとんじゃ!色々吹き出した私とマイカを気にすることなくメイリスはちぎった腕を身体にくっつけ、何事もなかったかのように動かした。
「え?えぇ?そ…それって…」
目を白黒させながらマイカは尋ねた。まぁ、当然の反応よね。
「ふふっ。私も色々あってね。今はこうやってアンデッドとして魔王軍にお世話になっているのよ」
魅惑的に微笑みながらメイリスは答えた。そして、消費したエネルギーを補充するべく追加注文したハンバーグを上品に口に入れた。
「はえ~…そういうパターンもあるのね…」
マイカは感心する声をあげた。
「魔王軍も結構いい所よ。ごはんは美味しいし、住まいも快適だし、立派なお風呂もあるし、それに…」
メイリスはチラッと私を見た。
「こちらの魔勇者様がまた魅力的でね。一緒にいてホント退屈しないわ」
なんか頬を赤らめながら説明した。おい!なんか誤解されそうな表情すな!
「あなたも彼女に声をかけたのは大正解だと思うわ。彼女のテクニックでそのうちメロメロになると思うわよ?」
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