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第三章

素敵アイテム

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「えっと…今の…何…?」

 私は恐る恐る質問した。

「あぁ、新型の爆弾の実験をしてたのさ。室内でも安全に威力の高いヤツを作りたいんだけど、火薬のさじ加減が難しくてさー」
 コノハは笑顔で返答した。
「そ、そうなんだ…」
 私はそれ以上聞かないことにした。たぶんこの程度の実験は彼の中では軽い部類なのだろう。
「それじゃ、任務の内容について説明するよ」
 何事もなかったかのようにコノハは近くの扉へ向かった。私はその後を追った。

 実験室の隣は会議室。テーブルの前に置かれたホワイトボードには遺跡らしき絵が描かれていた。

「今回、魔勇者様に向かってもらうのはこの『タタリア遺跡』。ここから西に少し行った先にあるよ」
 コノハは学校の授業でよく見たなんか細長い棒で遺跡の絵を指し示した。あの棒、正式名称なんて言うのかしら?
「小耳に挟んだ情報によるとあの遺跡には『聖剣』と呼ばれる物があるらしいんだ」
「聖剣?」
「そう。で、それがどんなものだか調べるためにペスタ支部ここから調査員を二人よこしたんだけど昨日から連絡が途絶えたんだ」
「なるほど。それで私がその遺跡に向かって二人を救出し、そのまま調査の手伝いをしろってわけね」
 本当に昼寝をしていてよかったのかいまだに疑問だ。
「そういうこと。ただ、遺跡に行くにあたっていくつか注意してほしいことがあるんだ」
「注意?」
 私は首を傾げた。
「まず、遺跡には罠がたくさんある。調査員からの報告によるとすでに多くの冒険者らしき犠牲者がいたらしい」
 まぁ、あって当然よね。聖剣なんてものを置いてあるのだから。
「次に、あの遺跡はこの地方を治めるペスタ王国が管理している。外には聖バーニィ騎士団という王国の騎士団が巡回していて冒険者でも王国の許可がなければ入ることは許されない。先の調査員も警備をかいくぐるのに苦労したらしい」
 聖バーニィ騎士団…先ほどの実験の犠牲者が口にしていたヤツか。そいつは厄介そうね。
「まぁ、さしもの王国も遺跡の罠に攻めあぐねて調査を冒険者に丸投げしているらしい。笑っちゃうよね」
 コノハは肩を竦めた。
「そんな所に単身乗り込めっての?」
「大丈夫。そんな魔勇者様のためにこの僕が素敵アイテムをいくつか用意したんだ」
 そう言いながらコノハは楽しそうに隣に置いてあった箱をゴソゴソとまさぐった。なんか怖いな。
「まずはこれ!『ホバーブーツ』!」
 最初に取り出したのは靴底のほうにクッションがついたブーツだ。
「これを履くと浮力が働いて歩きづらい砂漠をスムーズに移動できるようになるのさ」
 おぉ、予想に反して便利そうなアイテムが出てきよった。
「で、お次はこれ!『ステルスコート』!」
 次に出たのは不安定に色を変える風呂敷だ。コノハが壁に張り付けると風呂敷は壁に同化するように色を変えた。ぱっと見風呂敷がどこにあるのかわからなくなった。いわゆる光学迷彩ってヤツね。
「こんな感じで身を隠すことができる物だよ。さらに、温度や匂い、魔力も遮断することができるので、じっとしていればまず見つかることはなくなるよ」
 おおー。仕組みはわからないけどすごいアイテムね。
「次はこれだね。『フロートアイ・マーク2カスタム』」
 今度は野球ボールくらいの大きさの水晶製の瞳にコウモリの翼が生えたものが出てきた。似たようなものをヌコが持っていたのをちらっと見た記憶があるが、それに比べてサイズが小さく、翼もついている。
「これは瞳が捉えた光景をここの魔法テレビに映すことができるものだよ」
 いわゆるカメラみたいなヤツね。
「でもマーク2カスタムってどういうこと?」
「ああ、これは僕が独自に色々と改良を加えた特注品でね。例えばこんなことができるのさ」
 コノハが手に持ったリモコンらしき物をいじるとフロートアイは浮遊し、私の後ろに位置取りした。彼の後ろにあるテレビには私の後頭部が映っている。
「おお!」
「これでここからでも僕が魔勇者様のサポートができるって寸法さ。我ながらナイスな改良だね!」
 コノハは得意げに自画自賛した。
「わかっているとは思うけど、今回の任務は調査員の救出を優先してほしいんだ。もし彼らが負傷していたら無理せずに帰還してね」
「了解」
 荷物をまとめながら私は頷いた。

「あとはこれだね」
 コノハは何かの袋を取り出した。中身を見てみると、飴玉がたくさん入っている。
「塩分とビタミンを含んだキャンディーだよ。炎天下ではこまめな塩分補給が大事だからね。水分もできるだけ持っていってね」

 コノハはウィンクしながらアドバイスをくれた。けっこう至れり尽くせりねコイツも。
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